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「いつも二人ともイチャイチャしてばかりだから忘れてましたわ」
エリナリーゼが呟く。
目の前の、二人の人物に向かって。
「ルーデウス?怪我は無い?」
「全然平気です!エリスこそ怪我したら言ってくださいね?すぐに治癒魔術を掛けますから」
覚悟を決めた仲の良い夫婦。
そんな二人の前に転がる、大量のモンスターの死骸。
エリスとルーデウス。
愛情も信頼もある夫婦。
ただ一言『強い』
この言葉が、二人の背中を映していた。
─────────────────────────
俺たちはラノア王国を旅立った。
人員は俺とエリスとエリナリーゼの三人だ。
行く時はシルフィが震えてて。
それをエリスが慰めていた。
「シルフィ!任せなさい!ルーデウスは私が守るから!」
「ボクなんてメイドなのに、元気付けてくれてありがとう」
元気な声で、自信満々で。
やっぱりエリスはすごいな。
なんというか人を安心させるパワーがある。
よし、俺もエリスを見習ってシルフィを元気付けてみよう。
「シルフィ?大丈夫。元気に戻ってくるから」
「うん、ルディ。気をつけてね」
俺は不安そうな彼女を見つめて笑った。
なるべく大きく、シルフィを安心させられるように。
正直、不安がないと言えば嘘になる。
長旅、知らない土地。
そして何よりも大きな理由はギレーヌだ。
剣王、最強の陣営。彼女は今回旅に来られない。
かなり前の話になるのだが、俺とエリスは学園に行く前ギレーヌに手紙を出していた。
『冒険を一時辞めて学園に行く』
こんな内容の手紙。
ギレーヌとは一度離れて依頼を受けていたから連絡を取る必要があった。このような手紙は必要だったのだ。
そんな俺の手紙。最近、彼女から返事が来た。
『私は剣の聖地に行く。剣神 ガル・ファリオン、私の師匠が所有している鳳雅龍剣、闘気を無視出来る剣だ。龍神と戦うなら必ず役に立つはず。なんとか借りられないか聞いてくる。ルーデウス、それまでお嬢様をよろしく頼む』
こんな内容の返し。
要するにしばらく帰ってこられない、そういうことだ。
ギレーヌも龍神との戦いに備えてくれている。
文句は言えない、寧ろ感謝しなければ。
そんな理由があり、三人で始まった冒険。
家族を、パウロを助ける旅。
始まる戦い。
俺はエリスと手を繋いで、ゆっくりと歩みを開始した。
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ナナホシに教わった転移魔法陣を使って、最短最速でラパンに向かう。
不安視していた長旅、モンスター。正直に言うと大したことはなかった。
動揺したことと言えば転移の遺跡に龍神の服があったことだな。
ナナホシから龍神も転移魔法陣を使っていることは聞いていたが。
魔法陣に乗って転移して、俺は気まぐれにクローゼットを開けた。すると、見覚えのある物があったのだ。
最強が身に纏っている白い服が俺の目に飛び込んで来たんだ。
「龍神もここを使うなら、遺跡に待ち伏せして殺せるかもな」
「真面目な顔でそんな物騒なことを言うもんじゃありませんわよ?」
「あ、すみません」
エリナリーゼさんに怒られてしまった。
まぁ、今はパウロのことを考えないとダメだしな。
ここからは砂漠を歩いた。
砂漠に来るまではエリスにベッタリ引っ付いていたのだが、流石に砂漠だと暑くて出来なかった。
もちろん!エリスは大好きだけどね!?
「ルーデウス、暑いわね」
「そうですね。水分はしっかり摂ってくださいね?」
「分かったわ。ルーデウスも無理しちゃ駄目よ」
強い日差し、乾燥した地面。
そこに三つの足跡を作っていく。
助けるために歩く。
迷宮都市ラパンまであと少し。
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バン!!!
グリフォン。大きな鷹の見た目をしたモンスターがストーンキャノンに貫かれる。
当たった瞬間、肉は粉々になり血液だけが辺りに飛び散る。
油断はしない。だが、俺たちなら怖くない相手だ。
「ルーデウスは、やっぱりすごいわね!」
「いやいや、エリスの方がすごいですよ」
この言葉はお世辞でもなんでもない。
俺がグリフォン五体を肉塊にした時、彼女は六体倒していた。
やっぱりエリスは強い。
学園に来てから本当に。
俺たちの後ろでエリナリーゼが唖然としている。
悪いね。俺たちならこれくらい造作もないのさ。
俺は得意気になりながら道を進んでいく。
モンスターなんて俺たちの敵じゃない。
この時は、そう思っていた。
でも違ったんだ。俺は間違えてたんだ。
答え合わせは夜。俺は、あのモンスターの攻撃を喰らうことになる。
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土魔術でドーム型の部屋を作る。
そこに三人で入って一夜を共にする。
二部屋作って男女別々にしようとしたのだが。
エリスに反対されてしまった。
「ルーデウス。べ、別に一緒でいいでしょ」
エリスの口から放たれる小さい言葉。
そんな言葉と同時。彼女は赤い髪を揺らして俺のお腹に抱きついてくれる。
あ、めっちゃ可愛い。
いつも添い寝してて、ウザいと思われてる可能性を危惧していたがどうやら真逆だったようだ。
「そうですね。モンスターに襲われる可能性もありますし、一緒に寝ましょうか」
「モンスター。そうね!その可能性があるものね!」
