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※子犬系年下男子に翻弄される社会人のお話。 赤青を主軸に黄青も顔を出します。
『太智くん!僕、太智君の事好きです!付き合ってください!』
うるうるとした瞳でお願いされ、断ることも出来ずまんまと受け入れてしまったあの時の自分を殴りたい。付き合った翌日、仕事中も関係なくひっきりなしにメッセージや着信が入り慌てて通知オフにした日の事は今でもよく覚えている。
『恋人同士なら連絡先交換しやんといけへんなぁ~♪』
ニコニコしながら手に持っていたスマホをスッと奪われあっという間に連絡先を交換させられた。
その恐れを知らない彼になされるがままな自分もどうかと思うが・・・
その彼というのが舜太君、大学生らしい。
職場の近くのコンビニで働いており朝・昼・夜と何かと立ち寄る自分の顔をすぐに覚えてくれた。
遭遇すればいつも気さくに話しかけてくれ最初はビックリしたが、今では居ないと少し残念な気持ちになる。
すらっとした細身の長身にきらきらとした笑顔が眩しかった。
自分とは住む世界が違うのだろうと何処かで一線を引いていた。
ある時、変な客に朝から絡まれているのを見た。
とてもじゃないが、顔馴染の彼が理不尽に怒られているのを黙って傍観しているのは気が引けた。
出過ぎた真似だと思ったが、横から声を掛けて自分に出来ることならと対応をした。
客は自分の提案に納得するや否や『兄ちゃんみたいな人が店員だったら良かったんになぁ!』と余計な一言を吐いて店を出た。ふるふると震える彼を慰めようと咄嗟に声を掛けた。
「気にすんなや。良くやってるよ、曽野くんは。」
いつも顔は合わせていたが、正直名前は知らなかった。
でも、こういう時は名前を呼んであげると良いというのを何処かの講師が言っていたのを思い出し、胸に付けられたネームプレートを見て名前を呼んだのがきっかけだった。
じっと尊敬の眼差しでこちらを見てくる彼に耐えられず、自分もすぐに店を出ようとした。
『待って!待ってください!お兄さんのお名前、教えてください!』
腕を掴んで引き止められれば、退店しようにも出来ないわけで・・・
ぼそぼそと自分の名前を呟いた。
『太智くん!素敵な名前やなぁ・・・!さっきはありがとうございました!』
深々と頭を下げられて悪い気はしなかった。
この子が今後、こんな理不尽な目に合わない様に祈るくらいしか自分は出来ない。
『太智くん!!!』
帰宅途中駅のホームで大きな声で名前を呼ばれた。
思わずその方向へ顔を上げると、あの時の彼が居た。
「あー・・・、曽野くんだっけ・・・?」
『はい!今帰宅ですか?』
「そうなの。はぁ、疲れた・・・同期のやつがマジで嫌味しか言わないやつでさー・・・あっ、ゴメン愚痴っちゃって・・・。」
『ええですよ!太智くんの事知りたいんで!』
ニコニコと目を輝かせながら自分の話を聞く舜太に若干の申し訳無さが顔を出す。
こんな自分の愚痴なんて、きっと彼の役には立たない。
もっと、彼のためになるような話が出来る人間にならないとあかんなぁと思えば思う程、特にネタもない自分はそれ以上言葉が出てこなかった。
『太智くん、家ここら辺です?』
「うん。曽野くんも・・・だよね。この駅で降りたってことは・・・」
『ふふっ、案外ご近所さんかも知れへんですね。一人暮らしなんですか?』
「うん。寂しい独り身だよ。帰ってご飯作るのがいつも面倒で・・・ほとんどウーバー頼み。」
『ふーん・・・良かったら俺の家で食べていきます?』
「ん・・・?」
自分は何か聞き間違いでもしただろうか?
