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部活動対抗武術大会、当日。
家庭科室では、なにやら会合が行われていた。
薄暗い部屋の中から20人ほどの声が聞こえてくる。当日の早朝、いや、深夜2時と言った方が正しいだろうか。
そんな夜中に集まって一体何を話しているのだろう。
答えは翌日明らかになった――。
――珍しく全部活が参加することになった、部活動対抗武術大会だが、果たしてどこの部活が優勝するのか全員が期待に胸を膨らませていた。
まだ朝早い早朝、午前4時半。参加する部活動が、全て運動場に集結した。
パンデミックでも起きているかのように、混乱、ではないが、全員がその場でなにやら話し込んでいた作戦でも考えているのではないだろうか。
「おはよー歩美ー」
「おはよ‼」
紗季があくびをしながら歩美の方へ近づいていく。
「良い?絶対筝曲部が勝つからね!」
歩美が得意げに言うと、紗季は、アハハと笑って言った。
「茶道部だって負けないからね?」
「でもさ、やっぱり、強すぎるよ……みんな。空手部や剣道部に勝てるかな?」
「いや、あくまで銃撃戦、弓道部、射撃部が無いから、どうなるかは疑問だけど?」
紗季は両腕を組むとおちついたような表情で陸上部の方を見た。
ゴンゴン……。
全員が何かを叩いたような音に気が付くと、朝礼台の方を見上げた。
「皆さん、おはようございます。生徒会の彼方です。現在、午前4時半ですが、正午までバトルロワイヤルを開始します。ここで、勝敗の分け方について説明したいと思います」
倫が朝礼台で小さい紙を持って説明する。
「えーまず、正午になると、放送でお知らせします。使用するのはショットガン型、ハンドガン型と選ぶことができます。勝敗については全員ゼッケンをそれぞれの部活の看板が立ったところに集め、ゼッケンに一番多くついていた色水で決めます。色水が無くなった場合は第二美術室の前で生徒会が、用意しています。説明は以上になります」
倫はそう言うと、一息大きく息を吸った。
「それでは皆さん、それぞれの部室、活動場所に移動してください。そこが最初の立ち位置です‼」
倫はそう言って朝礼台を下りた。
先ほどまでの騒がしさが嘘のように、全員がその場に固まってしまった。
「どうしたんですか皆さん?もう移動していいんですよ?」
生徒会の文化部長、佐渡文華がそう言った途端、全員が一斉に花火のように散らばった。
筝曲の活動場所は理科室、茶道部からはかなり近い。
歩美の部活動は筝曲だ。そして、紗季は茶道部、始まってすぐに対峙することになるだろう。
「それでは皆さん、準備は良いですか?現在午前5時、Ready?…..Fight!」
校舎内に倫の声が響き渡った。
その瞬間、筝曲部全員が理科室から出ていた。
「うっ……」
「冷たっ」
廊下の方から声が聞こえてきた、おそらくもう攻撃を受けたのだろう。
騒がしい廊下を背に、歩美は理科準備室に入った。
彼女が逃げる戦法を取ったのは、彼女がこれに対して、あまり意欲がなかったからだ。
「はあ、さっさと終わらせよう」
小さく独り言をつぶやいた瞬間、
「あ、いた」
頭の方に固い感触が伝わってきた。
「誰⁉」
勢いよく振り返ると、そこには、ベル、つまり、冴香が居たのだ。
彼女はハンドガンを持って歩美のゼッケンに押し当てた。
「歩美ちゃん、悪いけど、犠牲になってくれる?私達テニス部も全員本気なの。だから、お願い」
冴香はそう言ってゆっくり引き金を引こうとした。
歩美は持っていたショットガンで冴香のハンドガンをはじき返した。
ハンドガンは宙を舞った。
「私、参加するつもりなかったんだけど、だから冴香ちゃんを攻撃するつもりもないよ。だからさ、他のところ狙ってよ」
「じゃあなんで参加したの?景品が欲しかったんじゃないの?」
「まあ、欲しいものはあるけど……、でも私が参加したのは、雪ちゃんたちが心配だったからだよ。参加するっていうから、ヒートアップしないかなって思って……」
「ああ、なるほどね。じゃあ、しょうがない、でもね、テニス部の方には、厄介なのが一人いるから」
冴香は、ハンドガンを拾い上げると、歩美に言った。
「厄介って、誰?」
「テニス部で、一番可愛い、並河信梨(なびかことり)。こいつはなー」
「あー、なんか聞いたことあるー。確か、海くんのいとこの」
「そそ。サッカー部が参加するって知って、なんか、本気だから」
「そ、そうなんだ……」
歩美と冴香は互いに苦笑を浮かべた。
一方その頃、サッカー部では……。
サッカー部は部長以外の全員が乗り気ではなかった。
「萎えるわ。マジで」
「ほんとな」
「山路、お前なあ」
そう、サッカー部、部長は山路だ。
彼が何故、この大会に参加したのか、それには理由があったのだ。それは……
「……俺はな、絶対に、お前らに痛い目を見てほしかったからサッカー部全員強制参加にしたんだよ‼」
山路は立ち上がり、振り返りざまにそう叫んだ。
そんな彼の様子を海と、流はきょとんとした顔で彼の顔を見た。