「お前、その怪我…」
連絡が入って妻の元へ駆けつけるとついこの間まではなかった包帯が腕に巻かれていた。
『えと、ちょっと階段で転んじゃってさ。しばらくは安静にだって』
彼女は今妊娠していてそのお腹は膨らんでいる。一応中の子はなんともなかったらしい。
にこにこ笑う彼女だったけど五条はやっぱり心配で過保護になってしまう。
彼女がご飯を作ろうとしてると
「僕がやるから座っといて」
と作ってくれたり、彼女がつまずくと
「ちょっと、危ないだろ」
とか気遣ってくれる。
五条が自分を心配してくれて過保護になってるのは分かるんだけど、ある程度のことはちゃんと自分でしたい彼女。
『あの、それは私が…』
「いや、君は休んでて」
と断られるのがちょっと嫌だったりする。だから
『ねぇ、私ちゃんと動けるんだよ。大丈夫だよ』
と物申すと
「妊婦なんだからじっとしてて』
と言われてしまう。それに痺れを切らした彼女が
『もう、そこまでしてもらわなくていいの!うざい!』
少しムキになって言い返してしまう。
「….分かった。好きにすればいいよ」
冷たく返され五条の厚意を無下にしてしまったことに気づく。
その後は話しかけようとしても避けられちゃうし同じ部屋にいても無口を貫いてる五条。
彼女もだんだん寂しくなってきてちゃんと謝ろうと決意。部屋でソファーに座っている五条に後ろから抱きついて話しかける。
『五条先生』
「….」
『五条悟せんせーい』
「….」
『五条さーん』
「….」
絶対聞こえてるのに全然返事が返ってこない。
『悟』
「…なに」
やっと返ってきた返事はムスッと拗ねている子供みたいだ。
『あの、さっきはごめんなさい。本当はうざいとか思ってないから…』
言いかけると、不意に五条が後ろを向いて顔を近づけてくる。
『えっ…』
彼女に優しくキスをした後サングラスを外してその目を見つめる。
「お前が怪我したって連絡きた時どれだけ心配したかわかってるの?本当に無事で良かった…」
そう言って彼女の首筋に顔を押し付ける五条の頭を優しく撫でる。
『ちょっとやり過ぎだったけどね、世話焼いてくれるの嬉しかった。心配かけてごめんね』
さらさらの白い髪に顔を埋める。
すると長い腕が伸びてきてソファーの後ろにいたはずがいつの間にか五条の膝に乗せられ腕の中に。
向かい合う形なので美しい目と目が合い、逸らすと顎を掬われる。
キスされる…!と思って目をぎゅっと瞑ると
「ぷっ…」
可笑しそうな笑い声が聞こえてくる。
目を開けると、
「キスされると思った?」
悪戯っ子のように笑う五条の顔。途端に自分が早とちりしたことに気づき赤面する。
『もう!からかわないで!』
なんて真っ赤になりながら抗議する彼女が可愛くて前髪を避けて彼女の額にキスをする。
「はぁ〜…僕の嫁可愛すぎだろ」
思わず漏れた五条の心の声に彼女はまた恥ずかしくなって五条の胸に額を押し付け顔を隠す。
『いい加減にしてよ』
冷たい言葉で返しつつも耳まで真っ赤なので満更でもないことはお見通し。
ニヤニヤしながら
「ねぇ〜どうしたの?」
と聞くと
『なんでもないし。うるさい』
やっぱり素直じゃない返事で。
「そんなに僕のこと好き?熱いねぇ〜」
からかってみると、顔が真っ赤の涙目の彼女に
『うるさい!嫌い!離して!』
と言われる。
腕の中でジタバタともがく彼女だが、当然力は五条の方が強いのでびくともしない。
「あは、僕の嫁はパワフルだなー」
って笑ってるけど
「あ、待ってしばらくは安静なんでしょ。ほら暴れないの」
と注意される。大人しくじっとしてると
「うん、偉いね」
って甘ったるい笑顔で頭撫でて褒めてくれる。
身長差的に自然になってしまう上目遣いの状態(+涙目)で
『色々ありがと。あの、私もちゃんと好きだから…』
最後の方は俯いてしまいながらも想いを伝えると、全然返事が返ってこない。
?ってなって顔を上げると片手で自分の顔を覆ってる五条が。
『ねぇどうしたの、』
「いきなりそれはずるいだろ…」
たまにデレる嫁にノックアウトされる。
可愛すぎる自分の嫁に(マジで他の奴の前でそんな事してないだろうな…)と心配になる。
自分の嫁にはとことん甘い五条なので家事だって全部してあげたいけど、嫌がられたからそれはちゃんと分担。
嫁を溺愛しすぎている旦那と、なんだかんだ旦那が大好きな嫁の、とにかくラブラブの五条夫婦でした。