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翌日、何事もなかったかのように教室へ入った私は、席に着く前に神風の姿を探した。昨日は結局、神風と話すこともなく1日が終わったけど、やっぱりあいつがいないと何か変な感じがして落ち着かない。
「あれ、今日も来てないのかな…?」
少し不安になりながらも、気にしないようにしようと自分に言い聞かせ、教科書を出し始めたその瞬間。
「月見ーっ!!おっはよーっ!」
聞き覚えのある大声が突然背後から響いた。驚いて振り返ると、そこには両手を大きく振りながら元気いっぱいに走ってくる神風の姿があった。まるで何日も離れていた友達に再会したかのように、目一杯の笑顔を浮かべている。
「え、またそれ…?」私はため息をつきつつ、少しだけホッとした気持ちを隠せなかった。
「あー、無視されたー!」神風はわざとらしく大げさに肩を落としながら、私の前で止まった。「おい、月見、俺だぞ!お前の親友、神風様だぞ!」
「誰が親友だよ…」私は冷たく返したけど、どこか笑いがこみ上げてくるのを感じた。
「ほら、また無視されたー!」神風は大袈裟に顔をしかめたあと、ニヤリと笑って私の隣に座り込んだ。「ま、でも今日から俺はまたお前に絡みまくるからな!覚悟しとけよ、月見!」
その宣言を聞いて、私は思わず目を丸くした。昨日は全く関わってこなかったくせに、今日はまた元通りのしつこさで絡んでくる。なんでまた急に?
「昨日まで全然話しかけてこなかったくせに、急にどうしたの?」私は少し不機嫌そうに聞いた。
「え?いや、まぁ、ちょっと考え事してただけだって!」神風は慌てて誤魔化そうとしたが、その言い方はどこか不自然だった。
「考え事?神風が?」私は半信半疑で問い詰めた。「いつもバカみたいに元気なのに、何を考えてたのよ?」
「んー、まぁ…いろいろあるんだよ!」神風は頭をかきながら笑った。「でも、やっぱり俺にはしつこく明るくする方が性に合ってるみたいだな!月見、またよろしくなー!」
「別によろしくするつもりはないけど…」私はそう言いつつも、神風の明るさに少しだけ救われた気がしていた。やっぱりあいつはしつこくても、こうして騒いでいる方が自然だ。
「じゃあ、今日もいつものごとく、お前に構いまくるから覚悟しとけよ!」神風はそう言って、また大きな声で私を呼び始めた。
「月見ー?月見ー?スゥゥゥ…月見ぃぃぃぃぃ!」
「やめろってば!」私はつい声を上げてしまった。周りのクラスメートも私たちのやり取りを面白そうに見て笑っている。
「えー、無視かよ!それはひどいなぁ~」神風は笑いながら、さらに私に絡んでくる。
しつこいけど、やっぱりこの方が神風らしい。昨日のあの距離感のある静けさは、なんだか居心地が悪かった。少し面倒だけど、このうるささが戻ってきたことで、私は少し安心した気持ちになっていた
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