テラーノベル
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都市中の照明が砕けた。
ガラスが弾け、
地下空間に悲鳴が連鎖する
誰もが空を見上げていた
地下都市を覆う天井
そのさらに上
“目”がある
ありえないほど巨大な黒い目が、
生き物みたいに蠢いていた。
見られている
それだけで、
身体が震える
「……なんだよ、あれ」
ヒロトですら笑えなかった
額から汗が落ちる
強化人間の本能が、
警鐘を鳴らしている
逃げろ、と
だが
リョーカだけは、
その目から視線を逸らさなかった。
「来ちゃったんだ」
静かな声
諦めたみたいな声だった
モトキは歯を食いしばる
「説明しろ、リョーカ」
沈黙
数秒後
リョーカはぽつりと呟いた
「ヴェルトラウムは、一人じゃないんだよ」
「……は?」
「“集合意識”なんだ」
空気が凍る
「昔ね、人間だった人達がいたの」
リョーカの瞳が揺れる
「戦争も、病気も、寿命もない世界を作ろうとした人達」
遠くで爆発音
バグの咆哮
それでもリョーカは続けた。
「人間を捨てて、全部繋げて、一つの意識になった」
モトキが眉をひそめる
「それがヴェルトラウム……?」
「うん」
リョーカは笑った。
悲しそうに
「でも失敗した」
その瞬間
頭上の“目”が瞬きをした。
ドクン
空間が脈打つ
同時に、
街中のバグ達が絶叫した
『■■■■■■■■■』
言葉にならない声
だが意味だけは分かる
歓喜
崇拝
恐怖
全部混ざっていた。
「最悪だな……」
ヒロトが短剣を握る
すると突然
モトキの耳に、
ノイズが走った。
『――モトキ』
知らない声
低い
無機質
モトキは目を見開く
「……誰だ」
『君は優秀だ』
声は頭の中に直接響く
『人間のままでは惜しい』
その瞬間
モトキの視界に、
映像が流れ込んだ
燃えない世界
飢えも病もない都市
誰も死なない
苦しまない
争わない
そして
その中心に立つ、
【完成されたモトキ】
『我々と融合しろ』
『人類は次の段階へ進める』
甘い声だった。
苦しみのない世界
それは確かに、
モトキが昔願ったものだった。
だが
「……ふざけんな」
モトキは銃を握り直す
「そんなもん、人間じゃねぇだろ」
直後
激痛
頭の奥を掻き回される
膝をつく
「モトキ!?」
ヒロトが支える
だがモトキは、
ヴェルトラウムを睨んでいた。
『理解不能』
『なぜ不完全を選ぶ』
「不完全だからだよ」
モトキは立ち上がる
血が額を伝う
「傷つくし、死ぬし、間違える」
銃口を空へ向ける
「でも」
引き金に指をかける
パンッ!!
当然、
届かない
それでも
「それでも、俺はまだ人間なんだよ」
「お前とは違ってな」
沈黙
次の瞬間
空の“目”が、
細くなった。
怒り
都市全体が震える
『――排除』
その瞬間
地下都市の壁という壁が、
一斉に割れた。
中から現れる
無数のバグ
人型
獣型
羽虫みたいな群体
その数、
数千
「うわぁ……」
ヒロトが乾いた笑いを漏らす
「さすがにキツくね?」
「だねぇ」
リョーカも苦笑する
だが
モトキだけは、
静かだった。
銃のマガジンを入れ替える
カチン
「やるしかない」
その声に、
ヒロトが笑う
「ははっ。知ってた」
リョーカもハンマーを担ぐ
黒い侵食はまだ残っていた。
それでも、
その目には意思がある
「じゃあ」
リョーカが一歩前へ出る
「世界を救ってみようか」
次の瞬間
数千のバグが、
雪崩みたいに襲いかかってきた。
そして
青リンゴ商会の、
最後の戦いが始まった。