5
『また明日〜!』
桜乃さんと別れ、家に向かって歩く。
桜乃さんは、見えなくなるまで手を振り続けていた。
もう、あたりは暗くなってきた。
『甘ちゃん、浮気?』
『え?』
琥珀さんが言った。
琥珀さんの顔をよく見てみると、ちょっと拗ねているみたいだった。
『なんでそうなるんだよ〜』
戦い方を教えただけだよ。
それに、
すぐ隣にずっと、琥珀さんいたじゃん。
と、
前から、
足音が聞こえてきた。
そして、暗闇から、
あの時の男!
僕は、琥珀さんを庇うように手を広げた。
『やぁ、また会えたね。』
男が言った。
『君は、誰ですか?』
僕は警戒したまま、言う。
『僕かい?僕は…レイン。』
それは本名なのか?
やはり、怪しいな。
『そう警戒しないでくれよー、まだ君に悪いことしてないでしょー。』
男はヘラヘラとしている。
だけど、
『腰にあるのはなんだ。それ、剣じゃないか?それで何をする気だ?』
剣を持っている。
レインという男、かなり危険だ。
『違うよ。これは剣じゃなくて、刀だよ。』
!
レインが刀を鞘から少し抜く。
そこに、月を反射し怪しく光る刃がみえる。
僕は、銃を手に持った。
『まぁまぁ、待ってくれよ。僕は君を傷つけたいわけじゃない。コイツはただの護身用だ。』
『そんなものをどこで手に入れた。』
刀、そんなものが簡単に手に入るはずがない。
『それは簡単さ。刀も剣もないなら作ればいいだけ、だろ?』
それも作ったのか?
そんな簡単に作れるものじゃないはずだ。
『そこまでして、護身用だとは思えないな。』
『あまり信用されてないなー、まぁ仕方ないか、』
そんなものを持っていて、信用なんてできるはずがない。
『一体、何がしたいんだ?』
男はニヤリと笑った。
『君の弱点について伝えておこうと思ってね。』
僕の、弱点?
『君は自分から攻撃をしない。相手からの攻撃を受けてから戦うようにしているみたいだね。』
それは…
『目覚めてから少しの間は、君から攻撃していたのになぁー。また、戻ったんじゃないか?君は、敵にも優しくしようとしてるように見える。それじゃあ、近いうちに殺されちゃうよ?』
見ていたのか。
でもそれは、
『せめて、僕から傷をつけたくはないからです。』
自分から傷をつけることは良くないと思ったから。
先に手を出すのも相手からではないと僕が悪くなる気がしたからだ。
『まず君は半年ほど眠っていたみたいだけど、今の君はあまりに弱すぎる。』
っ!
ストレートに言われると辛いな…
『昔はあんなに強かったのに、今は…あれが本気か?』
『・・・』
本気、
僕の本気は、
『自分が弱いと思ってないか?戦うことが怖いと思ってないか?それじゃ、強くなんてなれないよ。』
…そうかもしれない。
僕は、自分が弱いと思っている。
僕は、戦うことが怖いと思っている。
『僕は思うんだ。本当に人が傷つけ、殺し合うことが悪いことなのかと。』
それは、言わなくてもわかる。
『人を傷つけることは悪いことだ。』
だが、レインは笑った。
『君も、善人を救うために悪人を傷つけているのにか?』
『それは…』
なんと言えばいいのかわからなくなった。
『たとえば、他の動物で例えてみようか。多くの動物は縄張りを作って、入ってきた敵を追い払うか、殺すまで戦う。殺さないと、自分が、大切なものが殺されるかもしれないからだ。』
レインが横の林の方を見て言った。
そこは今真っ暗だけど、きっとそういうことが起きているのかもしれない。
『君は、犯罪を犯すような人でも優しくしようとする。でも、その必要があるとは思えない。要は、今の君のままじゃあ近いうちに死ぬことになるだろうから、死ぬくらいならいっそ殺すかしたほうがいいってことさ。』
『たとえ極悪人だろうが、僕が殺されそうになろうが、そんなことをしてはいけない!』
人を殺すことはしたくない。
そんなことをしてはいけない。
『それはなぜだ?悪いことをした人が本当は悪くないとでも思っているのかい?でも、犯罪を犯しただけでそいつはもう悪者なんだ。君も、誰かのために戦ったのに犯罪者として扱われたんだ。』
それは、
『悪いことをしたのには、何かしら理由があるかもしれない。僕だってそうだ。それを勝手に何もかも悪い人だとは思いたくないし、正しいことを教えることも大切だと思う。』
『なるほど。君は悪人を善人に変えたいということか。ははは!君らしい答えだ。』
レインは何かを考えているようだった。
『僕が今から人を殺しに行くと言ったら、君はどうする?』
突然、レインが冷たい声でそう言った。
『その時は止める。』
本気なんだろうか。
『なら、君が止められる状態じゃなかったら?』
『それは……』
どうすれば、
どうすればいい?
