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「野外実習【後編】」
> ――それは、野外実習用に設定された“想定外”。
◆Scene01:異物、出現
突如、森の奥――
本来出現しないはずの“超級個体”が確認される。
それは、半透明の殻に覆われた巨大生命体。
気配なし。異能反応ゼロ。
だが、確かに“ここにいる”。
Cランク班リーダー「ちょっ、待て……アレ、どういう分類だ……?」
補佐教員(通信)「……分類不能。警告レベルS、即時離脱せよ」
そう。
“本来、存在してはならない存在”。
でも、それを見上げていた伊弉諾 林野の目は――まったく動揺していなかった。
◆Scene02:圧潰(あっかい)
巨大個体が動き出す。
音を置き去りにして、空間ごと襲い掛かる。
魔術障壁も異能結界も、一撃で砕かれる。
C班は絶叫しながら退避を試みる――が、
そこに一人だけ動かず立つ者がいた。
林野「……うるさいな。重いのは、嫌いなんだ」
彼が右足を、一歩、踏み出す。
その瞬間。
「空間ごと、沈んだ」
巨大個体の下半身が、地面に沈みこみ、歪む。
骨も血肉もない。
“重さ”が、概念としてねじ込まれた。
次に、林野が左手をゆっくりと前に出す。
林野「ここから、動かないで」
それは命令ではない。
ただの、法則だった。
巨大個体の体が空中で止まり、崩れ始める。
潰れるのではない。
重力そのものに押し潰され、理論の外に消えていく。
◆Scene03:そして、何も起きなかった
異変は、起きた。
けれど、“起きなかった”ことにされた。
――センサー記録:異常反応ナシ
――生徒報告:C班軽傷、異常ナシ
――敵対存在:未確認、消滅処理済
学園は“理解できないモノ”を、「なかった」ことにした。
そして、林野も何も言わない。
林野(独白)
「この世界が、まだ僕を測れないだけ。
それでいい。それがいい」
生徒の声(遠く)「……やっぱりアイツ、何かおかしいよ……」
別の声「いや、逆に……何もないのが、一番怖いんだって」
◆Scene04:異能学園、その深部
数日後、上層部の会話。
幹部A「“例のDランク”、例の個体に接触してたらしいな」
幹部B「反応はゼロだ。接触も戦闘も“記録されていない”。」
幹部A「記録されていない、か……それが一番不気味だ」
幹部B「奴は“世界が未対応の力”……”無能力者”に擬態している異質だ」
彼らの会話は、
林野に届かない――ようで、届いていた。
林野「……別に、隠してるわけじゃないんだけどな」
–了解、
じゃあ今度は――ついに“異能学園そのもの”と林野が向き合うとき。
静かに、だけど確実に、核心へ近づく布石としての次回予告。
次回予告:第9話「学園長との話し合い」
> 「君の記録だけ、真っ白なんだ」
「それって……問題あります?」
> 本来、Dランクごときが通されるはずのない“特別面談”。
けれど、伊弉諾 林野はそこに、あまりにも自然に座っていた。
> 「重力は、物を引き寄せる。……でもね」
「拒絶することも、できるんだよ」
> 異能の頂点と、“測れぬ者”が相対するとき、
世界は“異物”を受け入れる準備を始める。
> 次回、『学園長との話し合い』
――これは、力ではなく、“在り方”の話。