文化祭当日。
生徒や保護者で賑わう校内で、美術室だけはどこか静かな空気に包まれていた。
展示作品が並ぶ中、ひときわ目を引く二つの絵があった。
一つは、華が完成させた、
ソウタのキャラクターの絵。
色鮮やかで、生き生きとした表情をたたえている。
そしてもう一つは、その絵の隣に置かれた、奏多が新たに描き始めた、真っ白なキャンバスだった。
そこに、華がやってくる。
キャンバスの前に立ち、完成させた絵と、奏多が置いた白いキャンバスを交互に見つめる。
「華が、完成させてくれたんだな」
背後から、ソウタの声がした。ハナは振り返り、微笑む。
「うん。でも、奏多くんの絵を模写してみただけだから。これは、奏多くんが描いたものなんだよ」
「いや、違う。あれは、僕が諦めた絵だ。この絵はそれと全く別物。君が、新しく命を吹き込んでくれた絵なんだよ」
奏多は、白いキャンバスに手を伸ばし、一枚のスケッチブックを重ねる。
そこには、数日かけて奏多が描き直した、新しい物語の主人公が描かれていた。
以前よりもさらに力強く、そして穏やかな表情をしたキャラクターだった。
「僕が思い描いてたものは、こんなものじゃない。でも、君が僕に教えてくれたんだ。諦めた世界にだって、新しい希望が生まれるって」
華は、奏多の言葉に、嬉しさと切なさが混じったような表情を浮かべる。
「華、きみが思い描いてたものは、どんな世界?」
奏多は、華に問いかける。
華は、白いキャンバスに視線を移した。
「それは……まだ、わからない。でも、奏多くんとなら……」
華は、もう無理に笑顔を作る必要はない。
心からの、穏やかな微笑みだった。
その瞳には、かつての影はなく、未来への希望の光が宿っていた。
奏多は、彼女の言葉に、そっと手を差し出す。
「また、描こう」
僕たちは、差し込む夕陽の中で、手を取り合った。
かつて、過去の後悔を抱えていた僕らが……今、新しい未来を描き始める。
過去の傷は、消えることはない。
けれど、それらを抱えたまま、一歩ずつ進んでいく強さを、僕たちは手に入れたのだ。
そして、美術室の窓から差し込む光の中、二人の手には、再び描き始めるための筆が握られていた。
二人がこれから描く物語は、どんなものになるのだろうか。
それは、誰も知らない。
ただ一つ確かなのは、華と僕、二人の未来は、もうくすんだ色ではない、ということだけだった。
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