入り口の門には鍵が掛けられている。
健太とDJは門の両脇で三十分ほど粘った。
マンションから人が出てきてゲートが開いた隙に、二人は建物の中に入り込んだ。がたがた左右に揺れるエレベーターに乗ると、六階に到着した。
廊下には、健太とDJの足音だけが響き渡る。
「六〇一」
ドアに付けられた部屋番号を読む。
「六〇三」
心臓の鼓動が高くなる。
「六〇五」
マレナをひっぱたいてしまうかもしれない。
「六〇七」
南米特捜班には自前連絡してある。DJがへスーサ氏に連絡をとる段取りだ。今度こそ、逮捕だ。
「六〇九」
ここだ。
健太は取っ手を握った。戸を揺さぶるとガタガタ音が鳴る。
DJはブザーを押した。
反応がない。
健太はドアを叩いた。初めは軽く。だんだん強く。
そしてドアが破れるくらいに力が入ると、DJは健太の握りこぶしをつかんだ。
「ここは冷静になれ。こうなったら、張り込もう。俺はいくらでも付き合うぞ」