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⚠注意喚起⚠
nmmn,rurb要素
こちらは完全二次創作のためご本人様には一切関係ございません
年齢・関係性・二人称など全て捏造
⚠死ネタが含まれます
前編は約4000字
すべてkyng視点
執事kyngと病弱令息hsrbのお話
↓以下伏字なし
上質なカーペットの敷かれた廊下を歩き中庭に向かう。透明なガラス越しに目当ての存在を見つけ、最小限の音でノックをしてからドアを開けた。
「ここにいらっしゃったんですね。」
振り向いた拍子にその長い紫髪がさらりと揺れて、嬉しそうに目を細めた彼の顔を隠す。かつかつと革靴特有の足音を鳴らしながら近づけばその微笑はたちまち不服そうな表情に変わった。
「今夜は一段と冷えます。お体に障るといけないので部屋に戻りますよ。」
「……そういうと思いました。まだ星を見ていたいんですけど駄目ですか?」
こてんと首を傾げて猫なで声でそんなことを言う。女性のメイド相手ならこれ一発で大抵の言う事は聞いてもらえるだろうが、生憎相手は俺だ。
「駄目です。ほら、戻りますよ。」
すっと下から手を伸ばすが彼がそれを受け入れることはない。代わりに腕を大きく広げた姿勢で止まり、またこれかと心の中で呆れつつ、仕方ないと彼に背中を向けた。
少しした後に首に腕が回され背中に控えめに体重が乗せられる。勢いよく立ち上がれば小さな悲鳴が背中から聞こえたがそれを無視して部屋へと急いだ。暖炉に火を焚べておいた甲斐もありちょうどよい暖かさの部屋の中、ベットの上に彼を降ろす。未だ不服そうな彼の機嫌をとっておくかと、興味のありそうな話題を振ることにした。
「また星を見ていらしたんですか?」
「えぇそうです!小柳くんは知ってますか?星にお願いすると望みを叶えてくれるんですよ。」
先程までの顔から一変、きらきらと輝く瞳が俺を捉える。星が願いを叶える……ね。今どき子供でも信じていないような論拠の分からない話。生まれつき体の弱く外の世界を知らない星導にとっては史実と変わらないのだろう。
まだ話足りないと言うような彼だったが、もう夜も更けているので眠らせることにした。横になった後もちらちらと俺を伺っている瞳の上から手で蓋をして眠るように促す。しばらくすればすーすーと寝息が聞こえ始めたのでそっと部屋から出て、自室に戻りいつも通りの業務を終えて就寝するのだった。
俺はこの家に……細かく言えば星導に使える執事だ。まぁ執事とは口だけで、言っても俺は戦闘要員。5年前に雇用されて以来、課された業務は星導の身を守ることだけ。まぁそれだけであの膨大な給料を貰うのは気が引けるので、彼に懐かれてる自覚のある俺はこのように日々のお守りもしているわけだ。
「おはようございます。」
声をかければ眉間にしわがより、せっかくの整った顔に似つかわしくない唸り声が漏れ出る。これもいつものことなのでしばらく放っておけば、のそのそとベットから起き上がった。ぼーっとしてる間に用意していた衣服に着替えさせ、髪をとかし、仕上げに彼お気に入りのリボンでゆるく1つに結んでやった。
朝食の時間だといえば少し嫌な顔をしたものの彼は素直に部屋から出た。朝食の時間は彼の家族が唯一顔を合わせる機会だ。星導と同じく体の弱かった奥様は数年前に亡くなられた。だから旦那様と長男と次男である星導だけがいやに広い食卓で食事をとる。星導は口にこそ出さないがこの時間があまり好きではないようだ。
礼儀正しく食前の挨拶をして各々が食事を始めて少し経った頃、旦那様がにこりと笑って彼に話しかけた。
「ショウ、今日は髪を結んでいるんだね。」
星導はそれに微笑みと感謝の言葉を返す。しかし俺は後に続く流れを知っているので、髪を結ばなければよかったと後悔した。
「綺麗だよ。……お前は本当に彼女に似ているね。」
瞬間食卓に嫌な空気が走る。星導は少しばかりの沈黙の後、目を伏せて「そうですね…。」なんて言って食事をとるのをやめてしまった。長男は一連の流れが気に食わないように眉をしかめ星導を鋭く睨む。メイドたちですらも少し身じろいだが、旦那様だけがこの空気に気づいていないように笑っている。
彼女……それはつまり星導の母親のことだ。俺も写真でしか見たことがないが彼女は確かに星導に似ていた。だがじっと見れば見るほど違うところのほうが目立ってくる。しかし、星導の髪が長いことと体の弱いことがよりいっそう錯覚を促すのか、旦那様は毎日毎日飽きることなく星導を彼女と重ねているのだ。
もうこれ以上食べそうにないと判断し、俺は星導を部屋に連れ戻すことにした。部屋を出る直前、長男が俺だけを呼び止める。
「なに、少しばかり話したいことがあってね。この後、私の部屋に来てくれないか?」
貼り付けたような笑顔に嫌な予感がした。彼が星導を、ひいてはその執事である俺をよく思ってないのは確かだ。きっと俺たちにとって良くない話なのだろうと思うが権力の前ではYESという他ない。
星導を部屋に戻してからすぐに長男の部屋へと向かった。先ほどと変わらず嘘くさい笑みに嫌悪感を覚えながら、態度には微塵も出さず用件を伺う。
