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再編集が始まったスマホの画面には、タイムラインが映し出されていた。
が──そこに表示されていたのは、
「公開済み:天鳴館 Final_Log_09_23」
視聴数:1,394,002 回
「……ハルカ、これ……投稿されてる。
しかも、うちらまだここから出てないのに、すでに“公開済み”扱い……?」
ミナミが顔を上げる。
「ねえ……思ったんだけどさ。
この天鳴館って、バズる映像を生むために作られた場所なんじゃない?」
「え……?」
ふたりが逃げ込んだ管理室の壁には、ホコリをかぶった金属製のプレートがあった。
そこに彫られていたのは、ある計画の名前。
「PROJECT_TN:Emotion Capture System」
▪ 被写体の“極限状態”を撮影
▪ 編集済み映像を自動で公開
▪ データ分析で“感情インパクト値”を最大化
▪ 成功例:ログNo.023(最大再生回数:800万回)
「……これ、ヤバいやつじゃん」
「そう。私たち、動画作ってるんじゃなくて、作らされてるんだよ……!」
そのとき、部屋の奥にある古いPCの画面が勝手に点いた。
【REC - LIVE STREAM ACTIVE】
「待って、これ……生配信されてる!!」
映像には、今まさに部屋にいる自分たちが映っていた。
チャット欄には、“視聴者”のコメントが次々に流れていく。
「この回マジ怖い」
「編集レベル高すぎワロタ」
「この子たち生きて帰れんの?」
「ガチなら通報レベル……」
ミナミが小さく言った。
「……“ガチ”なんだよ。
これは、企画でも演出でもなくて、
私たちの“青春”が、バズのエサになってるってこと……」
「バズりたかっただけなのに……」
それでも、ハルカはカメラを離さなかった。
「でもさ、だからって、うちらのチャンネルをここで終わらせたくない」
「……え?」
「視聴者のためじゃない。自分たちの青春を、自分たちの手で終わらせたいんだよ」
そのとき、生配信中のチャット欄にひとつだけ、固定された赤文字のメッセージが浮かぶ。
「最終撮影エリア:屋上。演者を誘導してください。」
――投稿者:K
「……出た、“K”」