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「ルディ、エリス。ご飯口に合うかな?」


「めちゃくちゃ美味しいわ!流石シルフィね!」


「ホントだ。めちゃくちゃ美味いな」


「口に合って良かったぁ。これからも頑張るね!」


笑顔で会話を交わす三人。

俺とエリスとシルフィ。

三人で食卓を囲む。


メイド。

グレイラット家を幸せにしてくれる女の子。


『シルフィエット』彼女はグレイラット家のメイドになった。



─────────────────────────



「シルフィ!私に魔術を教えなさい!」


「うん、分かった。ちょっと待ってて」


エリスとシルフィが話す。俺は、その姿を見つめていた。

二人とも笑っていて、すごく仲が良さそうだ。


そんな光景。

見ていると、なんだかこっちまで頬が緩んでしまうな。


シルフィは住み込みでメイドをすることになった。

彼女は最初かなり萎縮していた。

エルスに敬語を使うと言ったり、寝る時は宿を借りると言ったり。


しかし、俺の奥さんであるエリスが全て却下したのだ。


「シルフィなら別に一緒で良いわよ」


「え!?いや、それは……」


「良いから!一緒に住みなさい!」


「うん、ありがとう」


正直、エリスが何を考えているのか分からない。

シルフィをメイドとして雇いたいと言った時も反対することも無く、俺を嫌いになる素振りも無かった。


女を連れ込むな!と怒って当然だと思うのだが。

まぁ、エリスは貴族だし、使用人には慣れっこなのだろう。


そんなこんなで俺たちは三人で生活している。


シルフィの作ったご飯を食べて、エリスと剣の修行をする。

シルフィに乱魔を教えて、俺は治癒魔術を教えてもらう。


そんな生活。

なんか、良いなぁ。


俺の好きなシルフィが俺の好きなエリスに認められる。

そんな生活が最高だ。


幸せな日々、三人の日々が進んでいく。

シルフィにありがとうと感謝を伝えて、エリスとえっちして。


俺の最高な日々が音を立てて進んでいく。


そんな日々の中、ある人物が家に来た。


俺がお世話になった、漢として最高にカッコいい恩人。


そう、ルイジェルド・スペルディアだ。



─────────────────────────



ガン!ガン!ガン!


