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【青桃】天使と悪魔

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【青桃】天使と悪魔

1 - 天使と悪魔 青桃

♥

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2024年11月04日

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⚠︎注意


・iris 青桃 BL


・桃さん天使です


・年齢は本人様と関係ありません










────────────────








🍣side



🍣「羽の手入れ……よし。」

🍣「じゃあ、行ってきます。」



ほぼ手ぶらの状態、近所に出掛けるような感覚で天界を後にする。


俺は天界に住む、天使のないこ。

先日やっと一人前として認められ、俺が今後守護することになる人物の情報を受け取ったのが一昨日。

それから下界のことを調べに調べて、今日遂に天界から旅立つのである。


左手に持っている一枚の紙を眺める。


『名前: いふ 性別: 男 年齢: 27歳 住所: 日本、東京都』


🍣「本当に情報うっすいな。」


むやみやたらに探しても見つかるわけがないので、もちろん彼の写真も貰っている。

ぴらりとそちらも見ると、印象の良い青髪の…イケメン、という感じだ。

但し、『イケメン』という概念は下界から流入したものなのでこの男が実際に『イケメン』なのかはよく分からない。

これを渡してきた上司が「イケメンだね」と言っていたので多分そうなんだろう。



🍣「27歳か……若いなぁ。」


俺から出た感想はこれくらいだった。









────────────────










🍣「これが…東京都か。」


いざ東京都に降り立ってみると、道に人がぎゅうぎゅうに詰まっていた。

そこらじゅう雑音だらけ。建物からの光の反射が眩しい。

おまけに空気も澱んでいて気分は最悪だった。


あまりの状況に眩暈がして、自慢の羽で羽ばたくことも忘れて雑踏の中に落ちてしまった。

慌てて立ち上がるが、誰も俺のことを気にしている様子はなかった。


他の天使たちが言っていたように、下界の人間には俺たちの姿は見えないらしい。

もちろん守護主も初めは天使を見ることができない。

しかし、天使と人間の間で契約を結ぶ──守護関係を成立させれば、その人間だけは天使を見ることができるようになるというのだ。

そのためには人間の手首に特別な鎖の輪を取り付ける必要があるのだが…


🍣「この中から一人を見つけるって、無理あるだろ。」



もういっそ今日のところは歩き回ってこの地域のことを勉強しようかと思っていた矢先、目の前に鮮やかな青色が映った。


すぐに『いふ』さんの写真を取り出し、今前を横切って行った人と見比べる。



🍣「…ラッキー、めっちゃ早く見つかったじゃん。」


しおれていた羽は元気を取り戻し、俺は上機嫌で彼の元に飛んで行った。








────────────────








彼の後を着いて行くと、どうやら電車に乗るらしいことが分かった。

人間も仕事をするらしく、きっと職場に向かっているのだろう。

そこは天使と変わらない。あまりに人の数が多すぎるということくらいが違いだ。


人混みが酷くてなかなか鎖を掛けるタイミングが見つからず、結局電車の中まで一緒に入ってしまった。


🍣「いや〜困ったな。見つけたのに契約できないなんて。」


電車の中でもずっと機会を窺うつもりではあるが、これは無理そうだ。

彼が目的地に着いてから、一人になる瞬間があるまで当分付けられないだろう。


すると、突然彼は片腕を上げ、天井からぶら下がっている輪に手を掛けた。


🍣 (…!?)

🍣 (何してんのか分からんけど、ビッグチャンス!!)


俺は服の内ポケットから鎖を取り出して、徐に彼の手首にまわした。


🍣「これからよろしくお願いします…!」


カチリ、という金属音が鳴って、彼の手首に鎖の輪が付けられた。


手首に違和感を感じたのか、彼はこちらを見上げた。

どこまでも青く、少し疲れたような暗さを持った目と視線がかち合った。


🤪「……」

🍣「……」


ゴクリ、と生唾を飲み込む。

もしかしたら、すごく怖がられるかもしれない。

目の前に突然、この世界の原理を無視した存在が現れるのだから無理もない。


敵意が無いことを伝えるように彼のことをじっと見つめる。



フイッ


しかし、俺の予想とは全く異なり、彼は何事もなかったかのようにそっぽを向いてしまった。


🍣 (…え?まだ見えてないとかある?)

