「天使(エンジェル)討伐部!」
この世には悪い天使(エンジェル)が出回っている。成仏ができない天使達、自由になりたいけどなれない天使達が多い世界だ。ただ、天使が見えるのは、よっぽどの霊感がある人だけ。なかなか見えないため、普通の人たちは勝手に物が動いた、なにかに見られているような気がするという気持ちに襲われてしまうのだ。
これは天使が見える霊感の強い男子高校生4人の話。
「お願い!!いる気がするの!絶対に!」
女子バスケットボール部の部長が手を合わせて頼んでいる。体育館倉庫の中で物が勝手に落ちてきたり、ボールが転がってきたことがあるという現象を見たそう。
「ふーーん。でもさぁ?こんなんよくあるよなぁ?何かの衝撃で転がったとか?」
そこで疑ったの朝霧阿須という人物。黒髪の長方形の細いピアスを付け、八重歯がよく目立つ。
「そういうのよくあるよ。俺も見たことある。コローって転がってったの。」
雑な説明をするのは橘彗。金髪でジト目だが目がとても大きい。袖がすごく長く、見るからに気だるそうなのが丸わかりな姿。
「説明雑すぎるやろ!確かめてみないとわからんもんや。」
彗に突っ込んだのは月影疾風。黒髪七三分けで片方だけ少し前髪が長く目がうっすらとしか見えない。関西弁でツッコミ役である。
「うん。そうだね。確かめてみようか。それで俺らが見て何も無かったら安心して使って大丈夫ですよ。」
落ち着いた意見を出したのは、雲居遥人。綺麗な青髪のタレ目で、成績も優秀。
「ありがとうございます!お願いね!私、これから外で練習するから!!」
女バスの部長は走って、部室を出ていった。
「なーーんてこと言ってんだよぉぉ??疾風てめぇぇよぉぉ??」
「だって、言わねぇと進まないやろ???」
「おぉん???」
阿須と疾風がジリジリと言い合いを始める。
彗はまたぽけーっとしながらコーヒー牛乳を飲み始め、遥人は大きなため息。
「言い合ってないで、早く終わらせるよ。俺らしか出来ないんだから。本当は、俺ら活動しちゃダメだって言われてるんだから。出雲先生のおかげなんだよ。」
遥人は話しながら、体育館に行く準備をする。
「しゃぁぁ、いくかぁあ。」
阿須がそう言い、合わせて3人も一緒に部室をで出た。
体育館倉庫
薄暗く、人があまり出入りしていなそうなぐらいのホコリがたっていた。
「気色悪ぃな。確かにいる気はする。」
阿須は匂いがいい。4人の中で役割があり、阿須は手のひらに着いている口で天使達を吸い取ったりする。
「遥人、なんか聞こえるんか? 」
「呻き声が聞こえるよ。」
遥人は耳がいい、天使の声をよく聞き探す。
「カゴの裏にいる。あそこ。」
彗は目がとても良く遠くにいる天使を見つけることが出来る。今、バスケのボールが入っているカゴの裏にいるらしい。
「おーーい!出てこい!」
疾風は声がよく通るため遠くにいる天使を呼ぶことが出来るが、大きすぎて天使が驚き逃げてしまう時もあるらしい。
「誰…?」
出てきたのは、女子高生姿の天使だった。けれど、何故かボロボロな状態だった。
「お前か?迷惑かけてるのは?」
「私が迷惑かけてるんじゃない!あっち が迷惑なの!」
阿須が聞くと、女子高生の天使は怒り始めた。
「女バスのやつら私の事いじめてきたの。ユニホーム捨てられてたり、制服が破られてたり。最低でしょ?だから、アイツらのこと呪ってやりたいの。」
女子高生の天使は過去に虐められていたことがあり、それがきっかけで自殺をしたそう。
「でも、その理由でほかの人たちもこの倉庫が使えなくて困っている人が多いんだよ。」
遥人が優しく説明すると、女子高生の天使は
「あ、確かに。」とポンッと手を叩いた。
「分かってなかったんだ…、」
「何も考えてなかったわ…。けどね、出ていこうと思った時、私から見てここの入口に鎖が張ってあるの。だから、出れなくて…。」
4人が振り返ると確かにうっすら鎖が見える。
「うーーん、これ俺らで取れるのか?」
「いや、だいぶきついやろ、」
阿須と疾風が鎖を掴み引き剥がそうとするが、なかなか剥がれない。
「これ、阿須がもう食わせちゃった方がいい気がする。」
彗が阿須に言うと、「確かにそうだな。」と小さくいい、女子高生の前に立った。
「俺が今からお前を楽にしてやろう。お前を成仏させてここから出してやる。」
阿須が親指で自分を指し、女子高生の天使に伝えた。すると、天使は
「ほんと?!怖いけれどお願いしたいわ!」
と、喜んで答えた。阿須はある天使と契約をしている。だから、阿須の中にはその契約者の血液が入っている。
「よし、準備はいいか終夜。」
『よいぞ。』
終夜は阿須の契約者。夜にしか姿を現さないため、昼間などは阿須の体内にいる。阿須が手のひらを天使に向けて、阿須の手のひらに付いている口が天使の魂を吸った。
「よし、ありがとな!終夜!」
『あぁ。』
「わ、すごい。どんどん消えていく…。」
女子高生の天使が自分の姿を見て感動していた。
「これで私もここから出れるようになるのね。」
そう言っている間にもうほとんど消えている状態だった。
「良かったな、楽になれるやん。もう誰かに迷惑かけんといてな。」
疾風がそういうと、天使は笑顔で大きく頷いた。
「ありがとう…!!」
最期にそういい、天使は消えていった。
それと同時に入り口に貼ってあった鎖も解かれ、体育館倉庫は平和になった。
「ったァ!!つっかれたァ…。 」
阿須が部室のソファに座って大きく伸びをする。他の3人も疲れ切っている様子だった。
ダラダラしていると、女バスの部長と出雲が一緒に部室に入ってきた。
「みんな!!ありがとう!やっと使えるようになったし、変な感じもしない!ほんとありがとう!」
女バスの部長はそれだけ残していき、部活へ向かっていった。その後ろにいた出雲はなにやら怒っている様子。
「お前ら、活動するのはいいが俺に報告してからって言っただろ?」
「「「「あ」」」」
天坂出雲、天使討伐部の顧問である。出雲自身も天使を見ることが出来る。
「ごめん!出雲!帰ったら飯作るから!」
「それはありがたいけど、次から気をつけろよな。」
阿須の家の事情で出雲と阿須は同じ家に住んでいる。出雲が圧をかけるように注意をした。
「次、報告無しで言ったら、もうこの活動はさせないからな。」
出雲はバタンと部室の扉を閉めて去っていった。
「次からちゃんと報告しなきゃね…。」
「ほんと忘れてた…。」
遥人と彗が少し気まづそうに話す。
けれど反省の色を見せないのは阿須と疾風。
「よし!終わったし、この後どっか行こうぜ!どこ行く?」
「俺、今甘いもん食いたいな。ファミレスやろ!サイゼサイゼ!!」
「ごめんな!疾風!俺はガスト派だ!!」
「お前の好みなんぞ知るか!!安上がりで美味いからサイゼでええやろ!遥人と彗も来るか? 」
よくあるファミレスどこ派かという言い合い。
心底どうでもいい。
「俺も行こうかな。」
「めんどいけど、皆で行くなら行く。」
遥人と彗も同意した。
「んじゃ、行くか!!!!」
これが男子高校2年生4人の話。
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続きは気が向いたら書きます。
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