甲高い金属音が鳴る。

スペルド族と人族。ルイジェルドとエリスが剣で撃ち合いをしていた。


「エリス、腕を上げたな」


「ルイジェルドは相変わらず強いわね」


激しい撃ち合いによる火花。甲高い金属音が終わりを迎える。

勝負あり、勝者はルイジェルド。

エリスはその場に座り込み、彼が見下ろす。そんな光景が俺の視界に広がっている。


エリスもとんでもなく強いと思うのだが。

やっぱりルイジェルドは強いな。


ルイジェルドは俺の妹を護衛してくれたのだそうだ。

ノルンとアイシャ、大切な俺の妹。


彼はそんな妹を保護してくれた。

本当に感謝してもしきれない。


「うわぁ、二人ともすっごく強いね」


俺の隣で戦いを見ていたシルフィ。

彼女が両の手を合わせながら感嘆の声を上げる。


「いや、まだまだよ。これじゃ龍神には届かない」


この言葉を放ち、俺を見つめるエリス。


確かにそうだ。

俺たちはまだまだ足りない。


流石はエリスだ。見つめるだけで俺に喝を入れてくれる。

よし、決意を固めて、ここから更に頑張らなきゃな。


呼吸を整えながら剣を握るエリスとルイジェルド。

俺は、そんな二人を見て口を開く。


「エリス?そろそろ終わりにしましょう。ルイジェルドさんも疲れてると思いますので」


「そうだな、少し休憩しよう」


「悔しいけど、ルーデウスが言うならそうするわ」


「そういうことなら、ボクお風呂沸かしてくるね!」


シルフィがこの言葉を放ち、お風呂を沸かしにいく。

その姿を見送った後、俺はエリスの元に近付き、微笑みながら手を繋いだ。


ぎゅっ


「ルーデウス。今、ルイジェルドが見てるから」


「ふふん!疲れたエリスが美人すぎるのが悪いんです!」


「何よ、いきなり。ルイジェルドに聞こえたらどうするのよ」


「……大丈夫だ。俺は気にせん」


俺たちの後ろにいたルイジェルドが真顔で言葉を放つ。

この言動に、エリスは赤くなって。

繋いでいた手が振り払われてしまった。


「ルイジェルド!勘違いしないでよ!ルーデウスが勝手に繋いだだけなんだから!」


「ふっ、そうか」


俺は、この会話に思わずニヤニヤしてしまった。

俺を見て、目を離して、また俺を見て。

そんなエリスの動きがとても可愛い。


嫌いになったんですか?って聞いたら、違うわよ!って言ってくれるんだろうなぁ。

そんな気がする。


俺たちは色々なことを乗り越えてきた。

別れる危機も、学園も、魔王も。全て乗り越えてきた。


長い日々、エリスとの日々のおかげで俺にも自信が付いた。

それは、彼女からの『愛情』


エリスは俺を愛してくれている。

そんな自信が芽生え始めた日々。


あぁ、なんて幸せなんだろう。

浮かれてるわけじゃない。油断してるわけじゃない。

でも、そんな日々に俺は…


…一つだけ、満面の笑みを浮かべてた。


─────────────────────────


エリスとの剣撃を終えた後、ルイジェルドと話す機会があった。

家に入ってもらって、座ってもらって。


じっくりと話をした。


内容は龍神 オルステッドについて。


「ルイジェルドさん。俺、龍神を超えたいんです」


「そうか」


彼は考え込む。

そして、申し訳なさそうに口を開いた。


「奴の強さの底は俺にも分からん」


「でも、ルイジェルドさんが一番オルステッドと撃ち合ってたように見えたんですが」


俺は不思議に思った。

俺が死にそうになった時。エリスが一撃で龍神に吹っ飛ばされた時。


ルイジェルドだけがオルステッドと長い間撃ち合っていた。

負けたが、少しは互角の撃ち合いをしていたように見えたのだが。


考え込む俺に、ルイジェルドが口を開く。

ルイジェルドの言葉、俺は理解することになる。龍神の恐ろしさを、最強のイカれた強さを。


「俺と撃ち合った時、奴は片手だった」


「!?」


そうだ、そうだった。

彼の短い言葉で思い出してしまった。

オルステッドはすごく強かった。表情を変えることなく淡々と撃ち合っていた。


そこまでは俺も見えていた。

しかし、それだけじゃなかったんだ。


龍神は剣も使わず手刀で。片手の手刀だけでスペルド族の攻撃を捌き切っていたのだ。

俺の想像を超える、本当に恐ろしい人物。龍神 オルステッド。

奴は何度も想定を超えてくる。


