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重たい瞼を開くと、金色の睫毛が俺の頬に触れた。
「……おはよう」
囁くような声に目を上げると、至近距離でルークの蒼い瞳と視線が絡んだ。彼の腕は俺の腰に回され、まるで檻のように動けない。
「いつまでこうしてるつもりだ」
喉から出た声は枯れていた。昨夜……というか今朝まで続いた行為の名残だろう。
「ずっとだよ」
ルークが微笑む。
「僕だけのレオナルド。他の誰にも見せたくない」
この台詞だけで理解できる。原作とは違う展開だ。
光の騎士は実は重度のヤンデレで、俺を監禁する気満々ということか。だが原作知識があまり役立たないのは当然だ。何しろ俺は悪役に転生したんだから。
「離してくれ」
そう言っても腕の拘束は緩まない。どころか彼は額にキスを落とした。
「どうして?こんなに綺麗なのに」
綺麗?男に言うセリフじゃないだろう。それに……。
「君こそ美しいじゃないか」
反射的に口走った瞬間、ルークの目が細くなった。
「ありがとう。でも僕が欲しいのはそんな言葉じゃなくて……」
唇が首筋に這う。吐息が耳朶を撫で、「もっと深いところ」と囁かれた。
前世の記憶が蘇る。ここは確かに『光と闇の聖戦』の世界だ。主人公である光の騎士ルークは、魔王と戦う宿命を背負っている。そして俺……いや、レオナルドは、裏切りと復讐の果てに闇に堕ちる悪役だ。
しかし目の前の彼は、その設定を完全に無視して俺を求めている。
「ルーク、魔物の襲撃はどうする?」
現実問題を持ち出してみた。原作通りなら今日あたり大きな戦いがあるはずだ。
「ああ……あれね」
ルークがくすりと笑う。
「心配しないで。僕たちの時間は邪魔させないよ」
違和感。本来なら彼は国を守るために命懸けで戦う正義の人間のはずだ。それが戦いより俺を優先するなんて……。
「ほら、まだ終わってないんだから」
再び身体が熱くなる。昨日から何度繰り返しても抱かれることを求められる。これが愛なのか執着なのか分からない。ただ確かなことは一つ。
このままでは俺の計画が狂う。
魔族への復讐。それは俺がレオナルドとして生まれ変わった時に決めたことだった。両親を殺した魔族を一人残らず滅ぼす。闇の力を手に入れ、全てを支配する王になる。そのためにはルークと結ばれるべきではない。
「レオ……もっと僕を見て」
彼の指が俺の顎を捉え、視線を逃さないよう固定される。青い瞳の奥に狂気が潜んでいるのが見える。原作キャラと違いすぎる。なぜ?
「分かった……もう少しだけ付き合う」
諦めたふりをして時間を稼ぐしかない。ルークを操る方法を見つけなければ。そしていつか魔族への復讐を……。
「嬉しい!」
ルークの表情が明るく輝く。
「愛してるよ、僕だけのレオナルド。永遠に一緒にいようね」
永遠に。その言葉に胸がざわつく。転生前のことなど忘れてしまいそうな甘美な響き。だが同時に恐怖も感じていた。このままでは本当の目的を見失いかねない。
「約束する?」
ルークが小指を差し出す。
「もちろんだ」
嘘をついて契約を受け入れる。これも生存戦略だ。だが小指を絡ませる時、微かに闇の力が蠢いたのを感じた。まるで「利用すればいい」と語りかけてくるように。