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現地入りして救助活動や復興を手伝ってたらいつの間にか五日が過ぎてた。私はアリアのサポートを受けて取り残された人たちを探しながら救助活動に参加した。もちろん被災した人全員を救うことは出来なかった。私達だって万能じゃないし、何から何までやってあげるのは地球人のためにもならないってばっちゃんに止められたしね。
でも、犠牲者の数はずっと少なくなった筈だ。
本当なら輸送手段としてトランクを提供したいけど、流石にそれは止めておいた。扱いに関してはハリソンさん達に任せてるからね。必要なら使われる筈だ。
とは言え、いつまでもここに居るわけにはいかない。合衆国救助隊の隊長さんも、そろそろ切り上げて一度合衆国へ来てほしいと連絡が来てるって教えてくれた。
うーん、個人的にはこのまま最後まで救助活動に参加したいんだけどなぁ。
「いや、既にどれだけ助けられたか分からない。これまでの支援だけでも充分すぎるものだよ。皆が君達に感謝している。ありがとう。
だが、君の本来の仕事は別にあるだろう?この先は我々に任せてほしい。と言うより、これ以上君達に大活躍されたら我々の仕事が無くなってしまうよ」
「「「HAHAHA!」」」
隊長さんがおどけて言うと、皆が笑う。うーん、如何にも合衆国人らしい。私も笑顔になれた。
「分かりました。これ以上皆さんのお仕事を盗っちゃわない内に行きますね。本当にありがとうございました」
「君は変わらないな。感謝するのは我々の方だと言うのに」
「いいえ、私達だけじゃ出来ないこともたくさんありました。だから、ですよ」
私は飛べるし、身体能力も地球人より遥かに高い。アリアの探知もある。
でも、瓦礫の山を退かすような魔法は使えないし医療の知識があるわけでもない。もちろん災害救助の知識もね。
だから、皆さんと連携することで皆を助けられた。これは皆さんの功績だよ。
隊長さんと別れて、そろそろ合衆国へ向かうことをフェルとばっちゃんに伝えて用意されたホテルへ戻った。
随分と高級な感じだから聞いてみたら、国から逃げた人のお屋敷だったらしい。使って良いのかな?って聞いたら、何の問題もありませんって暫定政府の人達が笑顔で答えてくれた。むしろ、こんな曰く付きの場所しか用意できなくて申し訳ないって謝られた。
あっ、暫定政府は国から逃げ出さずにいた政府官僚の人達や有志の皆さんで運営している。知恵を出し合って頑張ってる姿には感動した。良い国になるよ、きっとね。
ホテル、と言うかお屋敷には立派な中庭がある。中心に銅像があって、それを取り囲むように配置された花壇には色取り取りの花が咲き誇ってる。銅像が誰のものかは分からないけど、問題はそこじゃない。
だって、銅像の隣で何故か張り合うようにサイドチェストのポーズをした輝かしい笑顔の男性が居たから。
……いやまあ、ジャッキー=ニシムラ(ハイレグ装備)さんなんだけどさ。なにしてんの?と言うか、なんでここに居るの?
他人のふりして良いかな?あっ、目が合った。
「やあ!ティナさん!お久しぶりです!」
眩しいくらいの笑顔だけど、服装とやってることが不審者のそれだ。ここ、ボディービルの会場じゃないよ?
「こんにちは、ジャッキーさん。どうしてここに?」
取り敢えず色々とスルーしてみた。
「ティナさん達をお迎えに上がった次第でしてなっ! 大活躍を聞いた時はっ! 私も胸が熱くなりましたよっ! 一人のっ! 地球人としてっ! 心からの感謝を捧げさせてくださいっ!」
うん、取り敢えずその喋る度にポージング変えるのは止めよっか。すっごく気になるし。
「私達はお手伝いをしただけですよ、ジャッキーさん。本当に称えられるべきは、今も諦めずに救助活動をしている人達です」
鎮火したとは言え、復興も考えるとこれからが大変だ。でも、皆さんの顔には強い活力があった。きっと、大丈夫。
「貴女の健気な献身に皆が心を打たれたのですよ、ティナさん。マンハッタンと言い、貴女は奇跡を招く天使だ」
「大袈裟ですよ」
変な宗教とか生まれてないよね?
「とは言え、ティナさん達もお疲れでしょう。明日、合衆国大使館へお越しください。ミスター朝霧と一緒に皆さんを待っていますからっ!」
「朝霧さんも来ているんですか?なんだか申し訳ないな……」
朝霧さんも異星人対策室の人だけど、本職は日本の外交官。だから本部にもあまり居ないんだよね。つまり、とっても忙しい人なんだ。
「話は終わったか?ほら行くぞ」
「ではティナさん!また明日!」
何時ものようにお巡りさん達に連行されていくジャッキーさん。明日会えるのかな?
……深く考えないようにしよう。
夕方、フェルとばっちゃんがホテルへ戻ってきたから、明日合衆国へ行くことを伝えた。
「それが良いよ。いつまでも手伝っていたら、下手をすれば年単位拘束されちゃうからね。ティナちゃん、目的を忘れないように☆」
「分かってるよ、ばっちゃん。今回は人命を優先しただけで、交流を忘れたりはしない。迎えも来てるし、一緒に行くつもりだよ。フェルもそれで良いかな?」
「はい。助けられる人は出来るだけ助けました。あとは皆さんに頑張って貰うしかありませんから」
フェルとばっちゃんのお陰で医療シートも随分と節約できた。半分以上、六百枚はまだ手元に残ってる。これとトランクが五十個。たくさんの食べ物の代金として足りると良いけど。
「充分足りるから大丈夫☆」
「ばっちゃんがそう言うなら心配しないようにするよ。この国のリーダー達は?」
逃げ出して医療シートをねだってきた人達だ。ばっちゃんに対応を任せたけど、大丈夫かな?
「心配しなくて良いよ☆殺したり傷つけたりはしていないから☆ただ……」
「ただ?」
「ちょっとお仕置きと教育をしておいたから、ティナちゃんに舐めた真似をする地球人は減る筈だよ」
何をしたんだろう?
フェルも頻りに頷いているし……聞くのが怖いな。いや、ばっちゃんに任せたんだ。私は気にしないようにしよう。
あっ、一応ジョンさんにジャッキーさんが逮捕されたのを伝えないと。