添い寝する理由を見つけたエリス。
彼女は、そんな大義名分を掲げて俺を部屋に引っ張っていく。
真っ赤な顔で俺の腕を引くエリス。
その姿を見て何度でも思う。可愛いなぁという感情。
別に一緒に寝るのに理由とか大義名分なんて要らないんだけどな。
まぁ、エリスと添い寝出来ればいいか。
モンスターに襲われる可能性がある。
そんな理由で添い寝したので、エリナリーゼも俺たちと同じ部屋で寝ることになった。
エリスと一緒の布団に入って抱き合う。
彼女が俺の胸に顔を埋めて、お腹に腕を回してくる。
俺はそんな彼女を包み込むように抱いて眠る。
エリナリーゼが居るからえっちなことは出来ないが。
こんな夜も幸せだな。
エリスの匂いに包まれて、うとうとする。
安心するエリスの匂い。そんな匂いに何かが混ざる。
スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。
「なんだ、これ?」
眠たかった目が一瞬にして覚めた。
鼻を擽る不思議な匂い。脳に直接来るような甘ったるい匂い。
なんか、すげぇ苦しい。
視線がエリスに釘付けになる。
「ルーデウス、すきぃ」
エリスの可愛い寝言。
ムニャムニャと言葉を放つ唇。
可愛くて、可愛くて、美人で。
お腹や太ももは服の隙間から少しはみ出してる。
犯したい、犯したい。
「エリス、エリス」
彼女は疲れて眠っているのに。
旅も、まだ続くのに。
あぁ、ダメだ。なんか、もうどうでも良くなってきた。
「エリス、犯す。エリスのこと、犯す」
「ルーデウス、ルーデウスっ///」
ドームに静かに響く言葉。
俺は興奮に身を任せて、寝ているエリスの唇に噛み付いた。
深く、長く。可愛い彼女と絡み合う。
交わる身体と心。
それは、俺が意識を失うまで解かれることはなかった。
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「喉、乾いたな」
朝が来た。
部屋に差し込む強い日差しで目を覚ます。
俺は目を擦りながら身体を起こした。
なんだか身体が怠いな。
ガチン!
「いてっ」
座る俺の頭に衝撃が走る。
痛い。なんだ、殴られたのか?
眠い目を擦って後ろを振り向く。
そこに居たのは…
「流石にヤりすぎですわ。解毒魔術あるんだから使いなさいな」
「あ、エリナリーゼさん。おはようございます」
なんだ、エリスじゃないのか。
朝一のエリスが見たかったのに。
ん?解毒?俺、何か技でも喰らってたのか?
「やっぱり気付いてなかったんですわね。あなたサキュバスにやられましたのよ?もう本当に昨夜は大変でしたわ」
「なんか、すみません」
ため息を溢すエリナリーゼ。
俺は、そんな彼女から事情を聞いた。
結論から言うと、俺はエリスに無理やりシてしまったらしい。
エリスの赤ちゃん。とか、孕んでも絶対可愛いとか。
そんな言葉を呟いて、エリスの両手を土魔術で拘束して。
まるで暴漢のように下卑た笑みをして。
あのエリスが少し怯えるほどの姿。
最初は、俺の名前や苦しいの?という心配の言葉を彼女も放っていたらしいが。
あまりの勢いに、あっ!とか、うっ!と言いながら気絶してしまったらしい。
犯されながらぐったりと倒れた。
これが昨夜の出来事。
本当にごめんなさい。
全力で謝罪したい。
しかし、一つだけ不満がある。
「いや、俺が悪いんですよ、悪いんですけど……エリナリーゼさんも止めてくれれば良かったのに」
「止めようとしましたわ。そうしたら、エリス、俺の物。犯すの、邪魔するなって言いながら私にストーンキャノンぶっ放されたんですもの」
「それは、俺が悪いですね」
この言葉と同時。俺は思わず苦笑いしてしまった。
もう言い訳出来ないな。全部俺が悪い。
反省した俺は再度エリナリーゼに謝罪をして辺りを見渡す。
右や左を見渡す俺。瞬間、俺は気付いた。
居ないのだ、愛しのハニーが。
愛しの人、エリス。俺が謝りたい相手、エリス。
そんな彼女が何処にも居ないのだ。
疑問。俺は、それを口にする。
「あれ?エリスって何処行ったんですか?」
「起きたら、またあなたがエリスを襲う可能性があったから私だけで起こしに来たんですの。彼女、大分疲弊していたから」
朝からエリスの顔が見られないのは俺のせいだったらしい。
サキュバスの術、本当に恐るべしだな。
俺はエリスに謝るため外に出る。
右、左と辺りを確認して。
見つけた。視線の先に居たのは赤い髪の少女。
瞬間、俺は大きな声を挙げる。
「エリス!昨日は、すみませんでした」
「ん?別に良いわよ。それよりルーデウス?もう身体は大丈夫なの?」
「え?心配してくれるんですか?」
彼女の心配に俺は驚いた。
無理やり犯した俺。彼女は、そんな俺を心配してくれる。
俺が乱暴にシた証拠。それは彼女の姿が物語っていた。
所々破かれた服、顔や腕に付いた噛み跡。
いつもの気高さは息を潜めていて、疲れと気怠さが前に出ている。
それでも彼女は俺を心配してくれる。
やばい、涙が出そうだ。
「俺は大丈夫です」
「そうなのね。じゃあ、私も大丈夫よ」
彼女は小さく笑った。
俺はそんな彼女に近付き、噛み跡を治癒魔術で治す。
まさか彼女の最初の傷が俺の噛み跡になるとは。
驚きと申し訳なさでいっぱいだ。
申し訳なさと同時、俺は決心する。
この傷を最初で最後の傷にしよう。
彼女に、もう傷は負わせない。
今の俺たちなら出来る。
そう確信している。
砂漠の日差しと迷宮都市。
戦いは、小さな傷跡と共に始まりを迎えようとしていた。