「すみません、嫌な記憶を掘り起こしてしまって」


俺は、この言葉を放った。

この言葉、俺はルイジェルドに言ったつもりだった。しかし、部屋に反響する言葉を聞いて、自分に言い聞かせている。何故だか、そんな気持ちになってしまった。


「エリスもルーデウスも、本当に強くなったな」


「俺とは戦ってませんよ?」


「立ち居振る舞いで分かる。エリスと共に研鑽したのだろう?」


「……」


俺は自信を持って返事を出来なかった。

エリスの頑張りは見てきた。

死ぬ気で努力して、魔王を斬って。

でも、俺はそんなに頑張っていない。自信が無い。


俺は下を向く。そんな時、ルイジェルドが微笑んでくれた。


「俺には分かる、お前は強い。能力、精神力。お前なら必ずエリスを守れる」


「ルイジェルドさん……」


瞬間、俺は思う。

本当に、この人は優しいな。

大きすぎず、小さすぎず。そんな声のトーンで俺に言葉を掛けてくれる。


きっと、ここからだ。

ここから強くなるんだ。


昔、ルイジェルドに言われた言葉。

お前が手を赤く染めるのはエリスを守る時だ。

そんな言葉。


今でも思い出す。

ルイジェルドとの旅、密輸船の時のこと。


俺は必ず龍神を殺す。

エリスを支えて、守る。


この言葉を頭に反響させながら、俺は幸せな未来に向けて、ゆっくりと誓いを立てた。



─────────────────────────



何も変わらない日々だった。

ノルンとアイシャが来て、仲良くなって。

寧ろ、幸せが増えていく日々だった。


俺を皆が囲んでくれる。

お嫁さんとメイドさん、そして可愛い妹二人。

大切な人が俺の周りに居てくれる。


俺は、それが幸せだった。

俺は大きな幸せを掴んだんだ。

そう確信していた。


でも、その幸せは薄氷のように儚い。


『ゼニス、救出困難』


本当に儚い。だって、たった一枚の手紙。

こんな少ない文字で俺の幸せが終わるんだから。



─────────────────────────



真っ白な空間、見覚えのある場所。

俺の姿は前世の醜い姿。


目の前にはアイツが立っていた。


「やぁ!久しぶり!」


ヒトガミか、久しぶりだな。


「あ、あれ?随分と冷静だね。僕としては嘘吐き!って言われて殴られると思ったんだけど」


殴らねぇよ。というか殴ろうと思えば殴れんのか?


「え?無理だよ?僕のこと殴れるわけないじゃーん」


まぁ、無理だよな。

お前、随分とテンション高いな。

どうしたんだよ?


「まぁまぁ。僕のことはどうでもいいんだよ。まずは君の話さ。どうして冷静なんだい?」


神なのに分からないんだな。

まぁ、いいか。簡単な話だ。俺だけ明らかに頑張ってないだろ?

エリスは死ぬ気で剣を振ってて、シルフィは俺のために愛情を捨ててメイドをしてくれてる。


頑張っていないのは俺だけだ。


「ふぅーん。別に、そんなこともないと思うけどね」


いや、頑張っていない。

だから、俺にも試練が来る。そう思ってた。

正直、腹は括ってた。


「なんか、覚悟ガンギマリみたいだね。それで?ベガリット大陸には行くのかい?」


行く、絶対に行ってやる。

パウロたちを助けて、全員でこの生活を分かち合うんだ。


「後悔することになってもかい?」


それでもだ。俺は試練を乗り越えて龍神を超える。


「龍神を超える、かぁ。ふふっ、ベガリット大陸に行ったらさ。君は龍神を超えられないよ?」


は???


「いきなり変な顔するね。良いよ!今回は、その話をしようか。龍神 オルステッドの話をしてあげる」


俺は黙ってヒトガミの言葉に耳を傾ける。

そんな姿。瞬間、俺の瞳の中で奴の頬が大きく持ち上がった。



─────────────────────────



教えろ。なんでベガリット大陸に行くと龍神を超えられないんだ?


「まぁ、待ってくれよ。まずさ、君の強みを話そうよ」


俺の強み。まぁ、ストーンキャノンには自信がある。

後は、特に無いな。


「ハハハ!少ないねぇ。でも、それでいいんだよ。奴を殺すには生半可な技術を多く持ってても勝てない。醜い前世を活用したストーンキャノン。その強みがあれば十分さ」


お前から唐突に褒められると怖いな。

まぁ、褒め言葉は素直に受け取ってやる。

でも、奴が、最強の龍神が俺の技を使えないって保証があるのか?

