テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
〜前話のあらすじ〜
矢を放った天使の名はアキメネスと言った。この宮殿の守り役的なことを任されているらしい。そしてアキメネスは何も言わずとも状況を把握し、何も理解できていないアムネシアとカーパスを置いて、ハチスと話を進めた。そしてアキメネスは指定した場所に立つよう、アムネシア達に言う。言われるがままそこに立ったアムネシアとカーパスだが、ハチスだけはそっと距離を開けていた。アムネシアの嫌な予感は的中。アキメネスの掛け声と共にアムネシアとカーパスが立っていた床が開き、2人は落とされる。落ち先で2人はハチスに色々問い詰めるために出口を目指すのだった。
「…めんどくさいな」
「え?」
カーパスがそう呟いた。カーパスの見ている先を見ると、目眩がするくらいに道が入り組んでいてたくさんの分岐点があった。
「これ…出れるのかな」
「ひとまず目印をつけながら行くしかない」
「じゃあ目印は僕がつけていくよ」
「……よろしく」
カーパスは僕から目を右に逸らしながら言った。カーパスの返事はよく間がある。無口なわけじゃないだろうし、人見知りなわけでもないと思う。…何かあるのだろうか。
「それじゃあ行くか」
カーパスはそう言うと前へ歩き始めた。僕は目印をつけながら、それに付いて行った。
1時間くらい経っただろうか。同じところに戻ってきたり、行き止まりなどでなかなか上へ進めていなかった。
「また行き止まりかよ…!!どんだけ広いんだよここは!」
流石にうんざりしてきたのかカーパスはかなりイラついていた。
「どこか隠し通路でもあるのかなぁ」
「さぁな。…なぁ、ここ破壊してもいいと思うか?」
「え?」
天井を少し睨みながらカーパスは言った。
「全然上に行けないんだ。破壊した方が早いだろ。さっきまでは神様の作った宮殿を破壊なんてしたら何があるかわからなかったからやらなかったけど…流石にここまでくると我慢の限界だ」
「確かに!ここ破壊できそう?」
「一発やってみる。ちょっと離れてろ」
「わかった」
カーパスの言う通り僕は少し離れた。僕が離れたことを確認するとカーパスは上を向きながら天井に右手の手のひらを向けた。
すると僕の後ろから風が吹いてきた。
「風が…!」
風はカーパスの真上の天井に集まってきているようでその勢いはだんだん強くなっていった。
「…はぁっ!!」
カーパスの声と共に真上の天井が爆発したかのように竜巻が発生した。
「うわっ!」
さっきまで後ろから吸い集められるように風が吹いていたのに、今度は前から自分の方に飛び込んでくるかのように強い勢いで風が押し寄せてきた。今にも吹き飛ばされそうな勢いだ。
「…穴は開かないか…」
カーパスが右手を下げた時には竜巻は消えていて、巻き上げた天井の破片がカーパスの周りに転がっていた。
竜巻の発生したところを見ると天井が欠けているが、穴は開いていなかった。
「すごい…」
思わず感嘆した。
「仕方ない、もう一発…」
「!?カーパス!!」
「え?」
カーパスがもう一度やろうとしているとカーパスの真横の壁から針らしきものが突き出し始めていた。いや、棘といってもいいのかもしれない。カーパスはそれに気づいてなかった。
「横!危ない!!」
僕は咄嗟に走り出しながらそう叫んでいた。
「なっ!?」
横を見て驚き、避ける体勢を取れてないカーパスに向かって壁から針が勢いよく飛び出した。
「ッ!!」
咄嗟に目を瞑ったカーパスに僕は飛び掛かり間一髪のところで針を避け、2人で床に倒れ込んだ。
「う…カーパス、大丈夫?」
「…悪い、助かった」
よかった。なんとか無事みたいだ。そして棘のような針は吸収されるかのように壁に戻っていき、何事もなかったかのように元に戻った。
「にしても、なんなんだよあれは。…完全に殺す気だったぞ」
「わからない…。!?カーパス、あれ…!」
後ろからカタカタと石の転がるような音が聞こえ振り返ると、先程カーパスが破壊した天井の破片が元の場所は戻っていき、完全に修復された。
「…破壊は許さないってか」
「そうみたいだね」
カーパスは立ち上がりながら言った。
「じゃあ、地道に進んでいくしかない。あいつが「どうかご無事で」とか言ったんなら、絶対どこかに出口はあるはずだ」
「だね!」
僕も立ち上がりながらそう返事すると、カーパスは腕を組みながら少し上を見上げ、目を瞑っていた。
「…まず、ここはどんな目的で造られたんだ?」
「え?」
カーパスはそう言いながら目を開けた。そして今考えたことだろうか?色々と言い始めた。
「守り役をつけるくらいの宮殿で、地下にはありえないほど広い迷宮。破壊すればその者を殺す勢いで襲い、壊れたところはすぐに修復される。…なんで神様はこんなところを造った?」
「確かに、かなり謎だね」
「それに1番の謎はアムネシア、お前を神様がここに連れてくるようにハチスに命じたことだよ。神様はお前のことを認知してる。四天王のあいつが敬語で様呼びするくらいの存在なんだ。そんなやつをここに突き落とす理由がわからない。下手したら死ぬんだぞ」
確かに。カーパスの言う通り何故 僕をここに連れてきたんだろう。僕は…何者なんだ?
「僕をここに閉じ込めたいのかなぁ…」
「いや、多分違う。閉じ込める理由がない。四天王のあいつから敵対されてないってことは何かしたわけじゃないと思うし」
「なら、一体…」
何も思いつかなかった。何も喋らなくなった僕を見たカーパスは少ししてから言った。
「…アムネシア。最初のあの落とされた場所覚えてるか?」
「え?」
「…一旦あそこに戻るぞ。かなり時間がかかるだろうけどな」
「わかった」
カーパスは何を考えているんだろう?かなり歩いたのに最初の場所に戻る?でも、多分カーパスなら何か…わかりそう。そう思った。少なくとも記憶のない僕よりも知っていることは多いだろう。…やっぱり僕、不甲斐ないな…。そう考えると何故か少し頭痛がした。
(なんだろう…?なんか、この感覚頭が痛くなる…)
「?どうした?ほら、さっさと行くぞ」
「あ、う、うん!」
カーパスに声をかけられはっとした。…一旦この事は忘れよう。今はここから出ることが最優先だ。
そう思うことにして、また僕らは歩き出した。
コメント
2件
確かに…どうしてこんなとこに突き落としたんでしょ🤔カーパスさんはまだしも… アムネシアさんはどっかの偉い人なんですよねぇ…まさかカーパスさんと共に×ねと…??