jmside
“終わりました、エントランスで待ってますね”
そのグクからのメッセージを見て頬を緩ませ、いそいそと帰る準備を始めた
本当はもっと早く出られたんだけど、エントランスで待つのは危険なんだ。
発情期だし、αもβも沢山いるから、敏感な人に気づかれてしまったらどうなるか分からない
発情期でなくても、人混みは徹底して避けるほど、僕はΩであることがバレないように慎重に生きてきている
僕がΩだと知っているのは、グクくんの他にもう1人、既にΩの番がいる社長だけ。
社長が気をつけて、僕がαだらけのところに所属しないで済むように取り計らってくれているから、今まで無事でいられている
ありがたいし、こんないい職場は二度と見つからないだろう
だからこそ絶対にバレずにここで上手くやりたいといつも考えていた
“すぐ行く!待っててね”
そう返事して、グクのところに向かった
なのに、
あ、、
🐣「ハァ、、、ハァ、、、、」
まずい、、ヒートだ、、、
会社で息切れをしたのは初めてだった
いつも違和感に気づくのに、、
だめ、、だめ、、
動きづらくなり、壁に軽く寄りかかってしまっていると、
見覚えのある、広報部の同僚が、
僕を見て声をかけてきた
👨「ジミン久しぶり、大丈夫か?顔色よくない、、
ん?なんか甘い匂い、」
🐣「だいじょうぶ、、だいじょうぶだからっ」
逃げるように僕は、朝、グクくんと話した階段裏によろよろと入って身を隠そうとした
なのに彼は追いかけてくる
👨「大丈夫じゃないだろ、、ほら、、え?」
彼の前じゃ薬が飲めない、焦りも伴ってどんどん身体が熱くなる
心配そうに肩を支えてくる彼を振り払って、
しゃがみこんだ途端、傍らに立っておろおろしていた彼の雰囲気が、
一気に冷たく変わったのを感じた
👨「もしかして、、Ω、、?」
🐣「ちっ、、ちがうっ、、ハァ、、ハァ、、」
あっという間に乱暴に隅に追いやられ、
無理やり顔をあげさせられた
目の前の彼は見たことの無い恍惚した表情を浮かべている。
もし彼がαであるならば、僕は終わった、と思った
👨「前からジミンが可愛いと思ってた、、
まさかΩだなんて、、ねぇ、、そんな誘惑しちゃだめだよ、、」
普段から飲んでいる弱めの抑制剤がかろうじて聞いているのか、
理性が飛ぶほどではないものの、苦しいのは変わりなく、押さえつけられたら動けない
薬を早く飲まないと、理性が失われてしまうのも時間の問題だ。
覆い被さられ、顔を両手で包まれ、
無理やり口付けられた
🐣「んんっ、、んっ、、、」
この子は悪い子じゃないのに、、僕のせいで、、泣
👨「ンッ、、ンッ、、、」
涙をこぼす僕とは対象に、彼は我を忘れた顔をして僕の唇を貪っている
このままじゃ、こんなとこで、、脱がされちゃう、、やだ、、濡れてるのを見られたらっ、、
グクくんっ、、来て、、、
その時
📞…♪
僕の携帯がなった、グクくんだ、
必死で声を上げるのを我慢して、欲情を誘わないようにしたおかげか、
目の前の彼はその着信音に反応して我に帰ってくれる
🐣「ンッ、、、ハァ、、、ハァ、、、」
👨「え、、なん、、で、、ちが、、違う、、ごめんっ、、どうかしてた、、、ジミン、、、俺、、αじゃないから、ね、、なのに、、」
αじゃないと聞いて少し安堵する
βなら、この先求められることもないだろうし、焦って取り乱しているが、この子は本当は優しい
だからΩであることをバラされる心配はないと、多少は安心できていた
それよりも、きっとβの彼なら自制ができるはずなのに、それすら掻い潜った自分のフェロモンの力が恐ろしくなる
🐣「う、、ん、、だいじょう、ぶ、、
でも、、誰にも言わないで、、、泣
あと、ぼくから、はなれて、、はやくっ、、あぶないっ、、から、、」
どんどんヒートが激しくなっていて苦しい。
取り込まれてしまいそう。
息切れしながら、彼に必死で請う
👨「分かった、知らなかった、、、誰にも言わないよ、、で、でも、、このままじゃ、、」
🐣「いいからっ、、、、はなれろっっ」
👨「え、、、わ、、わかった、、」
