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ボクが幼い頃の話だ
**「夜中にある扉をあけてはいけない」**と物心ついたときから聞かされてきた
理由は今も知らない
噂では、そうだな…
いるはずのない子供がいる、だとか
夜になると悪魔が人さらいに来る、とか馬鹿げているような話ばかり
…だけどここ最近は人の話す声なんて聞こえなくなった
時々、人が来ると思いきや去っていく
皆噂が好きみタいだ
ある日のこと
此処に独りの旅人がキた
宿を探しに迷っているようだ
古い扉が軋む音がする
旅人は古い扉の間から顔を覗かせ
『勝手に入ってしまってすまない、酷い嵐で…』
『…少しの間だけ休ませてほしい』
低い声を響かせこちらに話しかけている
確かに、外は豪雨で、此処に来るのもやっとのことだったろう
ひとまず休むといい。
旅人は気に留める様子はなさそうに椅子に腰掛ける
窓の外で雷が鳴り響く
風が音を立て、枯れ木が大きく揺れ動いている
風に吹かれた此処は何処も古びた音がしている
階段や床は一部が崩れ落ち、屋根は蜘蛛の巣や埃だらけ
いるだけで気味が悪いだろうに…
旅人は疲れて眠りについてしまったようだ
「フフ…」
誰かの声がする
旅人以外に人はいないはずだ
何処から聞こえるんだろう?
ボクは頭の中でグルグルする疑問を壁にぶつける
グルグル、グルグルと…
壁に満遍なく塗りつぶす
今思うと、噂も人がいなくなったのもボクがここにいるせいだった
噂はボクのこと。
人はいなくなったんじゃない、ボクとずっとこうやって遊んでくれている
でも、何でだろう
なんで皆こんな真っ赤な色してるんだろう?
また頭がグルグル…
「ぐーる、ぐーる、頭が回ってー…」
またボクの記憶がなくなっちゃうな…
____ミンナと遊ばなきャ…
ギシギシと音をたてて何かが登ってくる
旅人が起きたようだ
崩れ落ちた階段は登るのに苦労する
『誰か…いるのか?』
『なんで音が色々なところからするんだ。』
旅人も疑問に思っているようだ
音がボクの部屋の前でピタリとやんだ
聞こえるのは、豪雨、遠くで鳴る雷、そして…
旅人の荒い吐息
『…入るぞ』と震えた声で旅人が話しかけてくる
だカらボクは出迎エタ…
扉の先からは何かを削るような音が鳴り響いている
正直、この扉を開けるのは気が引けるが…
食料があるなら、取るに越したことはない
取っ手に触れる手が震える
中からは*ギギッ…ギギッ*と鳴り続いている
『フゥ…、入るぞ』
勇気をだして扉を開けたことを後悔している
いや、もう遅い
扉の隙間から見えたのは真っ赤な壁に、真っ赤な顔をした人の顔
その顔はこの世の何よりも恐ろしい笑った顔
笑った顔をしたソイツは強引に部屋に連れ込んだ
部屋の中は腐敗臭がする
部屋の中には人骨のようなものがあった
『何なんだ、お前は…』
片方の手には削られた人骨のようなものを握っている
ソイツの後ろには人骨で削ったような丸い落書きが何個も重なっている
音の正体は、こいつだったのか。
ギシギシと歯ぎしりをさせソイツはこちらを笑顔で見てくる
そして私の手を離さずに笑顔でこう言った
「ボク___」
目の前はもう暗闇
私はもう、息をしていない
…開けなければ、良かった…