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「……先生、酔ってるんですか?」
いつもは、あまり酔ったりもしないのにと思う。
はっきりとした理由はわからなかったけれど、さっきの話で彼は何かを確信していて、
それが、心に重たくのしかかっているのは明らかなように思えた……。
「先生…ちょっと待ってて…」
辛そうな様子をそのまま見ていることもできなくて、水を入れてきたグラスを唇に傾けて、彼へ飲ませた。
「うん…」
唇の端から垂れた水を手で拭い、
「ありがとう…少し、飲みすぎましたね…」
もう一度、自分でグラスから水を飲もうとした彼が、
「……飲ませて、くれませんか?」
男性的な色香を孕んだ、ねだるような眼差しをふと私に向けた。
「飲ませるっていうのは……」
煽情的に見つめられて、たぶんさっきみたいにグラスから飲ませるっていうことではないんだろうなと感じる。
「……口移しで」
「えっ……」
なんとなく想像はしていたけれど、いざ言われるとそんな経験もなくて戸惑いが浮かぶ。
「……こうやって……」
彼が水を口に含み、私に唇を寄せる。
飲まされた水分が口の中に溜まり、喉元を冷えた触感が流れ落ちていく。
「……してください。同じように……」
言われるままに、彼の後頭部を抱え口移しに水を飲ませた。
「あなたとこうしていれば、忘れていられる……」
何を……とは聞けないまま、身体が腕に抱かれると、毛足の長いフロアマットに背中が包まれた。