俺の改良したストーンキャノンを使わないっていう保証が。


「あぁ、そこは安心していいよ。奴は既存の技は完璧に使うけど、新しい技は開拓出来ない。特に魔術は絶対に無理だ」


なんでだよ。


「簡単な話だよ。魔術の開拓にはトライ&エラーが必要だ。君のストーンキャノンで言うと、良いと思う形を作って、撃ってみて。威力を確認して、更に威力の高い形を見つけるために作って、撃ってみる。これの繰り返し。この作業には膨大な時間と魔力が必要だ」


それがなんだよ。最強なら、時間はともかく魔力はあるだろ。


「あるけど使えないんだよ。アイツは魔力を使えない。だから、同様の理由で君たちが開拓した魔術を剣に纏わせることも出来ない」


にわかには信じられないが。

まぁ、お前と龍神は仲が悪いらしいし。嘘を吐く必要も無いだろうしな。俺は、お前の言ってることを信じるよ。


「お!物分かりが良いじゃないか〜そして、ここからが本番だ。その二つの技は何処で手に入れたんだい?」


何処でって、お前に言われて魔法大学に来て…転生

そうか、大学。どちらの技も、この大学で手に入れた物なのか。


「正解!バーディ・ガーディを斬ったエリス。ストーンキャノンの威力を変えた君。君たちは結局、魔法大学が一番強くなれるのさ。それは君の行動と経験が証明してる」


だから、ベガリット大陸には行くなってことか?


「それだけじゃないよ?ベガリット大陸に行けば、君は必ず後悔する。覚悟があることは良いことさ。でも、強くもなれないし後悔もする。これを知ってて行くのは覚悟じゃないだろ?」


ただの馬鹿。無駄って言いたいのか。


「そういうこと!うぅーん。全部は言えないんだけど、もう少し教えてあげようかな?」


なんだ、まだあるのか?


「うん、あるよ。君の大好きなお嫁さんの話だよ」


エリス!?なんだ!エリスに何か起こるのか!


「ちょっと!いきなり取り乱すなよ。逆だよ、逆。君さ、エリスとえっちーなことする時、避妊してるだろ?」


……なんだよ、いきなり。

そうだよ。外に出してるよ。

なんで知ってんだよ!気持ちわりぃ。


「気持ち悪いって、酷いなぁ。神なんだから生命の誕生は喜ぶ物なのさ。僕は優しいからね。まぁ、避妊してる理由は大方龍神関係かな?龍神に狙われた時に妊娠してたら戦えないと思ってる。どうだい?合ってるだろ?」


合ってるよ。なんだよ、この会話。

そうだよ。エリスとの子供は欲しい。

でも、龍神に狙われたら。そう思うと結局無理なんだよ。


「ふぅーん、やっぱりね。よし、教えてあげる」


何をだよ?


「龍神との戦いについてだよ」


は?お前!龍神については見えないって言ってただろ!


「うん、見えないよ?でも、分かることが一つだけある。聞くかい?」


ちっ、聞くよ。教えてくれ。


「よしよし、素直なのは良いことだからね。言ってあげよう。神の名に置いて約束する。今、エリス・グレイラットを妊娠させれば、必ず龍神は襲ってこない!」


は?いや、信じられるわけ。


「信じなくても良いけどさ、本当のことだよ?しかも、彼女も子供欲しいんじゃない?まぁ、起きたら聞いてみなよ」


いきなり突き放したな。

もう、話は終わりなのか?


「そうだねぇ〜。まぁ、後は君が決めることだからね。そしたら、最後に助言があるけど聞くかい?」


教えてくれ。


「オッケー、言ってあげよう!」


……


「ラノア魔法大学に残り、エリス・グレイラットを妊娠させなさい!そして、シルフィエットと結婚するのです!さすれば、あなたは強さと幸せ。どちらも手に入れることが出来るでしょう!


は!?ちょっと待て!なんでいきなりシルフィが出てくるんだよ!

シルフィの名前なんて一言も……おい!なんで消えるんだ!

頼む!何か言ってくれ!


