sn「いっただっきまーっす!」
しにがみ君の、心地良い元気な
挨拶が居間に響く。
その挨拶に合わせ、みんなもいただきますと
呟きお母さんの作ったご馳走を口に運ぶ。
pe母「遠慮しないで沢山食べてねぇ、おばさん張り切って作ったんだから!」
お母さんが自信満々と言うように胸を張る。
kyo「…ん、確かに美味いな。」
cn「ほんとだ、美味。」
md「…イイアジ…」
re「やっぱご飯の時間って癒されるねぇ…」
運営国の方たちが食べている姿を見て、
お母さんはにこにこと笑みを浮かべる。
pe「…母さん、ほんとに張り切ったんだなぁ…」
tr「ねぇ、料理の量がすっごいことになってる…」
sn「うまっ、このキノコシチュー!栗ごはんもいい塩加減だ…!」
pe母「でしょでしょ?沢山味見して頑張ったのよ〜!」
しにがみ君とお母さんが、
場を和らげようと明るく会話をしている。
kr「……………………」
しかし、クロノアさんはずっと無言で、
少し口にシチューを頬張っては
じっと止まってを繰り返している。
pe「…クロノアさん?」
kr「……あぁ、どうした?」
声をかければ、
しっかりと返事はしてくれる。
考え事に没頭している、というわけでは
無さそうだが、やはりどこか上の空で
返事をされているような気がする。
pe母「どうしたの?さっきから元気なさそうだけど。」
kr「………………………」
tr「おーい、クロノアさーん?」
kr「…え、あ、俺?いやいや、全然大丈夫ですよ、全然。」
そう言ってクロノアさんは、
また黙々とシチューに手をつける。
kyo「…ほんまに大丈夫すか?クロノアさん。」
re「そうですよ、なんか調子悪そうだし…休んだ方がいいんじゃないですか?」
運営国の方々も気にしていたようで、
クロノアさんに心配の声をかける。
kr「…そんな、変でした?」
re「めちゃくちゃ変でした。」
cn「ずっと上の空…というか、考え事をしてるみたいな…なんて言うんだろう……」
kr「…………………そうですか。」
クロノアさんは、そこで話を
終わらせようと思ったのか
また黙々とシチューを食べ始める。
md「カクシゴトハシナイデ。」
kr「………………!」
急に発せられたその緑君の言葉に、
クロノアさんは大きく目を見開く。
kr「………隠し事なんてしてないですよ。」
md「……………………ソ。」
そしてまた、2人ともが黙々と
お母さんのご飯を口に頬張り始める。
pe「………クロノアさん……」
sn「ご馳走様でした!」
しにがみ君がパチンと手を合わせる。
最初の勢いで食べすぎたせいなのか、
一番乗りでご飯を後にした。
sn「食器はどこに持っていけばいいですか?」
pe母「大丈夫よ、そこに置いといて。私が片付けておくから。」
お母さんが食器を持って
キッチンの方へと移動する。
sn「…暇になっちゃった。」
pe「へれひでもひはら?」
sn「なんて言いましたぺいんとさん?」
pe「んぐっ…テレビでも見たらって。ほら、そこにリモコンあるし。」
sn「あぁ、テレビか。すいません、見てもいいですか?」
pe母「全然いいわよ。でも、今の時間帯面白いのやってるかしら…」
しにがみ君が、テレビの横にあった
リモコンを手に取り電源を付ける。
付いた瞬間流れ始めたのは、
この市のみ放送されている
ニュース番組のようだった。
きっちりとした服を着て、無表情で
座っている女性のニュースキャスターが
画面に大きく映る。
《続いてのニュースです。》
《先日、夢縁町にある──番道路で、”青い化け物が出た”との通報がありました。》
そのニュースキャスターの声とともに、
映像が現場と思われる場所に移り変わる。
そこは、俺たちが今日行った道路に
とても近い場所だった。
《現場に向かうと、通報者と思われる女性が倒れており、病院に搬送されました。女性に外傷は無く、数時間後に目を覚ましたそうです》
《しかし、女性に通報の内容について聞いてみたところ、通報した覚えなどない、私は通報していない、などと言及しているそうです。》
《また、現場には謎の青い液体も残されており、警察はその液体の正体について、詳しく調査しているとのことです。》