🍣 (いやでも、さっきは絶対に目合ったんだけどなあ…)


その後彼が電車を降り、職場に着いてからもこちらを気にする素振りはなかった。

もしかしたら間違った情報だったのかもしれないと疑い調べてみたが、生憎これは正当法であり、こんな事例は以前に無かったらしいことが分かっただけだった。


どうしようもないので、その日中は彼を鳥のフンから守ったり、書類のミスを直すことで間接的に上司の叱責から守ったり、そんな些細なことをしてみた。

彼は多分快適に過ごせただろうが、俺は四六時中彼の周りのことに目を凝らす必要があり大変な重労働だった。

きっと「労働基準法違反」だ…多分。








────────────────







こんなことがいつまで続くのかと思っていたら、気付けば彼は荷物をまとめて仕事場を出ようとしていた。


朝に彼に着いて行った時と同じように電車に乗り、今度は知らない道を通ってある建物に辿り着いた。

🍣 (これが住んでる場所なのか。)


彼の後を追って上の階へ上り、玄関から一緒に中へと侵入した。


🍣「へぇ〜、こんなところに住んでるんだ。質素だな。」

🤪「…あの、帰ってきて開口一番それはめっちゃ失礼やと思うんですけど。」



🍣「…え?俺の声聞こえんの?」

🤪「なんなら姿も見えてますけど。ピンクと白のふわふわした人が。」

🍣「まじで!?いつから?」

🤪「朝、電車乗ってた時っすね。」

🍣「え、じゃあずっと無視してたわけ?」

🤪「まぁ、なんか変な人やと思ったんで…。」


一気に体から力が抜けた。俺が今日一日心配してたのは何だったんだ。


🤪「で、あんたが何者なのか説明して欲しいんやけど。」


彼はいきなり敬語を外して詰め寄ってきた。

今更だが、彼の言葉はどこか訛りがあるようだ。


🍣「俺は、これからいふさんのことを守護することになった天使のないこです!」

🤪「……守護霊?」

🍣「霊じゃないわ、天使ね。」

🍣「ほら、この美しい純白の羽が見えるでしょ?」

🤪「ふーん。」

🤪「天使、ねぇ…」


いふさんは俺の周りをぐるっと一周して、吟味するように俺を見回した。

とりあえず悪いヤツではないということが伝わったのか、いふさんの表情は少し柔らかくなった。


🤪「で、ないこは何ができるん?」

🍣「いふさんを守ります。」

🤪「守るって、具体的に何すんねん…。」

🍣「それは…俺もよく分からない。」

🍣「だから、いふさんが解決して欲しいことを俺に教えてよ。」


🤪「……会社の上司をぶっ殺」

🍣「あー、人を殺すことはできないよ。俺は天使だからね。」

🤪「なんやねん。使えんな。」

🍣「さっきから結構失礼だよね。俺いふさんの何倍生きてると思ってんの?」


🤪「…えー、同じくらいやと思うけどな。」

🍣「全然俺の方が長いです〜。この若造。」

🤪「若造ちゃうから。てか、俺のことはまろって呼んで。『いふさん』てよそよそしいねん。」

🍣「はいはい、まろね?」

🍣「で、お困りごとは何ですかー。」


まろはじっくり10秒ほどは考えて、あ、と溢した。


🤪「…女性社員が寄り付かないようにする、とかできる?」

🍣「女性社員……あれを全部?」

🤪「いやほらな、俺ってしごできやしイケメンやし高身長やし、」

🍣 (自分で言うんだそれ)

🤪「だからな、まあ寄ってくる女性がそこそこおるわけよ。」

🍣「そういう人たちを遠ざければいいんだね。」

🤪「せや、話早くて助かるわ。」


かくして、翌日から「まろを女性社員から守ろう大作戦」が始まったのだった。


ちなみに、その日まろと一緒に布団で寝たら羽に過去イチの寝癖がついて萎えた。

まろはそれを見て「良い感じじゃん」とか抜かしていた。









────────────────








次の日はまろの会社でミーティングなるものがあり、10人くらいの人が集まって何やら企画の話をしていた。

女性社員を何とかすると言っても何をすればいいか分からなくて暇していたら、休憩をとる時間になったようだ。

すると、ある女性が手を挙げて朗らかに言った。


女「私、みなさんの飲み物買ってきましょうか!」


それに人々は同意して、口々に自分の飲みたいものを言った。


女「いふ先輩は、何にしますか…?」

🤪「なんでもええけど…」

🤪「てか、そんな沢山一人で持てるん?」

女「…確かに、無理かもです。」

女「どなたか手伝ってくれたら嬉しいな〜、なんて…」


そう言いながら彼女はちらちらとまろに視線を送っていた。

まろはそれに応えることなく、代わりに俺に目配せをした。


🍣 (…今か!)