………


……



俺の言葉が空を斬る。

ヒトガミは、白い空間に姿を消していった。



─────────────────────────



「……ス」


「……」


「……デウス」


「……」


「ルーデウス!どうしたの!?」


「あ、エリス」


俺は彼女の言葉に目を覚ました。

仰向けに寝る俺。

そんな俺をエリスが見下ろしている。


彼女が不安そうな顔で俺を見つめてる。心配させちゃったな、申し訳ない。


「ルーデウス、すごく苦しそうだったけど……辛いの?大丈夫?」


「はい、大丈夫。何でもないです」


言葉を放つと同時、俺は考える。

エリスのこと、パウロのこと。

ベガリット大陸の後悔、大切な人との日々。


あぁ、ダメだ。考えれば考えるほどおかしくなる。

とりあえず落ち着こう。よし、そのためにも彼女に『この言葉』を聞こう。


「エリス?赤ちゃんって欲しいですか?」


「なっ!///いきなり、そんなこと。ほ、欲しいわよ!ルーデウスの子供!」


心配そうに見つめていた顔。それが途端に赤くなる。

茹蛸のように赤い顔。彼女は俺から視線を外してしまう。


あぁ、可愛いな。


俺はヒトガミのおかげで強くなれた。

なら、奴の言うこと、それを信じても良いんじゃないだろうか。


「僕はエリスとの子供。六人は欲しいです」


「ろ、六!?お、多すぎるわよ。せめて四人ぐらいにして、そこから考えて、六人にするのか、もっと多くするのか決めるのが良いと思うわ」


なんか、俺より計画的なんだが。

俺は驚きと同時に想像する。エリスとのたくさんの子供を。

エリスに似た女の子、エリスみたいに剣に長けた男の子。


最高だ。いーっぱいの子供に囲われて、幸せになって。

エリスと子供を抱き合うんだ。

笑って、笑い合うんだ。


大丈夫だ、パウロは強い。

俺なんか居なくたって、きっと窮地を乗り越えるだろう。

大丈夫、大丈夫。


「エリス?大好きです」


「わ、私も殴っちゃったりするけど、ルーデウスが好きよ」


エリスの告白。

俺は微笑みながら上体を起こして、ベッドに座る彼女と抱き合った。

彼女の寝巻き姿が可愛くて、俺は思わずニヤけてしまう。


ニヤけを抑えるために深呼吸。

赤い髪の中で、深呼吸。


夜になったら、言おう。


子供を作ろうって。たくさんえっちして、中に出したいですって。

妊活しようって。


ここに、家に残るって。


俺の恩人のヒトガミ。

奴を信じるのは、俺にとって容易いことだった。



─────────────────────────



きっと、これで良いんだ。

違う、これが良いんだ。


俺は自分に言い聞かせる。

先にエリスがトレーニングに行って、俺はリビングに行く。


一人で行く理由は会いたい人が居たから。


「シルフィ、今日も家のことお疲れ様」


「疲れてなんてないよ。最近はアイシャちゃんも手伝ってくれるから。ルディこそ毎日お疲れ様」


目の前にはエプロン姿のシルフィ。

俺は彼女の前に立つ。

可愛いシルフィ。俺が求めていたのは、そんな彼女だった。



─────────────────────────



話をしたい。そう言うと、シルフィがお茶を淹れてくれた。

容器から湯気が立ち始める。それが淹れ終わる合図となって、彼女が椅子に腰掛ける。


腰掛けて伸びをするシルフィ。

よし、ここだ。俺は意を決して口を開いた。


「シルフィ?俺さ、行かないことにしたよ」


「ベガリット大陸のこと?そっか。ルディがそう言うならボクも賛同するよ」


シルフィの言葉を聞く俺。

そんな俺は、彼女と話をした。

エリスを妊娠させたいこと。

ベガリット大陸に行くことが怖いこと。


ヒトガミのことは話せないから、冒険が怖いってことにして話した。


「そうなんだ。そんな大切なことボクに言ってくれてありがとう。嬉しいなぁ」


「あぁ、シルフィには言いたいと思ってて。後、言わなきゃいけないこともあるんだ」


「ボクに言わなきゃいけないこと?」