《続いてのニュースです。──────》
その言葉を最後に、ニュースの話題は
次のものへとうつり変わる。
tr「…青い化け物、ねぇ…」
トラゾーが、ご飯を頬張りながら
そのニュースを見て呟く。
pe母「あぁ、そのニュース。今朝からずっと話題になってるのよ。」
お母さんが、しにがみ君の食器を運びながら
そのニュースについて詳しく教えてくれた。
pe母「実は去年も一昨年も、同じようなニュースがやってたの。」
re「…え、そうなんですか?」
pe母「そうなのよ〜。事件の内容はほとんど同じで、誰かが青い化け物が出たって通報して、現場に行ったらその人が倒れてて、その人は記憶が無くて…」
pe母「…あでも、今回はいつもと違って青い液体溜まりができてたのよ。」
pe母「それに、『この液体は青い化け物の血だ!触ったやつは青い化け物になる!』って噂を流した人達がいて、もうみんな怖がっちゃって…」
お母さんは、困った困った、と言いたげな顔で
頬に手を当て首を振る。
cn「そんな前からあるものなんですね…」
md「…フシギナハナシ…」
そこまで話すと、俺たちはまた各々
食事に戻ろうとした。
その時だった。
急に、俺の横でガタンと大きな音がした。
驚いて全員が音の方を向く。
そこに居たのは、真っ青な顔をしている
クロノアさんだった。
椅子を倒し立ち上がったクロノアさんは、
額に手を当て机にもたれかかっている。
kr「…っはぁ……はぁ………」
pe「うぇ、ちょ、クロノアさん?!」
俺はクロノアさんに近づき、
体を揺すったりさすったりしてみる。
しかし、クロノアさんはずっと
荒い呼吸を繰り返すばかりだ。
sn「おおお落ち着いてくださいクロノアさん!」
tr「深呼吸しましょう、深呼吸!ゆっくり、落ち着いて………」
しにがみ君とトラゾーもクロノアさんを
支えるが、一向に良くなる気配は無い。
クロノアさんは、支離滅裂な独り言を
呼吸と共に繰り返している。
kr「青い化け物、青い血…そうだ、思い出した…らっだぁ…化け物、思い出した…門番…記憶…あぁ、ぁ……」
段々と呼吸を荒くしていくクロノアさんに
俺らは対応することもできず立ち尽くす。
kr「らっだぁ、は…記憶、化け物、消す……青い…怖い、苦しそう、大きい…青い鬼…青、鬼……」
md「…アオオニ……」
クロノアさんはそこまで話すと、
ゆっくりと首をぎこちなく動かし俺を見た。
kr「…ダメだ…ダメだ、帰ろう、ぺいんと。危ないよ、化け物が近くにいるんだ。逃げなきゃ…いや、逃げろ。喰われる、喰われてしまう…」
その顔はとても怯えていて、
小刻みに震える手は俺の袖を弱々しく
掴んでいる。顔は真っ青だ。
kyo「ちょ、ちょいちょいノアさん。一旦落ち着きましょって。」
きょーさんも加勢に入ってくれたが
クロノアさんは怯えた顔を横に振るだけ。
kr「ダメだ、逃げよう。逃げた方がいい。なぁ、みんな覚えてないのか?あの青い化け物を…」
クロノアさんは、何かを訴えかけるように
俺らのことをゆっくり見渡す。
しかし、その訴えに応えた者はいない。
cn「いやでも、まだらっだぁの捜索が……」
re「そ、そうだ、まだらっだぁが見つかってない、から……」
みんなでクロノアさんに反対する。
すると、クロノアさんは悔しそうに歯を
食いしばった後、はぁ、とため息をついて
決意した眼差しで言った。
kr「…俺は、帰る。こんな危険な場所、みんなもいない方がいい、絶対に…」
そして、先程よりも強い圧で、一言。
kr「……喰われないように、気をつけて。」
クロノアさんはそう言うと、
そそくさと荷造りを終え直ぐに
家を出ていってしまった。
pe母「え、ちょ、ノアちゃん?!」
呆然としていたお母さんが呼び止めるが、
クロノアさんは足を止めず、
ついに見えなくなってしまった。
pe「………クロノア、さん……?」
コメント
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やはり、無夜は天才なのか、、?
やべぇたけしやんけ…← 栗ご飯とかクソ田舎感強すぎる そしてkrさぁんいゃぁだぁ
『俺は帰らせて貰う』て、 フラグ過ぎやろ()