テラーノベル
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最初に突っ込んできたのは、犬型のバグだった。
皮膚のない赤黒い肉体
四本脚で壁を走り
天井を這い
牙を剥いて飛びかかってくる
「ヒロト!!」
「任せろッ!!」
ヒロトが前へ出る
瞬間
地面が砕けた。
強化された脚力で一気に加速し
犬型の群れへ飛び込む
ザンッ!!
ザザンッ!!
短剣が閃くたび
肉片が舞う
速い
人間の視界では追えない
一体の首を切り裂き
振り向きざまに二体目の腹を裂き
三体目を蹴り飛ばして壁に叩きつける
だが
数が多すぎる
「チッ……!」
背後
死角から、
巨大な顎が迫る
その瞬間
パンッ!!
銃声
犬型の頭部が弾け飛ぶ
「後ろ」
「サンキュ、相棒!」
モトキは冷静に次弾を装填する
呼吸すら乱れない
照準速度
判断力
命中率
全部が異常だった
バグが跳ぶ
撃つ
落ちる
また跳ぶ
撃つ
それだけ
まるで、
未来が見えているみたいだった
「……世界一ってのも納得だわ」
ヒロトが苦笑する
だが
モトキは答えない
視線が
もっと奥を見ていた。
「来る」
その瞬間
空間が歪んだ
大型
人型の変異種
四メートル近い巨体が、
天井を突き破って降ってくる。
腕が六本
顔がない
代わりに、
胸部に巨大な口があった
『■■■■■■』
咆哮
鼓膜が裂けそうになる
「うるっせぇな!!」
リョーカが飛び出した
巨大なハンマーを、
片手で振り抜く。
ドゴォォン!!!!
衝撃波
空気が押し潰される
変異種の上半身が吹き飛ぶ
だが
再生
肉が蠢き
数秒で戻る
「わー、キモい」
リョーカは困ったように笑う。
その時
変異種の胸の口が開いた
黒い光
「避けろッ!!」
モトキが叫ぶ
直後
極太の熱線が放たれた。
地下街を一直線に焼き払う
建物が溶ける
鉄骨が赤熱化する
「ッ……!!」
ヒロトがモトキを抱えて飛び退く
爆風
熱
視界が白く染まる。
「はは……なんだあれ」
ヒロトの腕が焼け爛れていた
再生はしている
だが遅い
細胞修復が追いついていない。
「高熱で再生阻害されてる……!」
モトキが舌打ちする
その時だった
「……モトキくん」
リョーカの声
振り返る
彼は変異種を見上げていた。
静かに
「ボクが止める」
「は?」
「今なら、たぶんできる」
黒い侵食が広がっていく
腕
首
頬
バグの模様みたいなものが浮かぶ
モトキは察してしまう
リョーカは、
自分の力を使う気だ。
ヴェルトラウム側の力を
「やめろ」
モトキは即座に言った
「でも」
「ダメだ」
強く
今までにないくらい強く
「お前が消える可能性あるだろ」
リョーカの目が揺れる
ヒロトも黙る
リョーカは少し笑った
「……優しいね」
「当たり前だろ」
モトキは睨む
「仲間なんだから」
その言葉に、
リョーカは一瞬だけ泣きそうな顔をした。
だが
次の瞬間
変異種が動いた
六本腕が一斉に迫る
速い
避けきれない
その瞬間
リョーカが二人の前に立った。
「ごめんね」
黒い光が爆発する
ドクン――
空気が反転した
地下都市全体のバグ達が
一斉に静止する
時間が止まったみたいに。
そして
リョーカの背中から、
黒い“腕”が生えた
巨大な、
獣みたいな腕
それが変異種を掴む
ギギギギギギ……!!
六本腕が砕ける
変異種が絶叫する
だが止まらない。
さらに黒い腕が増殖する。
十本。
二十本。
百本。
「……リョーカ」
モトキの声が震える
リョーカが振り返る
その顔は
もう半分以上
人間じゃなかった。
それでも
笑っていた。
「大丈夫」
優しい声
「ちゃんと帰ってくるから」
そして
リョーカは
変異種ごと空へ飛んだ
天井を突き破り
地下都市の遥か上へ。
数秒後
世界が白く染まる。
轟音
空が割れたみたいな爆発
衝撃波で
都市全体の窓ガラスが砕け散る
モトキは呆然と空を見上げていた
黒煙の向こう
何かが
落ちてくる
それは
ボロボロになった
リョーカだった。
コメント
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書きたい欲が止まらなさすぎる
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