テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
東は、焼けた。西は、膨れ上がった。
北関東――そこは、誰も見ない“空白”だった。
だが、空白とは、塗りつぶされるためにある。
弱き者が、手を取り合ったとき――都は、それを「芽」と呼ぶ。
瓦礫に囲まれた社。かつて、平将門を祀ったという因縁の地。
その本殿に、6人の影が集まっている。
「……奴らは、三重・奈良・和歌山を“文化”で取り込んだ。次に来るのは、“未統一”の我々だ。」
「すでに京都の間者が、水戸や川越に潜入している。動きは、早い。」
「オレらを田舎もんだと思ってんだろうよ、あの着物野郎……。だがナメんな。雷は地を這っても、天に轟くぜ。」
■埼玉県
「……“上”も“下”もねぇよ。東京が燃えた今、誰かがこの地を守らなきゃならねぇんだろ?」
「帝国など笑止千万。都の美しさに酔いしれる間に、港はもう腐りかけてる。正義は変える。」
「……また、空が濁り始めたさぁ……。この風が、誰の命を攫うか、まだ見えん。」
6つの手が、古びた木製の地図の中央に重なる。
それは、国家ではない。
制度でもない。
「滅びた者たちの、約束」だ。
香の煙の中、京都は文机の上に一枚の巻物を広げている。
それは、“監視対象一覧”。
その中に、新たな筆が加わる。
京都:「群馬、栃木、茨城、埼玉、神奈川……そして、南の島国 沖縄。」
「名もなき県の寄り合い、実に滑稽。だが――滑稽ほど、炎上しやすいもの。」
舞うように立ち上がり、言葉を吐く。
「北関同盟――その芽、今のうちに摘み取らねばならぬ。」
陰で筆記する滋賀。
命令通り“諜報網”を動かしながらも、心中では毒を吐く。
滋賀(表):「北関……ねぇ〜……まぁ都はんの目にかかれば虫けらですわ〜♪」
滋賀(内心):(でも、集まったな……本気で火つけかねん連中が…オレ? 知らん顔して京都も北関も天秤にかけたるわ)
力なき者たちが、手を取り合った。
それは、恐れからではない。
奪われたものを、取り返すため。
京都帝国は、それを“芽”と呼んだ。
だが、芽はやがて根を張り、森となる――
風は、北から吹きはじめる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!