まろとこの女性が一緒に買い物をするのを防げば良い、ということだろう。


周りを見渡すと、その女性のことをそわそわしながら眺めている男性がいた。

🍣 (この人を使おうかな。)


その男性のことをちょいと肘で小突いてやれば、彼はバランスを崩して女性の前に出て行った。


女「わっ!?◯◯くん、大丈夫!?」

男「ぁ……、あの、えっと」

男「俺が、一緒に行くよ!」

女「えっ…」


女性は目を見開いて少し沈黙した後、微笑んだ。


女「…ありがとう。じゃあ行こっか。」


そして二人は並んで部屋を後にしたのだった。


🍣 (お…上手くやれたかも。)


まろの方を見れば、意地の悪い笑みをこちらに向けていた。


🍣 (ふーん、こうすれば良いんだ。)








────────────────








帰宅後



🤪「ないこ、やるやん。」

🍣「まぁね。」

🤪「あの後も色々頑張ってくれてありがとな。助かるわほんま〜」

🍣「でもさ、こんなことしてたら彼女できないよ。」



そう言うとまろはいきなり黙った。

あまり触れられたくないことだったかな、と少し後悔する。



🤪「……今はまぁ、ないこがおるから楽しめてるしええかなって。」

🍣「はぁ?俺は彼女の代わりなんてできないんで勘弁してください。」

🤪「ちゃうって笑」


🤪「とにかく、今の俺に女は必要あらへんの。」

🍣「ふーん。」


俺は煮え切らないような気分になって、自分の羽をいじり始めた。



…何かが、おかしい。


俺の羽が僅かに、天界にいた時よりも小さくなってる。

ぱっと見では何も変わらないのだが、俺は長年羽を大切にしてきたから分かる。

下界に来ると羽が小さくなるなんて事例はない。


🍣 (…この辺りに悪魔を従えてる人間がいるのかも。)



そう思っても今はどうしようもないので、明日からそれとなく周辺を調べようと決めて風呂から上がってきたまろと一緒に布団に入った。



🍣 (てか、守護主と一緒の布団で寝るって常識なのかな。)










