気付いていないでしょ?
俺が君の背中に”すき”という2文字を書いていることを
ルームシェアを始めて、涼ちゃんはよくリビングのソファーで寝落ちしていた。
片付けも雑で、洗濯物も溜めて、あっちこっち脱ぎ散らかして。
綺麗好きとまではいかないが、ある程度片付けておかないと落ち着かない俺は
普通なら一週間で爆発してしまうかもしれない。
しかし何故そうならなかったのかというと
答えは簡単
”惚れた弱み”
好きな人ならなんでも許せてしまうという不思議な現象をもれなく体験中なわけで・・・。
しかし、そんな想いを言葉にすることは当然憚られる為、代わりにすやすやと眠る涼ちゃんの背中に想いを綴る。
”すき”
この言葉を書くのは何回目だろう?
そして、何回目で涼ちゃんは気付くだろう
永遠に気づかなければいいと思う反面、早く気付いて欲しいと思う自分がいる
気付いてたところでこの関係がいい方に転がるとは思えないから、やっぱり気付いて欲しくない
でも、
”ずっとまえからすきだった”
だって、この恋は
”ひとめぼれでした”
だから、
”ずっといっしょにいようね”
大森が練習スタジオに入ると、藤澤が一人準備運動をしていた。
「おいすー。」
「あ、おはよー元貴。」
「若井は?」
「飲み物買いに行ってる。」
「てかさ、涼ちゃん。」
「ん?」
「何をそんなにニヤニヤしてるの?」
「え?ニヤニヤしてる?」
「めっちゃしてる。」
「そっかー。さっきまで若井いたから表情筋頑張ってたんだけど、いなくなった途端緩んじゃった。」
「いいことでもあった?」
「んふふふ。」
「キモっ。」
「ひどっ。」
「で、何があったの。」
「実は、告白されました。」
「マジ?!」
「寝てたら、背中に―――――。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」
「はい?」
「寝てって、え?ヤルことヤッてんの?!」
「いや、本当にそういう事じゃなくて。僕が寝落ちしてたら。」
「どこで?」
「今住んでるとこ。」
「女連れ込んでんの?!大切な時期に何してんの!若井は何やってんの?!」
「元貴、落ち着いて話を聞いて。」
「・・・一旦聞こうか。」
大森は椅子に座った。
「で?寝てたら背中に抱きついてきたとか?」
「いや、背中に”すき”って書かれた。」
「・・・・・・・え?」
「結構前からなんだけど、僕の背中に指で”すき”って書くんだよ。」
「何それ高校生か。って今どき高校生でもそんなことせんわ。」
「いいじゃない。まぁでも本人は僕が起きてるって気付いてないけどね。」
「寝たふりしてんの?事恋愛対象として見れないとか?」
「いや、全然恋愛対象としてみてますけど?」
「恋愛対象として見てんのに可愛い告白を無視するとか、それはそれで相手が可哀そうなんだけど。」
「だって、この時間を楽しみたいじゃん。」
「これが噂に聞く”黒藤澤”か。かわいそ相手の子。」
その時、何かが落ちた音がした。大森と藤澤が音がした方を見ると、若井が顔を真っ赤にして立っており、足元には水のペットボトルが転がっていた。
「あ・・・。」
察した大森は、若井に近づきペットボトルを拾って渡す。
「涼ちゃん、5分で終わらせて。」
藤澤にそう言うと、スタジオを出て行った。
5分後に大森が戻ると、真っ赤な顔で半泣き状態の若井とその前で土下座する藤澤の姿があった
【おわり】
コメント
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と、ときめきが止まらない……🫠 可愛すぎます……。