「………はい?」
「聞こえなかったのか?」
言われたことが右耳から入り左耳から抜けていったような気分だ。否、そう思ったのは一瞬で、頭の中でその言葉がぐるぐると渦巻き背中を嫌な汗が伝う。
「君は今日をもって解雇だ。」
2度目の宣告。自分が解雇になる理由なんて全く思いつかない。……いやこれは多分理屈じゃないのだろう。俺と、俺に懐いている星導に対する嫌がらせ。ろくでもないやつが権力を持っててしまったものだと悲観するがそんなこと思ってる場合ではない。
解雇通知だけを告げられ早々に部屋から追い出された俺はただただ部屋の前に立ち尽くす。まさかと思い自身の部屋に戻ると既に俺の荷物は纏められていた。もともと物の多い部屋じゃなかったことが裏目に出るとは……。
正直言うと、この家自体にそこまで思い入れがあるわけじゃない。月々の莫大な給料の蓄積により俺の懐も十二分に潤っている。じゃあ何が問題かって?それはもちろん……。
「小柳くん…?」
後ろから聞こえた声にはっと振り返る。いつも口うるさく外に出るときは俺を呼べ、と言っていたからだろうか。ストールを身にまとい外出の装いをしていた星導が、明らかに動揺した様子の俺を不思議そうに覗き込む。
「外に行きたいんですけど……。もしかして忙しいですか?」
じゃあまた後でいいです、なんて言って踵を返した星導の腕を掴む。困惑した彼をぐいと引っ張り自身の部屋に引き入れた。俺の部屋を何度か訪ねたことのある彼は一目でその違和感に気づいたようだ。
「……?あれ、なんかこんなに殺風景でしたっけ…?荷物もまとめ……て…?」
5年も仕えてきた身なだけあって、彼にはきちんと別れの挨拶をしなければと思う。いつもは省略してしまうが、今は礼儀正しく片足をついて座り片手を胸に当て頭を下げる姿勢になった。
「本日をもちまして私はあなたの執事を辞めることとなりました。非常に残念ですがそう命令されてしまったので……私はすぐにここを出ます。」
いつになくかしこまった挨拶に自分でも違和感を感じる。でも肝心の彼からの返答がないのを不思議に思い顔を上げた。
「っ……!?」
頬を伝う透明な液体。それを拭うこともせず放心したまま俺を見つめている様子は異様だった。星導が泣いているところを見たのも初めてだ。
主君、……いや元主君を泣かすなんてあってはならない。慌てて近寄ると、俺をしっかりと捕らえた瞳からさらに大粒の涙がこぼれ落ちていく。
「い、いやです!なんですかそれ、誰が、そんなこと……っ…!兄さん……兄さんでしょう!?」
取り乱しながら声を張り上げる星導に自身の胸がちくりと痛む。俺に懐いているのはしっていたがまさかここまでだとは思ってもなかった。落ち着けようとする俺の声も聞かず、星導は言葉を続ける。
「こんな息苦しい家でも小柳くんが居てくれたから頑張って生きようって思えてたのに…小柳くんが居なくなったら俺は……?」
泣きながら大きな声を出したせいか、大きく咳き込んでしまった星導の背中を擦った。これ以上の無理は身体に負担がかかりすぎてしまうと思うが、そうさせてしまったのは他でもない自分でありどうしたら泣き止ませられるかなんて何も思いつかない。
ひっくひっくとしゃくりながら星導が俺の頬を掴んだ。目も頬も赤くして、唇も噛んでしまったのか少し血が滲んでいる。瞳がきゅっと細められ懇願するような声が響く。
「やだ…やだぁ……。だって俺、小柳くんのこと好きだもん…。」
“好き”。その言葉を友愛やあるいは臣下に向けるようなものだと解釈するには目の前の男の声が悲痛すぎた。
「好き…うっ…ぐすっ……好きなんです。ずっと、ずっとあなたのことが好きでしたぁ…。」
涙でぐちゃぐちゃの顔に。呂律の回らなくなりそうなほど声を上げて泣くその声に。自身のことを慕ってくれていた彼の最も素に近い姿に。悪魔のような、いや、それよりももっと酷い考えが頭に浮かんだ。
『このまま星導を連れ去ってしまえば…?』
星導のことは主君として好きだ。恋愛とは違うにしてもその気持ちに変わりはない。それにひどい仕打ちをしたこの家の人間へのささやかな復讐にもなるんじゃないか?
これは臣下でもなんでもないただの部外者がとある貴族の病弱な次男を攫っただけ。一度脳を支配してしまった空想はいとも簡単に現実を覆っていく。
泣きじゃくる星導の前に手を差し出す。これは執事としてではなく一人の人間、小柳ロウとして。
「星導、……俺と一緒に来るか?」
よほど驚いたのかさっきまで散々溢れてた涙も声もはたと止まり、ぱちぱちと幾度も瞬きをしながら手と俺を交互に見つめた。そしてやっと俺の言葉の意味を理解したのだろう。家族に向ける微笑とも、いつも俺に向ける目尻を下げた微笑みとも違う、どこか影を含んでいながら幼い無垢な子供のような顔で星導は笑って言った。
「はい!」
スクロールありがとうございました。
🐺さんの新衣装が激刺さりして衝動書きしちゃいました。なのでもしかしたら数日後にちょっと文章変わるかもです🙇♀
明日ちゃんと見返すので誤字とかあったら見ないふりしてください……。