『はい、時間切れ。もし、本当にこんなことがあったら、手遅れになってたよ?』
…手遅れ、
『一時期君がしていたみたいに、銃を使うなりした方がいい。その方が、人が助かる。』
その通りだと思った。
『人を救うためには、犠牲も必要なんだよ。』
そして、レインはこちらへ歩きだす。
!
気づくと、すぐ真横にいた。
『そうすれば、昔の自分だって超えられるさ。』
そう言って、レインは暗闇に消えた。
鬼塚さんから言われたばかりなのに、ちゃんとしたことを何も言い返せなかった。
『人を救うためには、犠牲も必要。』
僕は、レインの言ったことを繰り返し言った。
本当に、それでいいのだろうか。
そんなことを考えながら、家に着いた。
○おまけ
手を洗い、着替えて、夕食を食べて…
・・・
手には先ほどのスマホが、
気になる。
僕のスマホになったんだ。
電源を入れる。
スマホの画面が光る。
『おぉ!』
感動する。
こんなものを手にするなんて、思っても見なかった。
スゲーなコレ!
指をスライドさせれは、それに合わせて画面が動く。
1つのアプリをタップすると、アプリが開かれる。
このアプリは、無料で電話やメールができるんだっけ。
名前はフルネームにしている。
アイコン?
コレはなんだろう。
カシャッ!
!
気づくと、琥珀さんが何かをしていた。
琥珀さんのスマホの画面を覗くと…
『・・・』
僕の横顔が映されていた。
『甘ちゃんの写真ゲット!』
写真を撮っていたのか。
琥珀さんは嬉しそうに言った。
琥珀さんは使いこなしているみたいだ。
これかな?
僕もカメラを開く。
カシャッ!カシャッ!
よし、琥珀さんの写真をゲットした。
琥珀さんの驚いた顔が映し出された。
『また撮られた〜』
琥珀さんは悔しそうに言った。
と、
ピロン♪
!
スマホに、琥珀さんから何かが送られた。
{甘ちゃん、琥珀だよ。送れてる?}
と、メッセージが届いていた。
僕も、何か送ってみよう。
{甘です。琥珀さんからメッセージが届きましたよ。こちらも送れてるかな?}
と、送ってみた。
そして、すぐに、
{届きました♡}
と、琥珀さんから返事が来た
届いたみたい。
本当にすごいな。
電話もしてみよう。
琥珀さんに電話をしてみる。
プルルルルル、と僕のスマホからなるとともに、
琥珀さんのスマホから音楽が流れた。
そして、
「もしもし?甘ちゃん?」
スマホから、琥珀さんの声が聞こえてきた。
隣に座っているから普通に聞こえてるんだけどね。
「琥珀さん、聞こえてるかな?」
僕も、スマホに向けて声を出す。
「甘ちゃんの声、聞こえてるよ。』
どうやら、こちらの声も聞こえているみたいだ。
なんなんだよこれ!
薄い板みたいなものなのに、こんなこともできるなんて…
技術ってすごい。
僕はかなーり感動していた。
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