思わず叫んだ僕の変わり様と、自身の混乱もあってか、彼は逃げるように去っていった
あぁ、、明日、、謝りに行かなきゃ、、
回らない頭で、ヒート用の強い抑制剤を手繰り寄せ、やっとの思いで水なしで飲み込んだ
🐣「はぁ、、、はぁ、、、」
早く、早く効いてくれ、、、
ここまでかろうじて冷静に対処できていたのは奇跡で、苦し過ぎてうずくまってしまい、
残った力で鳴ったままだった携帯をとって、
1回会っただけなのに、僕が全てを託しても大丈夫だと思える存在に助けを求める
🐣「グク、、くん?、、
はぁ、、はぁ、、」
jkside
すぐ行くとメッセージが来てから、20分以上が過ぎて、さすがに心配になり電話をかけた
出てくれなくて切ろうと思ったその瞬間繋がって、
慌てて耳に当てた向こうから、荒れた声が聞こえた
🐣「グク、、くん、、?はぁ、、はぁ、、」
なに、、まるでヒートが起きているみたい
あれ、、そういえば、3ヶ月、、
そうだ、ちょうどあれから3ヶ月だ。
発情期の周期が3ヶ月と、どこかで聞いたことがあるのを思い出した
だとしたらまずい。
🐰「ど、どこにいるの?教えて?」
慌てすぎて敬語が崩れるが気にしてはいられない、電話を続けながら彼の会社の方に足早に向かう
息切れしながらも、申し訳なさそうな小さな声が聞こえた
🐣「あさ、、、ハァ、あさ、、はなしてたとこ、、これる?、、ごめん、、こまっちゃって、、ハァ、、」
切れ切れした小さな声を何とか聞き取り、走ってそこに向かう
🐰「すぐ行きますから、切らないで。」
近づくと、かすかに彼のフェロモンの香りがした
でも、ここら辺にはやはりαや敏感なβが少ないんだろう。気づいている人はいないみたい。
たどり着くと、耳に携帯を当ててカバンを抱えながら、隅でうずくまってしまっている彼がいた
ぎゅっと目を瞑って、荒い息を繰り返している
前の時ほどではないフェロモンの量に安心する
これなら余裕で耐えられそうだ。
🐰「ジミンさん、ちょっと触るよ、」
傍らに膝を着いて、そっと抱き起こそうとすると、ビクッと跳ねて、彼の手から携帯が落ちた
片手でジミンさんの体を支えながら落ちた携帯を拾い、まだ僕と繋がっていた通話を切る
両手で抱き起こし、遠慮がちに、でもしっかりと抱きしめた
落ち着いて欲しくて、優しく背中を撫でる。
🐰「落ち着いて、ね、大丈夫。
もう大丈夫だから。薬は飲んだ?」
🐣「ハ、、来て、、くれた、、ハァ、、よかった、、うん、、飲んだ、、、」
首根にきゅっと腕が回されてしがみつかれる
彼の身体が燃えるように熱い。
🐰「それならすぐ効いてくるはずだからね。
大丈夫、、大丈夫だよ、、」
なかなかジミンさんの呼吸が収まらない
ヒートの興奮が彼の体を支配してるようだった
🐰「苦しいね、、もう少しがんばれ、、」
Ωのヒートが毎回こんな大変なものだとは知らなかった
🐣「グク、、くん、、ねぇ、、」
荒い息が混じった声で話しかけられた
🐰「はい、、?」
🐣「キス、、、キスして、、おねがい、、」
🐰「!?」
思わず体を離して顔を見た
🐣「いいからっ、、おねがいっ」
うるうると焦点の合わない瞳を揺らがせて、
泣きそうな顔で懇願してくる
🐰「っ、、」
理性を必死で保って彼を助けようとしてたのに、求められてしまうとしたくてたまらなくなった
彼がそんなことを言うのは、ヒートに陥ってるからだとわかっていた。
でも、もうそれでも構わないと、くらっと視界が揺れて自分の中に本能が顔を出した
優しく彼を壁に押し付け、逃がさないように顔の両側に手をつく
顔を近づけると、そっと瞼が閉じられた
🐰「ほんとに、いい?」
こくっと許しを得たのを合図に、その柔らかい唇に口付けた
あ、、なにこれ、、、
気持ちよすぎる、、
もうこのまま全部欲しいと思ってしまうほどに、、、
でも、僕のそんな気持ちを察したかのように、彼の身体がビクンっと怯えたように震えて、やっとのことで理性を引きもどす
彼はヒートと戦っているんだと自分の意識を頑張ってキスからそらした
🐣「ん、、、、ふ、、、」
誘うように薄く口を開いた彼が、僕の唇を舌でノックしてくる
