コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
お恥ずかしながら、僕、幼い頃はやんちゃだったんです。
5時を知らせるチャイムが鳴っても、帰らず、毎日毎日、泥まみれ。
そのせいで、お母さんによく怒られてました。
これは、そんな日々のある日のことです。
その日も僕は、暗くなっても帰りませんでした。
それどころか、カブトムシを捕まえるのに夢中で、裏山の雑木林に張り込んでいたんです。
カブトムシを追い求めて、奥へ奥へ。
ずっとずっと進んだ先に、少し、開けた土地があったんです。
そこには、だいたい、直径10mほどの、池があったんです。
僕ははじめて来る場所に目を輝かせて、キョロキョロしていました。
すると、池のほとりあたりに、ちょこんと誰かが座っているのが見えたんです。
当時の僕と同じくらいの男の子でした。
誰だろう。そう思って僕はその子に話しかけました。
「ねえねえ、君、だれ?」
その子は返事をしませんでした。
そのかわり、その子は瞬きを幾度かして、手に大事そうに握っていたなにかを、もっときつく、握りしめました。
そして、また瞬きをすると、
「すばる。」
と一言だけ言いました。
そして、
「君こそ、だれなの?」
と問い返して来ました。
「僕は、そうた。」
と返事をしました。
「ふぅん。」
その子は、別に僕に興味がなさそうでした。
僕は、なんか腹が立って、ここまで捕まえてきたカブトムシ入りの、虫カゴを見せびらかしました。
「ほら、これ、すごいだろ?」
僕は、ちょっとやな感じに言いました。
ですが、すばるは僕のカブトムシに目をキラキラさせて、興奮気味に、
「すごい。すごい。はじめてみたよ。」
と言いました。
思っていた反応と違い、ちょっとびっくりしましたが、あることがひっかかりました。
「え?すばるは、カブトムシを見たことないの?」
そうです。
僕はなにより、すばるがカブトムシをはじめて見たことに驚きました。
「うん。ぼくの星には、こんな生き物、いないからね。」
「星?」
「うん、そう。星。ぼくは、スバルって星からやってきたんだ。」
僕は、宇宙人とか、そういったものには、疎くて、理解するのに時間がかかりました。
僕が、目をしぱしぱして固まっていると、それに気付いたすばるが、隣に座るように促してきました。
僕は大人しく、すばるの隣に座りました。