破滅の使者
#2 地下洞生まれの鏖殺神Ⅱ
「行くぞオラァ!!」
伏原は武装兵団の目の前に飛び出す。
「テメェら堂々とほっつき歩いて、俺らの”国”で何してくれてんだ、あ゙ァ?」
伏原はそのまま集団に突っ込み、瞬く間に数人を蹴り飛ばした。
隠密行動をしていた集団の目の前に突然現れ、罵声を浴びせながら人を蹴り飛ばす長身の男。
相手の胸ぐらを掴んで、鳩尾に膝をいれる。
地面に倒れた相手の顔を踏みつけて飛び上がり、ライフルを構えようとした別の相手の鼻梁に踵を落とす。
紛れもなく奇人的な行動をしている筈なのに、その姿は美麗であった。
「やっぱり、綺麗だ……」
飯綱が見惚れている間に、30人程の集団は全員死に晒した。
顔が分からなくなるほどぐちゃぐちゃにされた屍が、無傷で返り血に塗れる伏原の強さを物語っていた。
「おい、合わせるっつったの誰だよ!サボってんなよ!」
『芥が速すぎるんだってば。』
『お疲れ様です、後処理は僕らの隊から派遣します。10人で足りますかね?』
「足りるだろ。焼却炉近いし、台車さえあればな。」
『分かりました。では、撤退してください』
「おうよ…っく〜ぅ、疲れたぁ!」
伏原は腕を上げて伸びをしながら、くるりと振り返ると、東の方───コンクリートの基地へ向かって歩き出した。
基地の上の鉄塔に見える人影が、手を振っていた。
===
伏原が門の隙間をすり抜けて基地に足を踏み入れると、先程インカム越しに指示を仰いでいた男───瑞浪凌聖と飯綱が待っていた。
「お疲れ様です。報告書お願いします。」
瑞浪は、切りそろえられたブロンドの横髪を揺らしながら伏原に歩み寄ると、1枚の紙を手渡した。
「瑞浪サン、これって口頭報告じゃダメなのか?タブレット持ってるじゃん。」
伏原は、自分より20センチ程背が低い瑞浪の手元を覗き込みながらそう言った。
「面倒なんですね。」
「ち、違ぇよ…」
瑞浪はそんな伏原を見ると、にこりと笑った。目が笑っていないその表情に気圧され、伏原は後退る。
「年上の言うことは聞きましょうね、芥くん?」
「ハイ、すみませんでした。」
伏原は渋々紙を受け取る。
「今日、集会あるの覚えてますか?」
「覚えてるよ、大丈夫」
「…勿論覚えてるぜ」
「残念ですね睡眠時間が減って。」
「クソ野郎オオオオ!!!」
「誰がクソ野郎ですか」
「スミマセンデシタ」
#2 地下洞生まれの鏖殺神Ⅱ
Fin.
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この垢は僕の旧垢です。 この連載は現在の垢で再投稿という形から引き継ぎます。