俺の考え、全て話した。そう、一つを除いて。


シルフィとの結婚のこと。彼女を幸せにしたいということ。

この言葉が言えない。俺の口が開かない。


深呼吸をする。でも、勇気が出なくて。

沈黙が続く。


そんな中、目の前の彼女が口を開いた。


「ルディは、すっごく強いよね。毎日一緒に居て、本当に思う」


「俺は強くないよ」


「ううん、すっごく強いよ。でも、そんなルディでも無理なことがあるんだ」


「無理なこと?」


なんだろう、無理なこと。

シルフィを幸せにすることとか?

シルフィには迷惑掛けまくってるし、そう言われたら何も言えないな。

俺の疑問。答え合わせをするように、彼女の口が開く。


「ルディが強くてもその場に居なかったら助けられない。ボクは転移事件で知らない間に家族を亡くした。いつも思うんだ。もしも、ボクが家族の元に居られたら、ボクが大切な人を助けられたのかなって」


「シルフィ……」


俺は静かに聞いていた。彼女の言葉が静かな部屋に響き渡る。

シルフィと結婚して、幸せにする。

俺は何を思い上がっていたんだ。

親を助けることを放棄した俺なんかに、彼女が好きになってくれるわけないだろ。


「でも、裏を返せばルディは近くの人は絶対に幸せにするんだ。エリスも、アイシャちゃんも、ノルンちゃんも、みーんな幸せに出来る。もちろん、ボクもだよ?今、すっごく幸せだから…」


彼女は、ゆっくりと話しながら笑った。

話を聞いて、俺は思った。


知らぬ間に逃げてたんだ。

オルステッドと戦ったら、殺されるかもしれない。

そうしたら、エリスとの子供も作れなくて。


エリスを悲しませる。


だから、龍神と戦う前にエリスと子供を作ろうとしたんだ。

でも、違うだろ。子供を作るのはオルステッドを殺してから。

安心して子作りして、エリスと死ぬまで笑い合う。


この光景は龍神を殺してからでいい。


二周目の人生、全力で生きるんだろ?

妥協するな。オルステッドを殺してからが最適解なら、それに対して突き進め。


ごめん、ヒトガミ。俺は行くよ。


「シルフィ、ありがとう。やっぱり、これからのこと変えてもいいかな?」


「うん、もちろん。ボクもお花を取りに行く願い事を変えて、ルディには聞いてもらったから」


目指すは迷宮都市ラパン、

一人なら後悔するかもしれない。強くなれないかもしれない。


でも、俺は一人じゃない。

迷宮都市に行くのは俺だけじゃない。


「エリスを連れて行ってくる」


「うん、分かった。ルディ、気を付けてね?」


シルフィは離れたくないとは一言も言わなかった。

不安でも、心配でも、微笑みながら俺を出迎えてくれた。


やっぱり、シルフィが側に居てくれると嬉しいな。


シルフィに家のことを頼んで、エリスの元へ向かう。

庭で剣を振るうエリス。

俺は彼女に向かって大きく口を開く。


「エリス!俺と一緒にベガリット大陸に行ってくれますか?」


彼女がこちらを向いた。

返答は、彼女がニヤついていたと言えば分かるだろう。


「ルーデウスを守るのは私よ!絶対に離れないんだから!」


気高くて美しい声。

俺は確信している。強くなれたのは大学に来たからじゃない。魔術を研鑽したからじゃない。


エリスと、愛しの人と生活したから。


そう思ってる。

だから、大丈夫。彼女と居れば俺は何処であろうと強くなれる。


「行きましょう、父さんを助けに!」


俺だけじゃない。

俺とエリスの二人で。


パウロを、家族を助けにいく。


そんな決意。

そこにあるのは、運命という分かれ道。


正解は俺にも分からない。

だけど確かに。この時、運命は変化していた。


変化する運命、愛情と信頼。

試される場所は、最難関の迷宮。







もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら

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