このまま彼の意識がキスに向いてる間に発情が引いてくれればいい
そう考えた僕は舌を受け入れて絡ませた
🐰「ンッ、、クチュ、、、チュ、、、ン、、」
そうしていると、
狙い通り
激しかった舌の勢いが少しずつ治まっていき、
力んでいた身体が緩んで、自然と唇が離れた
🐣「ハァ、、、、、、ハァ、、、、、、ん、、」
僕は彼の体を再び引き寄せて抱いた
さっきよりもいくらか熱が引いているように思う
目を見ると、揺らいでいた瞳が戻って僕の顔をしっかり認識できているようだった
🐣「ご、ごめ、、ん、、、ぼく、、また、、変なこと頼んで、、グクくんは普通なのに、、」
普通、、自分は普通じゃないとでも言いたいんだろうか。
こんな綺麗で、儚くて、素敵なのに。
まあ確かに、そういう意味では、僕にとって彼は特別魅力的な人だ。
僕はこの人が好きだから、一目惚れをしてしまったから、
僕が追いかけて声をかけたのに。
好きだから、口付けを請われて受け入れたのに。
それを分かってくれないんだろうか。
そんなことすら、この第二の性のせいにされてしまうのか。
黙りこんでいたら、怯えた声でジミンさんが言った
🐣「おこった、、?嫌だった、よね、?
ごめん、、また変に誘っちゃった、、ごめん、、怒らないで、、泣」
あぁ、ちがうのに。
その細い腰をさらに引き寄せてぎゅっと抱く
🐰「怒ってないです。少しも怒ってない。」
🐣「ん、、怒らないで、、」
慣れないことが沢山起きて疲れてるんだろう、
子供のように甘えて抱きついてくる
🐰「僕、ジミンさんに誘惑されたなんて認めないから。
僕はちゃんと理性保ててたよ。」
思わずポロッと言いたいことが飛び出て内心慌てた
🐣「ど、、どういう意味、、?」
よく分からない、と言った不安そうな声色で尋ねてくる彼。
それを見て、こんな混乱してる時に追い打ちをかけてどうするんだと、身体を少し離して誤魔化す
🐰「なんでもないですよ、大丈夫です、ね?」
そう言って笑いかけると、分からないような、ほっとしたような、曖昧な表情をうかべた
🐰「身体はどう?落ち着きましたか?」
🐣「うん、もう苦しくない、、でもなんか疲れちゃった、、巻き込んでごめんね、、」
ジミンさんの目が眠そうに座ってきている
🐰「誰かになにかされました?」
そう聞くと、思い出したのか、後ろに回っていた彼の手が、僕のスーツをぎゅっと握りしめてきた
🐣「そうだ、、見つかっちゃった、、どうしよ、、ぼく、、こんなんじゃ、、」
🐰「分かりました。
でも大丈夫ですよ、焦らないで、、なんとかなるから
とりあえず帰りましょう。僕の家の方が近いからそこで1度休んでいってください。」
抱き上げるように立たせる
どこか覚束無い足取りなのが気になったが、軽く支えるだけにしてとりあえず会社の外に出た
外はもう薄暗かった
🐣「どっち、、?」
🐰「しばらくはジミンさんの家と同じ方向ですよ」
少し歩いて、周りに人気が減ったところで立ち止まる
気づかずに少し歩いていってしまいそうになった彼が、はてな顔で振り向いた
🐣「ん?どうした、の?」
🐰「ジミンさん、ふらふらしてる。」
🐣「そんなことない、、よ、、」
目を泳がせながら言うから、さっと距離を縮めて横に立ち、腰に手を回して支えた
一気に密着する形になって、彼の甘い香りが鼻をくすぐる
疲れてるからか、彼の身体から、
彼自身の力では制御出来なくなったフェロモンが大量に盛れだしてきている。
🐣「グクくんっ、、!」
びくっとした彼が、怯えた顔で、僕の顔を下から覗き込んだ
🐰「この距離、嫌ですか?支えちゃだめ?」
🐣「い、、いやじゃない、、けど、、」
🐰「じゃあもう少しだから。このまま行きましょ」
なんだろう。これ。
やっぱ僕誘惑されてるのかな、
これがαの独占欲ってやつなのかな、、
誰にも渡したくないような、ずっとそばに置いておきたいような、そんなおかしな気持ちで胸がいっぱいだった
コメント
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うぐぇへ🫠好きすぎるうぅぅ!!続き待ってます、、
最高でした!