まぜたside
君がいなくなって1年
ま『…けちゃ』
そう呟いても、もう君は笑って返事をしてくれない
去年の冬、俺の恋人けちゃは車の事故に巻き込まれてこの世を去った
そう、たった一人きりで
ま『…なぁ、俺も今からお前のところに行ってもいいかなぁ…?』
誰もいない屋上でぽつりと1人でつぶやく
お前がいない毎日は辛くて苦しいんだよ
けちゃの元へいこうとしてもみんなが俺を止める
でも、もう誰にも邪魔されない
ま『…けちゃ、今からそっちに行くから』
手すりに手をかけて、グッと前のめりになる
あぁ、これでやっと……
?『…ねぇ、君。飛ぶ?』
手すりを飛び越えて飛ぼうとした瞬間、どこからか声が聞こえた
聞き覚えのある、懐かしい声
辺りを見渡すと、天使の羽に天使の輪っかをまとったけちゃが立っていた
ま『け、ちゃ…?』
け『えへへ、久しぶり…だね。まぜち』
ま『けちゃ、なんで…』
ぽかんとする俺にけちゃは話し続ける
け『もう!僕、心配だったんだからね!!僕が死んでからまぜち、まともにご飯食べてないでしょ!それに目の下、隈で酷いよ..心配でいてもたっても居られなくて会いに来ちゃった…笑』
『ねぇ、見て!僕、天使になったんだ!キラキラで綺麗でしょ?』
そう言ってふにゃりと笑うけちゃ
でも、その表情はどこか切なげなで胸がぎゅっと痛くなる
ま『けちゃ…!』
俺は思わず、けちゃに手を伸ばす
ま『ぁ…え…?』
けちゃに触れようとした瞬間、触れた部分だけスっと泡になって消えてしまった
け『…まぜち、僕は死んだんだよ。まぜちは僕に触れないし、僕はまぜちに触れない』
そう言って悲しげに瞳を揺らす
け『…まぜちさ、今から死のうとしてたんでしょ?』
ま『なんでそれを…』
け『僕は天使なんだよ、それにまぜちのことなら誰よりも知ってるよ笑…まぜちはこの世界に必要な人だよ。だから死んじゃだめ…僕がいなくたってまぜちにはリスナーさんやメンバー、たくさんの人が愛してくれるでしょ?』
ま『お、れは…俺はけちゃがいないと生きていけない。だから、そっちに連れてってよ…』
け『っ…そんなこと言わないでよ!!まぜちはこれからもたくさんの人に愛されて、幸せに死ぬの!!!僕なんかのために簡単に死ぬなんて言わないでっ!!!!!』
けちゃの綺麗な瞳からポロポロと涙がこぼれる
あぁ、こいつはどこまで優しいんだ
ま『…それは無理だよ、けちゃ』
け『なんで…っ』
ま『お前が好きだから、じゃだめ?…お前がいなきゃ、俺は絶対幸せになんかなれないんだよ』
け『っ…』
ま『けちゃ、お願い。俺の最後のわがまま、聞いてくれる?』
け『…なに、?』
ま『俺、これからもこの先もけちゃが大好き。これはずっと変わらない。だからさ…』
━━━ 俺と一緒に飛んでよ ━━━━━
そう言ってフェンスを乗り越えてけちゃに向かって思い切り、手を広げる
ま『おいで、けちゃ!』
け『っ、まぜち!』
けちゃもそれに答えるように俺に抱きつく
そして2人で落ちていく
後悔なんてない
これは俺が望んだ結末だから
ま『けちゃ、愛してるよ』
け『僕も━━━━━━━━━━━━』
あぁ、君は俺の天使だ
けちゃside
ごめんね、まぜち
僕が死んだあの日、いつか君が僕を追いかけて死のうとしてるってこと知ってたよ
だから、こうして君を止めるために会いに来たんだ
でもね、本音を言うと僕の言葉さえも無視して君が僕の元に飛んできてくれるんじゃないかって思ってた
そんな淡い期待を持って会いに来たなんて、まぜちが知ったら怒るかな?
でも、今はそんなことなんてどうでもいいや
まぜちはやさしく微笑んで僕を抱きしめる
触れられた部分は泡になって消えていく
でも、何故かそれさえ心地よくて周りの音なんてもう聞こえない
ま『けちゃ、愛してるよ』
最後に見たのはグシャッと潰れる音と幸せそうに眠る君
その瞳はもう二度と開かれることはないだろう
こんなことを結末を望んだ僕は最低だ
僕も愛してるよ、まぜち
あぁ、僕は天使じゃない
コメント
1件
コメ失礼します!ちょー最高でした!!