コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
彼女に風邪を移したのは間違いなく僕。それに彼女は見舞いに来てくれたのに、僕が行かないというわけにもいかないはずだ。
でも放課後、義務感だけで彼女の家に向かっているわけでもないことに、僕は薄々気づき始めていた。
あれだけひどい目に遭わされた相手なのに、会いたかった。会えば必ず大騒ぎになるし、ときには童貞だと馬鹿にされたりもするのに。
彼女の過去の性体験の話を聞かされるのも苦痛だ。でもその苦痛もつまり嫉妬なのだろう。無関係の女性がどれだけビッチだったとしても僕の心は傷つかない。
僕の本心を彼女に打ち明けるつもりはない。彼女の性格を考えれば、聞けばさらに調子に乗るだけだろう。当分は今のままの関係でいいんじゃないか。
そう結論づけた頃、彼女の家の前に到着した。
彼女は寝込んでいるから出迎えるのは母親だろうと思ったら、両親に弟の菊多、家族全員に出迎えられた。全員が苦々しい顔をしていて、ここから先へは進ませないという強い意思を隠していなかった。
「すいません。僕のせいで映山紅さんまで風邪を引かせてしまって」
「おまえはおれたちが風邪を引かせたことを怒ってると思ってるのか?」
「まだ誤解されてるようですが、僕は映山紅さんを性欲解消の道具にしたことはないし、そうしようと思ったこともないですよ」
「口だけなら何とでも言えるわ!」
「セックスが目的ではない、本当の愛を私に教えてくれ。恋人になると決めたとき、映山紅さんにそう言われました。本当の愛が何か僕もよく分かってないですが、セックスが目的なら本当の愛ではないことくらいは分かります」
三人は困った顔をして顔を見合わせた。
「失礼します」
勝手に上がらせてもらったけれど、誰も僕の侵入を阻止しようとはしなかった。