伊達高の3年生は、他の高校と違って早めの引退をした。引退の事は3年生で話し合って決めた。それを告げた日は後輩に止められたが、俺達の考えは変わらなかった。その時、新しい主将に任命した二口と副主将の青根には何回もリベンジしたい。まだ一緒にやりたい!などと最後まで納得していないようだった。俺達はこの試合で引退する。
数ヶ月後俺達はちょくちょく部活に顔を出したり、就職活動や勉強に明け暮れていた。毎日大変だったけど、充実していた。しかし、ある日青根達2年生が教室まで来たのだ。内容を聞いてみると、新しい主将の二口が無理をしている。との内容だった。二口は生意気だけど、真面目だし、部員1人1人の事を考えている。主将としてのプレッシャーがあるのかもしれない。最近学校内で二口を見かけてもなんか思い詰めたような表情をしていたのは分かっていた。でも、俺達の前でも強がって大丈夫しか話してくれなかったのだ。心配もあったので今日ささやんと鎌ちを誘って顔を出すと約束をして別れた。
放課後、就職の話で先生に捕まって、鎌ち達には体育館の自販機で待っといてもらった。
茂庭 「お待たせ〜」
鎌先 「おせーぞ」
笹谷 「なんか奢れよ〜」
茂庭 「えー分かったよー」
鎌先 「マジ⁈ラッキー⭐︎」
それで、少し雑談してから体育館に向かおうとしていた時、体育館にいるはずの青根がきた。
何かをおぶっていた。それは、主将の二口がぐったりしていた。
茂庭 「二口⁈」
青根 「ビク))」
鎌先 「大丈夫か⁈」
青根 「練習中に倒れてしまって…今保健室に運んでいます。」
茂庭 「俺達が運ぶから、青根は部活に戻りな?主将も副主将もいないと大変だろ?」
青根 「いいんですか?」
茂庭 「いいよ。鎌ち頼める?」
鎌先 「おう‼︎」
青根 「お願いします」
と青根がさっていき、俺達は保健室に向かった。二口をベットに寝かせた。よく見ると最後に見た時よりだいぶ痩せていたし、顔色や隈もあった。
二口 「…ないで」
3年生 「え…?」
二口 「行かないで…茂庭…さん…
茂庭 「え?」
二口 鎌…先…さん…
鎌先 「は?」
二口 笹谷…さん…
笹谷 「は…?え…?」
二口 頑張る…から…まだ…やめて…」
茂庭 「二口…」
と頭を撫でた。こいつはだいぶ抱え込んでいるとここにいる全員が思っただろう。
保健室の先生 「あら?」
茂庭 「あっ勝手にすみません。二口…いや部活の後輩が練習中に倒れちゃったらしくて、」
保健室の先生 「二口君ね、あんまり無理したらダメって言ったんだけど…」
笹谷 「どういう事ですか?」
保健室の先生 「あのね、この前お昼休みに…中庭で二口君を見かけたのよ。まだお昼休みも始まったばっかだし、お弁当も持ってなかったから話しかけたんだけど…
(ここからは回想です)
保健室の先生 「二口君?お昼食べないの?」
二口 「後で食べます。」
保健室の先生 「ちゃんと食べた方がいいわよ。」
二口「俺、休んでる暇なんてないんです。もっと頑張らないと。俺は、後輩達や同級生にこういう事しかできないから。自分ができる事をやりたいです。」
保健室の先生「そう。お昼は食べるのよ。」
回想終了
保健室の先生 「って事があってその他でもちょくちょく二口君を見かける事があったんだけど、何か難しい顔してノートに何か書いていたり監督の所へ行っていたりして食べている所を見ないから、心配してたの。」
茂庭 「そんなことが…(俺ちゃんと見てやれてなかったな)」
保健室の先生 「あっまだここにいたいんだけど、私出張があるの。二口君が目覚めたら後は頼めるかしら?」
3年生 「はい」
保健室の先生 「ごめんね。お願いね」
と保健室の先生は保健室を後にした。しばらく沈黙が続いたが、その沈黙を破ったのが二口の荷物を持ってきた青根だった。
青根 「二口の荷物です。」
茂庭 「ああ、ありがとう」
青根 「まだ目が覚めませんか…」
茂庭 「疲れ溜まってたみたいだしね。」
青根 「練習…戻ります」
笹谷 「頑張れよ〜」
青根 コク))「失礼しました。」
二口 side
最近夢見が悪い。眠いのに、いつも嫌な夢を見て途中で目覚めてしまう。次第には寝るのがとても怖くなった。その夢は茂庭さん達がどこか遠くへ行ってしまう夢。毎日毎日同じ夢をみる。
