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うちの旦那さまは「ねえ〜〜〜!!なんで!!僕を!!!置いて!!!いっちゃうの!!!」寂しんぼです。
「あのー…ご、……悟さん」
「あっ、今!五条さんって言おうとしたよね!?もう僕たち結婚して5年経つよ!?」
「捏造はやめてください。付き合って5年、結婚してまだ数日です」
「敬語!!!旦那に!!」そして、やかましい。
常に声を張り上げている気がする。この人、私がいなくなったら喉潰すんじゃないかと声帯の心配をしてしまう。まぁ、他の心配より声帯を心配するくらいには愛されているという自覚はある。「いい加減、行かないと…」
「…せっかく僕が休みなのに」しゅん…と項垂れるのをみかね、身長差が40センチもある彼に手を伸ばして頭を撫でる。「行ってきま、んぐっ」
「あ〜〜〜〜行かせたくない」少し背伸びしていた私をそのまま抱き寄せた。少し抱きしめる腕を強くした後、離して青い綺麗な目が私を写した。「絶対、帰ってきてね」
「……ちゃんと家にいてよ?出ちゃだめ」
「もしかして束縛?!束縛なの!?」何もしなくてもキラキラしている青い目がさらにキラキラを放つ。「この前、私が相手してた呪霊を遠くから一瞬で祓ったの誰?」
「えー、誰だろうねぇ。気のせいじゃない?」んなワケあるか。
蒼使える人間、あなたしか知りませんけど?「とにかく出ちゃだめ!ちゃんと休んで!行ってきまーす」半ば強引に家を出て、家の前に待機してくれている補助監督さんの車に乗り込んだ。
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僕の奥さんは
「さとるーっ!あははは!!まだまだ祓い足りないぃ〜!!!でてこぉーーい!」
僕よりイカれている。
補助監督が引きずるように頑張って家まで運んできた奥さんを引き取って抱き寄せた。「今回は何級を相手にさせたの」
「2級のはず…なんですが、数が多くて…」
「あぁ、それで被っちゃったのね」
「服の返り血がすごかったので車の中で着替えさせたんですが…テンションはこの通り…」そういって目線を僕の腕の中にいる奥さんに向ける。「あはははっ!さとるー!まだー?!」
「まーだだよ」
「なーんでっ?は、や、く!」僕の首に腕を回す奥さんを押し倒してしまいたい気持ちを抑えて目をつぶって天を仰ぐ。「とりあえず、送ってくれてありがとね。あとは僕がやるから」とお礼を言って補助監督を帰らせた。僕の奥さんは呪霊の血を浴びると、お酒に酔ったような状態になってしまう。そして殺意も上がる。よく言えば仕事熱心なんだけど、祓う時の笑い声が悪魔みたいになるんだよなぁ。きっとハイの時は俺といい勝負をすることになるんじゃないかって思ってる。大概、「フラフラする〜」くらいで帰ってくるのだが、今回浴びた量は相当だったらしい。泥酔状態だ。「さとるぅ〜…祓いたいよぉ…」普段もこんくらい甘えてほしいんだけどねぇ。それに記憶無くすのもずるいからね?
僕が話すと、妄想見てるってドン引くのもやめて?「補助監督、女にしといて正解だったなー」
「さとるぅー……」
「はいはい、僕とおやすみしよーね」
たまに甘えたになるのはいいけど、こういうのは僕と一緒に任務行った時だけにしてよ。
まぁ、僕と一緒なら汚い血を浴びせるなんてまずしないけどさ。すやすやと眠る奥さんの頬にキスをした。
うちの旦那さまは「昨日はすごかったんだよ。もう僕にべったり!」妄想がひどいです。
「そんなわけない。妄想もほどほどにして」
「妄想じゃないってば」任務から帰った翌日はよく頭が痛い。昨日は祓ったのも数が多かったからだと思う。そんな時ほど不思議と帰った時のことはよく覚えていない。「なら悟さんの中の私はそんなにべったりなんですね」
「また敬語!!!!旦那に!!!」頭が痛いから大きな声を出すのをやめてほしい。まだ目が覚めただけでお互いベッドの上にいる。目を開けると隣で「おはよう」と言われるのは毎回びっくりする。というか、いつから起きてるの。「頭痛いから大きな声やめて…」
「あぁ、ごめんね。お水持ってくるよ」そう言ってベッドから出た彼を見てびっくり。Tシャツを着ておらずパンツのみ。パッと自分を見ると下着とキャミソールのみだった。事後のような容姿にまた頭を抱えた。「ん?どうしたの」持ってきてくれたペットボトルを手渡されながらじっと見つめるわたしに首を傾げた。「なんで上着てないの」
「昨日、君がつけてきた血がついちゃったから」
「……だからわたしも?」
「そうだよ。昨日は随分多かったんだって?お疲れ様」柔らかい笑みと共に大きな手で頭を撫でられる。意外とこれが好きだったりする。本人には絶対に言わないけど。「ありが「あ、もしかして事後かと思った〜?」
絶対言ってやらない!!!
