ソファーの真ん中に座る私の右側に銀河が腰を下ろすと、銀河の隣に流星が足を組んでどっかりと座り込み、天馬が私を挟んで左隣にちょこんと腰かけた。
「ようこそ、理沙。いらしていただいて、光栄です」
フロアで最後に声をかけてきたのは、電話をかけた際に応対をした男性で、肩を過ぎる長めのストレートな黒髪を後ろで緩く束ねていて、掛けているノンフレームのメガネの奥には切れ長の眼差しが煌めいて見えた。
「お電話では、失礼を致しました……」
電話で耳にしていたのとは少し違う、直に聞くと魅了されてしまいそうなくらい色気のある低音ボイスに、
「ああ、いえ……。失礼だなんてことは、少しもないですから」
思わず聞き惚れちゃいそうにもなって、頭の中からその魅惑的な声を振り払った。
「おまえ、またなんかきつい言い方とかしたのかよ?」
茶化すように、銀河が割って入ってくる。
「また、上からもの言ったんだろうが?」
流星が、面白そうに後を続ける。
「いくらドSだからって、女の子を恐がらせたりしちゃダメだよ?」
天馬がふわりと甘ったるい笑顔で、やっぱりちょっと毒を吐く。
「ドSって……」
そんな風には思えないけど……と、その男性を見つめた。
「ああ、こいつ、”ドSメガネ”っていうキャラだから。あんま怒らせない方がいいぜ?」
「ドSメガネ……?」
銀河にそう言われて、ますますぽかんとする私に、
「理沙?」
と、その彼が、低音を利かせた声で私に呼びかけて、
「私は、空の月になぞらえて、三日月と申します。
ここでは、皆が空にまつわるような名前になっていますので、どうぞお見知りおきを」
胸元に片手を添えると、まるで執事のような気品の漂う優雅な仕草で、ゆるりと頭を垂れた。
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