主将になってからは、大変でお昼の時間も惜しんで練習メニューを考えたりしている。監督との打ち合わせもできる限り昼に済ませる。部活の時間にやると練習時間が減ってしまうからだ。最近は自主練もオーバーワーク気味なのは気づいていた。でもやめられなかった。もっともっと強くなって、今度こそ全国へ。茂庭さんみたいに頼れる主将になりたい。もっと頑張って頑張って練習して練習しないと追いつけない。青根達同級生に何回も顔色が悪いと指摘されたが大丈夫と言った。引退していった、3年生にも心配される始末だ。でも俺がしっかりしなきゃ。茂庭さん達に託されたんだ。しっかり引き継いでいかないと…それを思うたびに俺にとって3年生はとても大きな存在だったと思った。もっと一緒にいたかった。練習したかった。1日1日をもっと大事にしていればよかった。後悔しても仕切れない。まずは俺があの時ボールを落としてなければまだやれていたのかもしれないのに、俺のせいなのに、俺が主将じゃダメなんだ。そうやって自分を追い込むと同時に練習量がどんどん増えていった。
3年生side
青根が持ってきて二口の荷物は妙に重かった。教科書だけでもこんな重さにはならない。俺達の学校は技術系が多く、他に学校と比べたら教科書が少ないのだ。中身を見ると教科書に他に何冊ものノートが入っていた。そこにはおそらく二口が主将になってからつけていたであろう日記見たいのが書かれていた。
「7月12日今日は、3年生が練習を見にきた。やっぱり3年生が来ると部の雰囲気が変わる。俺もそんな存在になりたい。
練習メニュー
青根____________
女川_____________
「8月15日夏休みに入って1日練が多いため、体調崩すやつが多くなってきた。休憩も多めに入れようと思う。最近黄金川と青根の速攻がタイミングが合う。次は____________このトレーニングを加える。」
などと1日1日欠かさず書いてあった。
二口 「んっ」
茂庭 「二口?気分はどう?」
二口 「え…なん…で茂庭さん達が」
最近見ていた夢を思い出して泣きそうになる。でも泣いたら、心配かけちゃうし、こんな泣き虫を主将にした事を後悔するだろう。
茂庭 「二口。無理しちゃダメだよ。もっと周りを頼らなきゃ。」
鎌先 「後ちゃんと飯食えよ」
何で知ってんだよ。と思ったが、グッと堪えた。
二口 「すいません。気をつけます。じゃあ練習戻りますんで…」
笹谷 「あっまだ動いちゃ…」
っていう笹谷さんの言葉を無視して体育館に行こうと立ち上がるとまた眩暈がして、その場に座り込んでしまった。
鎌先 「まだダメだって」
二口 「すいません…」
なんだか自分が惨めになって涙が出てきた。必死で隠すが、止めようにも止まってくれない。
二口 (こんな姿見られたくなかったのに…安心させたいのに。)
茂庭 「二口はさ、立派な主将ってどんな人だと思う?」
二口 「え?そりゃあ茂庭さんみたいに優しくて、みんなを落ち着かせることができて、茂庭さんみたいな人が立派な主将だと思います。」
茂庭 「違うよ。俺は立派なんかじゃない。何回も鎌ちやささやん、それにたくさんの人に助けてもらったんだよ。1人で頑張る必要なんかないんだよ。助け合ってこそのチームなんだから。」
鎌先 「俺達はずっとお前のこと見てるし、どこにもいかないから」
二口 「‼︎」
涙が溢れて止まらない。ああなんでこの人達は俺の涙腺をこんなにも緩めてくるんだ。
笹谷 「青根もみんなお前のことが心配だって俺達に相談なんできたんだぞ?」
二口 「え?」
茂庭 「1人で抱え込みすぎてるって」
二口 「俺は…主将なんて立派な立場なんて無理だって思って、だってあの試合最後俺が取れてたらまだまだあなた達とバレーができたかもしれないじゃないですか。そのボールを取れなかった俺が主将なんてできないんです。今からでも変えたほうが…」
いいと言おうと思ったが茂庭さんに止められた。
茂庭 「満場一致だったんだ。」
二口 「え?」
鎌先 「次の主将を3年生できめた時全員二口がいいって言ったんだ。」
笹谷 「生意気だったけどそれ以上にチームの事を考えていたのも知ってる。主将で一番大事な事だと思う。」
茂庭 「お前は十分に頑張ってる。でもたまには休め。充電切れだ。充電しろ。」
二口 「最近寝れないんです。夢を見て…」
茂庭 「夢?」
二口 「茂庭さん達がどこか遠くに行って二度と会えなくなるって言う夢です。」
言ってしまった。引くだろうか。こんな夢…
そう思ったら3年生が俺を抱きしめてきた。
茂庭 「俺達はどこにもいかない。」
鎌先 「大丈夫だ」
笹谷 「引退しても仲間なんだから。」
その言葉でまた涙腺が緩む。今日は泣いてばかりだ。すごく暖かくて、落ち着く。俺はいい先輩にもいいチームメイトにも恵まれた。もう大丈夫。もっと頼って少しづつ俺らしい主将になっていこう。そう思うと眠くなってきて、気づけば寝てしまった。
茂庭 「あらら二口寝てる。」
鎌先 「以外と溜め込みやすいんだな」
笹谷 「でも多分もう大丈夫でしょ。だって俺達が選んだ主将なんだし。」
と言いながら3年生は二口の頭を撫でた。
コメント
9件
二口のやつもっと見たいです!
泣いたᐡ ߹𖥦߹ ᐡ