テラーノベル
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──朝。
ネグはレイの家で目を覚まし、静かにベッドを降りた。
顔を洗い、クシで髪をとかすと、レイがふと声をかけてきた。
「おい、じっとして。」
レイは無言でネグの後ろに立ち、器用に三つ編み込みのハーフアップを整え始めた。
指先は無駄なく、素早く編み込まれていく。
「ほら、できた。……別に大事とかやないけど、身だしなみぐらいはちゃんとしとけ。」
ネグは何も言わず、小さく頷いた。
そのままレイと一緒に朝ごはんを食べ終え、リュックを背負い直して、家を出た。
──帰宅。
家の玄関を静かに開けると、中にすかーと夢魔の姿はなかった。
代わりに、マモンとだぁがリビングでくつろいでいた。
「……あれ、ネグ?」
だぁが優しい声で微笑む。
マモンも目を細めて近づいてきた。
「おい、どこ行ってたんだ?連絡ぐらい寄越せ。」
ネグはふわりと近づき、マモンの服の裾を掴んで甘えるように顔を埋めた。
マモンが少し驚きつつも、頭を撫でようとした瞬間──
ネグはそのままマモンに軽くキスを落とした。
頬に、唇に。
柔らかく触れるだけの、甘えるようなキス。
マモンは小さく笑いながらも、目を細めたままだった。
「……本当、手のかかるやつだな。」
だぁもすぐそばに寄ってきて、ネグの髪をそっと撫でる。
「無事でよかったよ、ネグ。」
そんな静かな時間が流れる中──
バタンッ!!
勢いよく玄関が開いた。
すかーと夢魔が帰ってきたのだ。
二人とも顔を真っ赤にして、目を血走らせたままリビングへ駆け込む。
そして、ネグがマモンとだぁに甘えているその姿を見た瞬間──
「……ッッッ!!」
すかーは拳を強く握りしめた。
夢魔も無言で奥歯を噛み締めたまま、ただネグを睨みつける。
そして──
ドンッ!!
すかーは壁に拳を当て、大きく息を吐き出した。
「……はぁ……マジで……何考えてんだよ、お前……」
夢魔も低い声で唸る。
「ほんとふざけんな……。」
だがネグは、それを見て楽しそうに小さく笑った。
「わぁ……ブチ切れてる〜笑。」
その挑発的な声に、すかーと夢魔の堪えていた怒りが一気に溢れ出す。
「……ッ、もういい加減にしろ!!」
すかーがネグに手を伸ばす。
その瞬間。
ネグは躊躇なく、すかーの手首に噛みついた。
ガブッ!!
「……ッ!! いってぇ……!」
すかーの表情が一瞬苦しげに歪む。
そのまま引き剥がそうとするが、ネグは離さない。
「……マジかよ、こいつ……」
だが噛みつきは次第に力を緩め、甘噛みに変わっていった。
血は出ない程度に、ガブガブと。
そして、ネグは言葉にしないまま、ごめんねの代わりに舌を這わせた。
噛んだ場所をベロベロと舐めてから、また甘く噛む。
「……ネグ……ッ」
すかーの声は苛立ちと戸惑いが混ざったものだった。
夢魔も横でその様子を睨みつけたまま、眉をひそめていた。
「やりすぎだ……ネグ……!」
その瞬間──
ネグはふっと手を離し、その場から軽く跳ねるように後退した。
すかーが声を荒らげかけたその時には、ネグは既にキッチンの奥へと逃げ込んでいた。
「……チッ!! ほんっとムカつく……!」
すかーは舌打ちしながら、噛まれた手首を見下ろした。
「でも……血は出てねぇか……。」
夢魔も腕を組み、ネグが隠れている方を見つめたまま、静かに呟いた。
「マジで……どこまで逃げ回る気なんだ、あいつ……。」
そんな二人の視線をよそに、ネグはまた声も心も出さず、クスクスと笑っていた。
──捕まらない。
それがネグだった。
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