テラーノベル
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長らくお待たせいたしました…自分の性癖に素直に従った結果長くなってしまったのでまだまだ続きます。
!センシティブな内容を含みます。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
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扉が開く音に顔を上げるときんときが立っていた。こちらの部屋が暗いせいで逆光になっていて表情が上手く読み取れない。
ゆっくりと歩み寄ってきた彼はこちらが緊張しているのを見留めると、息だけでふ、と笑う。
「そんな、取って食うわけじゃないんだから」
ゆるりと下げられた眦は草食動物かのような無害さを思わせる。しかしその奥に湛えられた欲は青色を絶えず熱していて。その熱を察したスマイルもまた腹の底にじわりと澱んだ熱が溜まるのを感じた。
「俺的には取って食われる気持ちなんだが」
「ふふ、そっか」
穏やかな弧を描く唇に思わず目を奪われる。視線を逸らせないでいると額同士がこつんとぶつかった。きんときの顔が、近い。まつ毛が触れ合いそうだと思った。
思わず目を瞑ると唇に柔らかくかさついた感触がしてすぐに離れていった。ちゅ、ちゅと軽く皮膚を合わせる。その動きの緩慢さに疑問を覚えてうすく目を開けると伺うようにこちらを覗き込む群青と目が合った。さっきまであんなに強引だったのに何を今更。
物言いたげな眼差しで見つめるときんときは視線を逸らす。
「……」
黙ったままでいるきんときの顔にはどこか不安さと言うべきか、心配そうな表情が見て取れた。これから執り行われるであろう行為をやっぱりやめよう、と言わんばかりの不安な表情。
…………まさか、俺を前にして無理になったとか……。
じっとりと嫌な感覚が体を覆うのを感じながらきんときの出方を伺っていると、もそもそと言いづらそうに口を開く。
「いや、勢いで来ちゃったけど別に無理やり襲おうとかいうわけじゃないし……」
意外な言葉にスマイルは思わず瞠目した。今更俺を案じているのか。
いや、本当に今更過ぎるだろうが。肝心なところで抜けているというか、肝心なところで抜け目がないというか。彼にはどちらも当てはまるような気がして身体の強張りがすっとほどける。
先程まで強引だったきんときが急に不安になって動きを止めたのだと思うと、口ごもっているのがなんだか無性にかわいく見えてしまって、スマイルは首をぶんぶんと横に振った。しょぼくれた犬みたいでかわいいとか全然思ってない。
「夢で大丈夫だったとはいえ、現実の俺が無理だって可能性もあるから確認しときたくて。」
大丈夫そう?と眉尻を下げて訊いてくる目の前の男の様子に、口付けをさも自然に受け入れていた自分に気づいて顔が上気する。あの勢いのまま全てやってくれたら良かったのに、変なところで優しいのはやめてほしいと心の底から思う。
……別に。わるくない。
素直じゃない言葉が口から出たが、きんときは心の底から安堵したような表情をした。
再び顔が近づいてきたかと思うと頬にそっと手を添えられて、それだけで先程よりも二人を纏う雰囲気の糖度が上がる。どんな口付けが落とされるかを察してスマイルはそっと目を閉じた。
先程と同じようにふにふにと柔らかい肌を押し付けられる。機嫌を伺うように唇を舌でつんと突かれてうすく口を開けると、咥内に厚く湿った舌が差し込まれた。ぞろりと歯列をなぞられてくぐもった息が漏れる。
「んん゛……、ッん!っふ…う゛…♡」
上顎を舌先で撫でられるとじわりとした熱が体内を駆け巡る。舌同士をぬるぬると擦り合わせるとどうしようもなく気持ちがよくて多幸感で視界が滲んだ。息の仕方がわからなくて、脳に回る酸素が足りなくなって頭がふわふわと浮つく。息が苦しくなってジャージの袖をぎゅっと掴むときんときは捕らえていた舌を解放し、銀糸が繋がった唇から浅い呼吸を繰り返す。
「っはぁ゛……は♡、っは……」
スマイルが俯いたままで息を整えていると後頭部に手が差し込まれた。明確に意思を持った動きでゆっくりと撫で上げられて、喉から飛び出そうになる変な声を我慢しても小さく鼻にかかった声が漏れてしまって恥ずかしい。引かれていないかと心配になって薄く目を開けるとじっとりと欲を孕んだ青色と目が合う。凡そスマイルが心配していたようなことにはならなさそうだった。
後ろ髪を梳く手が離れていくタイミングで指先が微かに耳たぶに触れて肩がびくりと揺れた。ふ、と吐息だけで笑うきんときに顔を上げると再び目が合う。
柔らかく笑いかけるきんときを見てスマイルは心臓がぎゅうっと締め付けられるような感覚に陥る。
何かが溢れ出しそうになって開いた口から零れた声は少しかすれていた。
「…ぁ、きん、とき」
「ん?」
「……すき…」
尚も柔和な表情を浮かべるきんときにまっすぐな言葉が自然と口から出る。要らないプライドが邪魔してしまいそうな行動だったのに、今は不思議と恥ずかしさはなかった。
きんときは目を見開いたかと思えば先程よりもとろけた笑みを向ける。
「…っは、かわいい……」
俺も好きだよ、スマイル。
愛しくてたまらないという顔でこちらを見つめながら囁かれる愛の言葉はほかの何よりも甘やかで、スマイルの脳を痺れさせた。
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