────────────────










それから俺は毎日勤しんで、遂に会社でまろのことを好きな女性を殲滅することに成功した。

これには一年くらいかかった。


それと、近所に悪魔の気配は全くなかった。

何の手がかりもないので、悪魔調査も2年くらいでやめた。


そうするとまろからはそれ以上の要望は出てこなくて、結構暇になってしまった。

だから、暇になった時間でまろを手伝うための事を色々習得していった。

まろに教えてもらったことや自分で調べた情報を頼りにして家事全般を身に付け、料理を作ったりまろ用の服を作ってみたりした。

休日にはまろと一緒に映画を見て、ゲームして遊んで、ゴロゴロして過ごした。




🤪「ハンバーグやん、うまそう!」

🤪「副菜とかも全部自分で作ったん?」

🍣「まぁね。」

🤪「うちのないこ凄すぎるんですけど…手作りの温かさよ…」

🍣「…そう言われると嬉しい」



🤪「…なんか最近ないこ可愛くなってきたよな。」

🍣「バカ言うな。褒められたら誰でも照れるだろ。」


俺は結構焦って言った。


こんなこと絶対言えないけど、実を言えば少しまろのことが好きになり始めていた。

けれど天使と人間の恋なんて聞いたことないし、上から怒られそうだから心の中に留めている。


時間が経つほどまろに心を許していく自分がいて、このまま彼に溺れてしまったらどうしようという底の知れない不安が膨らんでいった。




しかしまろに出会ってから5年ほど経ったある日、俺はやってしまったのだ。










────────────────










その日は二人でお家飲酒パーティーをしていた。


🤪「はいKP〜!!」

🍣「かんぱーい。」


カチン、とプラスチックのグラスが安い音を響かせた。


🤪「ないこが来てからもう5年くらい経つなあ。」

🍣「随分長くなったな。まあ生涯着いていくんだけど…。」

🤪「ないこ家事できるし休日の相手もしてくれるし、まじでないこおったら彼女いらんわ。」


その言葉に気分をよくしてグラスを呷ると、身体中にアルコールが回っていくのを感じた。






しばらくすると、俺はもう完全に出来上がってしまっていた。


🍣「まろ〜。」

🤪「どしたんないこ。もう眠い?」


そうやって俺の顔を覗き込んでくるのを見て、不覚にも好きだなと思ってしまった。




🍣「…好き。」




俺は慌てて口を両手で塞いだ。

ついお酒で口が緩くなって、思ったことをそのまま言ってしまった。



まろはと言うと、驚いたような顔で固まっていた。

まろにしては珍しく、瞳をきらきらさせて。



🤪「…好きって、何が?」

🍣「…」


🤪「…俺のこと?」


まろは楽しそうに俺に尋ねた。



ずるいだろ、それは。


天使は嘘が吐けないんだから。




🍣「…うん、まろのこと好き。」

🤪「そっか。」


🤪「俺も、ないこのこと大好きだよ。」



まろはそう言って、俺のことを見つめた。

俺はそれをじっと見返して、長いこと見つめ合っていた。

だんだん何も考えることが出来なくなってきて、俺は近付いてくるまろのことを拒まなかった。



目の前まで来たまろと俺の唇が重なって、そのまま俺は押し倒された。

俺がこっち側なんかい、と心の中で突っ込みながら必死に鼻で息を吸う。



🤪「……ね、シてもええかな。」

🍣「…いいんじゃないの。」


まろはそれを聞くと嬉しそうにして徐に俺の服に手を伸ばすのだった。








────────────────








問題はその行為中に起こった。


俺はまろから注がれる熱烈な愛を受け止めるのに必死になっていた。

まろは時々俺が不安になるようなことをわざわざ言ってくる小悪魔ムーヴメントをかましてきたので、まじで悪いヤツだと思う。


まろがふーっと長い息を吐いて休憩し始めたところで、ふと視界の端に何か黒い物が映った。

顔を横に倒してそれを見る。



そこには、先が枯れて崩れかけている俺の羽があった。


🍣「は!?何これ!?」


まろは俺の大声に驚いてこちらを見た。


🤪「どうしたん?」

🍣「いや、俺の羽がほら、なんかボロくなってるんですけど…」


やはり天使が人間と性行為することは禁忌だったのだろうか。


枯れつつある羽の先にそっと手を触れると、その部分はあっけなく崩れ落ちてしまった。

俺は心の中で声にならない叫びを上げた。



🍣「ごめん、やっぱ今日はもう──」


🤪「それ、俺のせいやな。」



まろがとても愉快そうな声を発したので、驚いて見上げた。

まろはこの上なく楽しそうに笑っていた。


🍣「なんで……分かるの?」

🤪「なんでも何も、俺悪魔やし。」



一瞬、何を言われているのか分からなかった。


先程まで体はあんなに熱かったのに、冷や汗が止まらなくなっていた。



🤪「悪魔とセックスしてるんやから、そりゃ天使様の羽はやられるやろうな。」

🍣「ちょ、待って、」

🤪「あれ、怖くなったん?」

🍣「いや、どうして、俺が羽大事にしてたの知ってたよね…?」

🤪「もちろん。」

🤪「けどいつかはこうするって決めてたし、しゃーない。」


🍣「……なんで騙してたの」

🤪「騙すって……ないこが俺を信じただけやろ。」


まろはさて、と言うようにまた行為を始めようとした。


このまま続けていたら俺の羽は無くなってしまう。

そうすれば二度と天界に帰ることはできなくなる。


🍣「まろ、やめてっ!!」

🤪「今更それは無理があるやろ。」

🍣「これ以上は───ん“ぁッッ!//」


まろは大きく腰を振って行為を再開した。


🤪「うるさい子は静かにさせなきゃね〜♡」

🍣「ほんと、にっ、やめっ…」

🤪「うんうん、そっか。泣いてるのも可愛いね。」



🤪「ほら、まだ時間はたっぷりあるんやし、ゆっくり楽しもな。」



その夜、まろが行為を止めてくれることはなかった。










────────────────










🤪side



布団ですやすや寝ているないこの頭を撫でる。


🤪 (可愛かったなぁ…)


壊れていく自分の羽を見て怖くなって泣いてたの最高に可愛すぎた。



初めて会った日からこの時をずっと待ち侘びていた。

こんな純粋な天使ちゃんが悪魔に掘られたらどんな顔するんだろうって、すごく興味が湧いてしまったから。


最初はそれくらいの考えやったけど普通に惚れたし、絶望した顔も想像の上を行ってて流石俺のないこって思った。


🤪 (まーじで5年待った甲斐があった…)



ないこの横には、完全に枯れ切って背中から抜け落ちた羽が広がっている。

そっとないこの背中に触れると、薄い小さなひだが出ているのが分かった。



🤪「これでないこも悪魔の仲間入りやね。」




ないこが逃げないように、隠していた尻尾をないこの体に巻きつける。

両腕でないこを抱いて、俺は眠りについた。









end

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