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「毒魔法〈ヴェレーノ〉」
「…」
彩の時と同じように、彼岸花に光が当たる。それを通じて毒を盛っているのだろうか。彼岸花は血を吐く。
「教官たちを順に潰していけば、私達のトップ、betrayal Royer様の出る幕は無さそうですね」
「エイジ先輩…油断が、危ないと思うんですけどぉ…うぅ…」
「あなたは黙っていなさい」
ぴしゃりとエイジはそう言う。びくっとなり、少女は黙り込んだ。
「ゴホッ、ゴホッ…彩さんは…」
「きっと今頃黄泉の国にでもいるのでしょう。…そうですね、彼女は悪魔ですから、きっと地獄に行くのでは?」
「…」
「毒が効いてきたようですね。…では私たちはもうお暇しましょうか。ほら、いきますよ」
「はぁい…」
彼岸花は毒に苦しみながら、必死で出血を止めようとした。
それと同時に、自身の人間だった頃の記憶が蘇ってくる。
「そうだ…私の…本当の名は…思い出せない…」
彼女の瞳から涙がぽろぽろと流れ落ちてくる。
もしかしたら、名前だけずっと思い出せないのは、魂と一緒に彩さんに売ってしまったからなのかもしれない。彼岸花はそう思い込んだ。そういうことにした。
「皆さん…ごめんなさい…私が不甲斐ないばかりに、沢山の人の命が…」
彼女が最後に聴いた音は、結界が割れる音だった。
「教官遅い…大丈夫かしら…」
というか、結界がなんだか脆くなっている気がしたウアンは、彼岸花の身に何かあったのかもしれないと不安になった。
「いや、教官に限ってそんなことは…きっと…ないはず…」
けれど、結界は壊れてしまった。
イポクリジーアの者も、何か忘れていたのかもしれない。
結界が割れるということは…自身も死んでしまうということに。
数十分前。
「ひらりさんっ!」
「蒼くん!?」
「蒼くん…」
ひらりは蒼がここにいることに驚いた。
「ここは私がやるからいいって言ったのに…」
「いいえ、俺がビスメルを殺します!絶対に…」
「そんな風に思ってくれてたなんて、嬉しいな…蒼くん…」
一気に3人の周りが凍りつく。とても9月とは思えない温度に、ひらりと蒼は寒がる。
「でも別に蒼くんのためなら死んでもいいかもなぁ…」
「刃物魔法〈シュヴェールト〉!!」
蒼は咄嗟に魔法でビスメルを攻撃しようとした。ビスメルは少しも避けようとせず、全ての刃物が彼に刺さった。
「…」
蒼はおどろく。ビスメルはにこりと微笑む。そしてまた、冷気が漂う。
「蒼くん…蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん蒼くん」
「!!!」
ひっと寒さを感じた蒼は一歩下がる。
その時。
結界が割れる音がした。
「危ないっ!」
咄嗟にひらりが蒼を庇い、どす黒い何かを浴びる。
「ひらりさんっ!!」
ビスメルもそれを浴びてしまったようで、あちらはもう息をしていない。
「蒼…くん…これ多分、毒だよ…あれ全部。私こういうの詳しくないからわからないけどさ…かなりやばいと思うんだぁ…」
「ひらりさんっ!!」
気づけばあちこちから叫び声、悲鳴が聞こえてくる。
「みんな…」
「蒼くん…都月さんのところまで、お願い…!」
そう言っても、本部の建物もこの液体のせいでほぼ半壊していて、都月も無事ではないかもしれない。彼に会いにいった、遥人、千代子も。水梨も…
蒼ははっとなりフェルマータを探す。彼は、液体に埋もれ、虫の息をしていた。
「フェルマータ…っ!」
「凪野…俺ももうダメかも…こんなところまで…ごめんな…」
「フェルマータが謝ることじゃない!!どうして俺も…浴びているはずなのに全然苦しくないんだ…?なんで…」
「それはお前が…他とは違うからだ。…俺のように」
「誰…だ?」