テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#独占欲
#ワンナイトラブ
#溺愛
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「私たち……もう終わりにしない?」
ギスギスした空気感が一変
私の一言に
沈黙が流れる
「同期の子でね、鈴木さんて子がいるの」
「純也も知ってるんじゃない?」
「鈴木さん、色々あって今謹慎中なんだって」
言葉なく固まる純也
今
純也は
何を思い
何を考えているのだろう
その理由は
私が知る由もないと思っていた
予想外のことだった
終始俯いていた純也が
おもむろに顔を上げ
私の目を見て口を開く
「お前、浮気してんだろ」
脈略もなく
突如発した純也の言葉に
私は言葉なく固まってしまった
これまでたいした会話もなかった私たち
向かい合い
目を見て話すことなど皆無だった
そんな純也が
私の目を見るや否や発した言葉に
固まったまま言葉を発せず
返す言葉が見当たらない
「最近帰り遅いし、毎週末休日出勤してるよな」
「会社に男いるんだろ」
語り部の転換
冷静だった先程までから一転
言葉無く固まる純也に
一方的に語り掛けていたはずが
一方的な純也の問いかけに
言葉無く固まり
返す言葉を模索する
脳を急速起動させ
フル回転で巡らす思考
ただでさえ嘘がつけない性分の私
こんな状況に対応する手駒がない
正直に話してしまえば
リュカに被害が及んでしまう
下手な誤魔化し方をしても
リュカに迷惑を掛けてしまう
右往左往狼狽しながらも
何とか表情だけは冷静を保っていた
「いるわけないでしょ、何言ってるの」
「さっき話した通りだよ、立場も変わって多忙なの」
最適な言葉が見つからず
適切なストーリーを構築出来ず
無言でいるわけにもいかない私は
咄嗟に
ただ否定するだけの
その場限りの嘘をついてしまった
「……」
「……」
私が浮気の事実に感付いたかもしれない
そう純也は悟っただろう
純也は何か感付いたのかもしれない
そう私も悟った
私たち夫婦の会話は
突如として暗礁に乗り上げ
いつも通りの光景
会話無き沈黙の自宅に逆戻りしてしまった
互いにやましいことがある
叩けば埃が出る
腹の探り合いの様相を呈し
互いに言葉を発しないまま
音無き重苦しい空気に包まれてしまった
勇気を振り絞り
離婚話を切り出した
離婚に向けて動き出そうとしていた
私の決意も虚しく
離婚話を切り出すや否や
会話の方向性が五里霧中
派生して違う方向に進み出してしまった
互いに硬直したまま
会話の糸口を見出せず
居ても立っても居られず
私は無言のままキッチンに立ち
夕飯の調理へ逃げる
純也はソファにもたれかかり
スマホに逃げた
離婚の話を切り出したものの
結局離婚の話は進展しないまま
離婚の話を切り出しただけの中途半端な恰好で
最悪な状態のまま頓挫してしまった
純也はどう思っているのか
それだけでも知っておきたかった
***
物事は思い通りに行かず
結局いつもの状態に落ち着いてしまう
無言でキッチンに立ち
家事をこなす私と
無言でソファにもたれかかり
スマホを触る純也
自分を変え
未来を見据え
意気揚々と向かい合ってみたものの
物事は思い通りに進まない
このままではいけないのに
この状況に慣れた私たちは
結局向き合えず
慣れ親しんだリズムを刻んでしまう
夕飯の準備が整うと
作り置きしてキッチンを去る
シャワーを浴びて
ベットに入る
結局進展もないまま
お互い逃げるように
一日を終えてしまった
***
中途半端に頓挫してしまった日曜日
月曜の定例会議に出席し
業務時間然とした外見を保ちながらも
頭の中は動き出した離婚協議で一杯
それにしても……
純也はどうして私の浮気を疑ったのだろう
純也は何かを知っているのだろうか
これからは
これまで以上に気を配る必要がある
さもないと
リュカにまで迷惑を掛け兼ねない
怪しまれない程度には
早めに帰宅して
週末の行動も気を付ける必要がある
「——さん、水川さん!」
「……え?、あ、はい!」
上席との大事な会議中に大失態
思い耽り話を聞いていなかった
「聞いてましたか?」
「まあ、月曜の朝は身が入らんよな!」
「この資料至急なので、社長に直接渡して説明しておいて下さい」
「宜しく頼みます」
「では以上、今週も宜しくお願いします」
月曜日の朝イチ
私はリュカに会う用事が出来た
一昨日行ったばかりの
社長室へ行く用事が