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「野外実習【中編】」
> ――静かに、しかし確実に、世界が“軋む”音がした。
◆Scene01:異変の兆し
林の奥へ進むDランク班。
皆が「罰ゲーム」扱いしていたこの実習区域で、予想外の死骸が転がっていた。
それは、森に住む下級魔獣――のはずだった。
👤生徒A「……これ、やったの誰だよ?」
👤生徒B「潰れてる……いや、押し潰されてる……?」
皮膚が裂けているわけじゃない。
骨格が、内側から粉砕されてる。
明らかに、“何かの重さ”が働いた痕だった。
その中心に立っていたのは――
伊弉諾 林野。
👤生徒C「……おい、もしかして……お前が?」
林野は何も言わず、ただ森の奥へと歩き出す。
◆Scene02:沈む
その頃、隣のCランク班――実力者集団がいた区域では、
突如、地面が凹み始めていた。
「ドゥン」という重低音。
空気が震え、鳥が飛び去り、木々が傾く。
👤C班リーダー「結界、展開!……間に合え!」
だが、次の瞬間。
何もない空間に、“重さ”が降ってきた。
バギィィッ――と、音もなく数本の木が折れた。
魔獣でも、異能者でもない。
ただ、存在しないはずの“圧”が空間を潰していた。
そしてその中心に現れたのは――
👤林野「……あ、道間違えたかも」
C班の数人が、唖然としたまま林野を見る。
👤C班生徒「……なんだよ、お前……何を使った……」
👤林野「重力。落としただけ」
◆Scene03:認識されない力
その後、C班が帰還報告を出すも、
**「敵の存在なし」「異能反応なし」「魔法感知ゼロ」**と出たため、正式記録には残らなかった。
👤C班リーダー「ふざけんな……何が“反応ゼロ”だよ……」
「俺たちは……確かに“潰されかけた”んだぞ……!」
だが、学園のシステムは、
林野の力を測定も分類もできない。
よって、彼は今も「無能力者」Dランクのまま。
林野本人も、何も語らない。
ただ静かに、歩く。
◆Scene04:その背中
Dランク班のメンバーも、次第に気付き始めていた。
こいつは――**“ヤバい”**と。
👤生徒D「アイツ、ほんとにDなのか……?」
👤生徒E「いや、たぶん……Dですらない。“測れない”だけ」
そして林野は、昼飯の時間になっても一人静かに木陰でパンを食べていた。
まるで、世界と“噛み合っていない”。
でも、だからこそ。
彼の周囲だけ、“世界の法則”が崩れていた。
次回予告:第8話「野外実習【後編】」
> 「……なんで、生きてんだよ……あんなの喰らって……!」
「違う。“生きてる”んじゃねぇ、“死ねない”んだ」
> 鳴動、浮遊、崩壊。
地が沈み、空が歪む。
常識という名の“重力”が、林野の周囲だけで裏返る。
> 「もう一度言うよ。僕は、何もしてない。
……ただ、ここに“いる”だけ」
> 次回、『野外実習【後編】』
異能世界の枠外が、輪郭を持ち始める。