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#青春恋愛
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夏希(なつき)
166
奇蹟あい
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――停電。
校舎から。
すべての明かりが消えた。
「……」
玲は。
星羅の手を握った。
「星羅」
「うん」
「ここにいる」
「……分かってる」
暗闇の向こう。
誰かが立っている。
『――やっと思い出したか』
低い声。
「誰だ」
玲が問いかける。
返事はない。
ただ。
一歩。
足音が近づく。
「……」
星羅は。
玲の腕に抱きついた。
「玲くん」
「ああ」
「絶対、離さないで」
「離さない」
その言葉を聞いて。
暗闇の人物が。
小さく笑った。
『……あの時と同じだな』
「……あの時?」
玲が反応する。
『覚えていないか』
「何を?」
『七年前』
玲の胸が。
ざわつく。
『暗闇の中で』
足音。
一歩。
『君は星羅の手を握って』
『絶対に離さなかった』
星羅が。
息を呑む。
「……」
『そして言った』
声が。
少しだけ変わる。
『――俺が守る』
玲の頭に。
一瞬。
映像が浮かぶ。
暗い会場。
泣いている星羅。
そして。
幼い自分。
『大丈夫』
――俺がいる。
「……!」
玲は。
頭を押さえる。
「玲くん!」
「……大丈夫」
しかし。
記憶が。
少しずつ蘇ってくる。
暗闇。
大人の声。
走る足音。
そして。
誰かが。
星羅を連れて行こうとしている。
『その子を渡せ』
「嫌だ!」
幼い玲が。
星羅の手を強く握っている。
『離せ!』
「嫌だ!」
『玲!』
母親の声。
そして。
――何かが倒れる音。
「……っ!」
玲は。
現実へ戻る。
「今……」
星羅が。
玲を見る。
「思い出した?」
「ああ……少し」
「何を?」
「誰かが」
玲は。
息を整える。
「星羅を連れて行こうとしてた」
「……!」
「俺は」
星羅を見る。
「それを止めようとしてた」
星羅の瞳が。
揺れる。
「……私も」
「?」
「少しだけ思い出した」
星羅は。
胸元を押さえる。
「誰かが言ってた」
「何て?」
「――その子は危険だって」
「……」
「私が?」
玲は。
首を振る。
「違う」
「じゃあ……」
二人が。
暗闇の人物を見る。
「あなたは何を知ってる?」
星羅が尋ねる。
『全部だ』
「なら」
星羅は。
一歩前へ出る。
「顔を見せて」
『……』
「私たちの記憶を奪ったのも」
「……」
「玲くんを苦しめたのも」
声が。
冷たくなる。
「あなたなの?」
『違う』
「じゃあ誰?」
『私は』
一瞬。
沈黙。
『あの夜、君たちを守った側だ』
「……」
男が。
ゆっくり姿を現す。
そこにいたのは。
昨日の男。
「……あなた」
星羅が睨む。
「なぜここに?」
「呼ばれた」
「誰に?」
「君たちをここへ誘導した人物に」
玲が。
眉をひそめる。
「誰なんだ?」
「まだ言えない」
「またそれか」
玲の声が強くなる。
「俺たちはもう十分隠された」
「……」
「七年前も」
「……」
「今も」
玲は。
男を睨む。
「俺たちには知る権利がある」
男は。
少し黙った。
「……そうだな」
そして。
一枚の写真を取り出す。
「これを見ろ」
玲が受け取る。
「……」
写真には。
2017年のイベント会場。
だが。
今まで見てきた写真とは違う。
そこには。
幼い玲と星羅。
そして。
その二人を遠くから見つめる――
一人の少女。
「……誰?」
星羅が呟く。
「それが」
男は言う。
「君たちを最初に繋いだ人物だ」
「……!」
「2017年より前から」
写真を指す。
「この子が二人の近くにいた」
星羅は。
写真を凝視する。
「……この髪」
「?」
「どこかで……」
思い出せない。
でも。
知っている気がする。
「名前は?」
玲が聞く。
「――美咲」
「……!」
昼間の少女。
玲と星羅は。
同時に顔を見合わせた。
「美咲が……?」
「そう」
「私たちを?」
「ああ」
男は頷く。
「ただし」
「……?」
「彼女が悪意を持って二人を繋げたわけじゃない」
「じゃあ」
星羅が聞く。
「どうして?」
「彼女もまた」
男は。
写真を見る。
「君たちと同じ被害者だからだ」
「……」
その瞬間。
校舎の非常灯が点く。
薄暗い廊下。
そこに。
「……!」
美咲が立っていた。
「……もう話したんだ」
玲が振り向く。
「美咲」
「うん」
美咲は。
ゆっくり歩いてくる。
「全部聞いてほしい」
「……」
「私があなたたちを知っていた理由」
「……」
「二人が何度も出会っていた理由」
美咲は。
玲と星羅を見る。
「そして」
少し悲しそうに。
「あなたたちの記憶が消された理由」
星羅は。
玲の手を握った。
「話して」
「……」
「全部」
美咲は。
小さく頷く。
「分かった」
「……」
「じゃあ」
美咲は。
ゆっくり口を開く。
「まず――」
その瞬間。
校舎の奥から。
大きな音がした。
ガシャァン!
「……!」
美咲の顔色が変わる。
「……来た」
「誰が?」
玲が尋ねる。
美咲は。
震える声で答えた。
「あなたたちを探している人」
「……!」
星羅は。
玲の前に立つ。
「……」
玲が驚く。
「星羅?」
「私が守る」
「……」
「今度は」
星羅の瞳が。
冷たく光る。
「絶対に」
廊下の向こうから。
足音。
一歩。
二歩。
三歩。
そして。
一人の人物が姿を現した。
「……!」
玲が息を呑む。
その人物を見た瞬間。
頭の奥で。
七年前の記憶が。
一気に蘇る。
「……嘘」
玲の声が震える。
「なんで……」
そこにいたのは。
――玲が知っている人物だった。
星羅も。
その顔を見て。
言葉を失う。
「……この人」
そして。
その人物は。
静かに笑った。
「久しぶりだね」
七年前。
二人の記憶から消された。
――その人物が。
今。
二人の目の前にいた。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第46話、読み終えました……。 暗闇の中での再会、すごく重くて切ない回でしたね。玲が「離さない」って言うところ、七年前の約束を今も守ってるんだなって思うと胸が熱くなりました。星羅が「私が守る」って前に出るシーンも、成長と覚悟を感じて泣きそうに……。 美咲が「同じ被害者」っていう伏線、気になります。最後に出てきた人物が玲の知ってる人ってのも衝撃的でした。続きが気になって仕方ないです😿