彼の発言した内容が合っているかわからずきっと間抜けな顔を見られたであろう。
「いや・・・ええよ。気ぃ遣わんで。」
『いやいや!昨日カレー作りすぎたんです・・・先日のお礼も兼ねてホンマ寄って来ませんか?』
まだ学生ということと曽野という名前しか知らない彼の事を信用していいのか多少の不安はあったが、仕事の外でも声を掛けて懐いてくれる可愛い存在につい承諾してしまった。
「じゃあ・・・お邪魔しようかな。・・・ホンマに良いん?」
『やったー!えー、めっちゃ嬉しい!自分、太智くんのことホンマに好きなんすよ!』
隣でキャッキャと喜ぶ彼を見て、久しぶりに温かな気持ちが広がる。
素直で純粋な彼に自分もいつのまにか惹かれていたのだ。
「お邪魔します・・・」
久しぶりに他人の家に足を踏み入れた。
学生の一人暮らしの典型的なワンルームの部屋がそこにはあった。
スーツのジャケットを脱いで座ると、側に置かれた洗い終わった山積みの服が気になった。
正座をしながら綺麗に畳んでいくと隣から”わぁ・・・太智さんホンマに素敵や・・・”と感嘆の眼差しを向けられる。
「もぉ。ココやっとくから、はよテーブル片付けてご飯にしよや。」
『は――い!!!』
片づけや準備をしている最中にも舜太は何かと太智に投げかけてくる。
『太智くん、付き合ってる人居てはるんですか?』
『太智くん、胸板凄いですね!鍛えてるんですか?』
『太智くん、お酒飲みます?』
『太智くん、今日泊まります?』
『太智くん、この機会に一緒に住みます?』
怒涛の質問と変な方向に行きかけている質問に戸惑っていると、隣で身を乗り出し目を見ながら伝えてくる。
『すいません、おれ質問ばっかで・・・。今頭の中太智くんのことでいっぱいなんです・・・。』
なんなんだ。一体。
彼を見ているとふざけている様には見えないが彼の好意はどうも重い気がする。
これは・・・少し危なっかしいなと思いながら炊飯器の炊ける音に耳を澄ました。
カレーを口に運びながら「美味しい。」と笑顔で伝えれば彼はすごく嬉しそうに喜んだ。
胸は痛んだが、明日から少し距離を置こうと決意する。
申し訳ないが、自分が彼に惹かれたのは純粋に人間味があっての意味だ。
だが、彼はどうだろう。
なんとも距離は近いし、今にでも襲われそうな勢いがあり少し怖かった。
簡単に家に入ったことを後悔しながら、せめてものお礼として食べ終わった食器を洗っていく。
舜太が近くに寄ってきてピタッと隣に立った。
「そこ居たら濡れんで?」
『だって、せっかく太智くん来てるんに隣におらんと勿体ないやん。』
唇を突き出しながら可愛いことを言ってるが、俺より身長が高い彼を見上げて呟く。
「曽野くん、身長高いね。羨ましいわ。」
『そうです?太智くんは可愛いですよ?』
「え~、そうかぁ?んー、可愛いって言われてもなぁ・・・」
『じゃあ、カッコええです!』
お世辞だと分かっていたが、褒められて悪い気はしなかった。
『ホンマに帰るんですか・・・・?』
うるうると今にも泣きだしそうな姿に胸が痛む。こうなることが怖かったのだ。
「カレー御馳走様。ホンマに上手かった!明日から頑張れるわ。ありがと、曽野君。」
笑顔を向けて、玄関のドアを掴むと不意に肩を掴まれた。
『あの・・・俺、舜太って言います。次会った時は舜太って呼んでくれますか?』
「ん・・・?うん、舜太またな!」
何も考えず名前を呼んでドアを閉めたが、これで良かったのだろうか?
ドア越しに聞こえてくる喜びの声を聞きながら変な奴だと自宅へ向かった。
コメント
1件
第1話読み終わりました! 舜太くんのグイグイくる感じ、最初は可愛いなって思ってたんですけど、家に着いてからの「泊まります?」「一緒に住みます?」の畳みかけにはちょっとゾッとしました…(笑)でも、太智くんが「明日から距離を置こう」って冷静になる気持ちもすごく分かる。温度差が絶妙で、この後の展開がめちゃくちゃ気になります! とも。さんの書く“重すぎる好意”の表現、すごく好きです。続き楽しみにしてますね🖤