テラーノベル
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まず初めはルシーカの家に行った。ムアラニは用事があるので帰るらしい。俺はルシーカと並んで歩いた。その距離は前よりも遠くなっていた。
「あ..!着いたね。」
ルシーカは明るさを取り繕っていた。
「前の私はキィニチやムアラニちゃんをこの家に招待していましたか?」
床に散らばっていた本を棚に戻しながら言った。その顔は本棚に向いていて見えない。
「招待というか俺らが勝手に来てたな。」
ルシーカは時間差で「そうなんだ」と言った。
「少し外へ出てもいいかな?」
貼り付けた笑みを浮かべ、ルシーカは俺に聞いた。俺は答える代わりにルシーカについて行った。
外へ出るとルシーカは花を摘んでいた。沢山の花を抱え、家の近くの谷へ行った。少しの間ルシーカから笑顔が消え、風が無表情のルシーカの髪を揺らした。
「______♪…」
風はルシーカの持っていた花を下に運び、ルシーカの旋律を辺りに響かせた。そこには“いつも通り”のルシーカがいた。見惚れているとルシーカは手を合わせ、瞼を下ろした。
「母が安らかに眠っている事を祈ります…」
俺はそんな言葉を聞いて驚いた。母親を亡くしていたなんて知らなかったんだ。そんな事を考えでいるとルシーカは俺の方を見ず言った。
「ねぇキィニチ,私ね…母が死んだ時“笑ったんだ”。」
ルシーカの顔はまだ関心がなく、風で髪が靡いていた。俺は何も言えなかった。
「自分でも気持ち悪いって思ったよ。でもあの時私は初めて大きな声で笑ったんだ。こんな私….きっと幸せになっちゃ駄目なんだよ。」
俺はルシーカに送ってあげたい言葉があった。
「ルシーカも幸せになっていい人だ。」
俺はルシーカの目を見て言えなかった。でもルシーカに届いたと思う。
「いつか絶対にルシーカの記憶を思い出させる。」
風が強くなり聞こえなかったが心に聞こえた。
『ありがとう。』
多分ルシーカはそう言っていたと思う。
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