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僕の奥さんは
「ねぇ〜何で怒ってるの」
「怒ってません」
怒ると敬語になる。
起きてから少し話をして、撫でられるのが好きな奥さんは猫のように頭を擦り寄せてきたのはきっと無自覚だ。言ったらきっと意識してやめてしまうだろうから言わない。まぁ、撫でてるところまではよかったけど、その後の「事後発言」からムスッとして足早にベッドから出てリビングに行ってしまった。もちろんすぐに追いかけたけど。後ろから抱きついたら服着てとTシャツを顔に投げられたけど。「からかっただけだよ。してないよ?」
「分かってます」ソファの端にちょこんと座る彼女は可愛い以外の何者でもない。「ごめんね、機嫌なおしてよ」ソファを挟んで後ろから覆い被さるように抱きしめる。首元に顔を埋めてもう一度「ごめんね」と言った。「ちゃんと私の言葉は聞いて」
「もちろん聞くよ」
「……なら、いいよ」数十分の攻防でやっと仲直りが完了した。これは最速の新記録更新かもしれない。僕たちの最大戦争時間は5日だ。これは彼女が避けに避けて任務ばかり入れて、追いかけようにも僕も出張任務を詰め込まれていた期間。彼女が一日終わるたびにどんどん離れていってしまうような、あんな思いは二度とごめんだからすぐに仲直りはしようと決めている。そのまま抱きしめた体勢でいると、ボソッとなにかを口にした。「ん?なに?」
「……頭、なでて」瞬間、自分すぐに後ろから彼女を持ち上げて正面から抱きしめた。「なでてって言ったのに」
「この後ね」だって。愛しさが溢れ出して頭なんか撫でてる場合じゃなくなった。
僕の奥さんは「痛い……もう無理。……ぐすっ」生理痛がひどい。「大丈夫?あっためてあげるから、こっちおいで」
「……いや!どうせ血の匂いがプンプンしてて臭いとか思ってるくせに!」あぁ、これは。
今回は特にひどいらしい。思い出したくもないけど、まだ僕たちが学生だった時に彼女に向けた言葉だった。彼女の気を引こうと空回りしていた青臭い自分に今会いに行けるのなら全力で訂正してこいと一発ぶん殴りにいきたい。「そんなこと思うわけないでしょ?いつもの甘い君の匂いしかしないよ」
「嘘つき!こっち寄らないでよ!」グズグズで涙がどんどん溢れてくるのを拭ってやりたいけど、今日はそれが許されないらしい。「君以外の子だったら放っておくよ。ねぇ、お世話させてよ」
「…ぅ、うぅ…」ポロポロと大粒の涙がこぼれていく。「ほーら、おいで。……離れてたら僕が寂しいから近くにいてよ」そういうと、なおも止まらない涙をこぼしながらやっと僕の胸の中に収まってくれた。「ごめ、なさいっ……嫌いにっならないでぇ」
「なるわけないよ。ほらベッド行こう、あったかくしないと」背中をさすりながら泣きついている彼女をなだめる。情緒不安定なほど可愛い。なるべく振動を与えないように慎重に彼女を抱えてベッドに運んだ。「ちょっと待ってて、湯たんぽ持ってきてあげる」頭をひとなでして離れようとすると、ぐいっと腕を掴まれる。「…行かないで」
「いつも湯たんぽないとって言ってるじゃん」
「いらない……悟がそばにいてくれたらいいから、行かないでっ」やっと泣き止んだ涙がまたこぼれ出した。自分の袖で拭ってやり「分かったよ」といっても腕を掴んだままだった。「どっか、いく…ときは起こして」
「どこにも行かないよ。安心して眠りな」
「……悟ありがとう」すぐに彼女は眠りについてしまった。結婚するにあたってちゃんと僕を立てていると見られるようにと学生の時の「悟」から「悟さん」になった。呼び方なんてどうでもいいと思っていたけど、彼女から言われるとすごく悲しくなった。結婚して距離が縮まったはずなのに呼び方ひとつでこんなに遠く感じるとは思ってなかったからだ。
ただ、甘えたり、今回のように自制が効かない時に出てくると嬉しくてたまらなくなる。「おやすみ、明日は良くなってるといいね」
今日も彼女の頬にキスを落とした。
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うちの旦那さまは「どう?昨日よりは良くなった?」とても優しい。酔ってはいないからもちろん昨日の情緒不安定で不満や不安を言葉にして彼にぶつけたことだって全て覚えてる。あまりに子供すぎた昨日のわたしが恥ずかしくて彼の顔は見れなくて頭まで布団を被って「うん」と静かに言った。小さすぎて聞こえていないかもと思ったが、「よかったね」と布団の上から優しく撫でられた。布団を被らなきゃよかったとすぐに後悔した。「なんか食べられる?白湯持ってこようか?」
「…いらない」完全に顔を出すタイミングを失ったわたしは「行かないで」と言葉の代わりに悟の手首を掴んだ。「もう少し寝よっか」
「…ん」そういえば「うちなんてなんで飯作ってないの?とか腹痛程度だろ?なんて言われたよ!?普通に離婚考えた」と友達が言っていたのを思い出す。悟は全く当てはまらないなぁとぼんやり考えていた時、バッと勢いよく布団を剥がされた。「おはよ。ちゃんと顔見とかないとね」歯に浮くようなセリフもこの顔だからきっと言えるんだろう。「…おはよう」
「まだ痛い?」
「痛くないよ」ちゅ、と軽いリップ音と共に柔らかい唇が降ってくる。「昨日はありがとう」
「普段あんまり甘えてくれないのに唯一甘えてくれる期間だから好きだよ」こんなに余裕のある男は世界中探したってそうはいないだろう。そんな男のうちの一人がわたしの旦那さんなんて自慢以外の何者でもない。
「ねぇ悟、……大好き」
「……うぇっ?!!ちょ、もう一回!!録音するからもう一回言って!!!!」
そういえばやかましいの忘れてた。