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1.復習心
「その言葉、そっくりそのまテメェに返してやるよ」
「!」
リヅとイサナが声のした方を振り返る。
なんとそこには、先程悪魔の技でこの場から消えたはずの院瀬見が立っていた。
「院瀬見先輩…!?」
リヅが驚く。院瀬見のスーツはボロボロで、体の至るところが傷だらけだった。
「な…なんであんたがここにいるのよ…!!殺したはずなのに…!!あ゙ぁぁもう…!!」
悪魔が自身の顔を掻きむしる。できた傷から血がだらだらと流れる。
院瀬見はその悪魔を思いっきり睨みつけた。
「私はテメェに言いたいことがある。そのしょーもねぇクソみてぇな性格今すぐやめろ」
「えぇ…?」
悪魔が泣きながらこちらを見た。
「テメェのことは全部分かってんだよ。全部聞いてたからな」
院瀬見が続ける。
「テメェ、なんも感じねぇんだろ?悲しい悲しい言ってギャーギャー騒いで、本当は悲しくもなんともねぇんだろ?なぁオイ」
「そ…そんなことないわよ!!どうしてそんな酷いこと言うのよ!?」
「黙れ。嘘吐いてんじゃねぇよクソが。テメェはただ悲しみの気持ちから生まれただけ。自分自身に悲しみなんて1つもねぇんだよ」
リヅが静かに立ち上がった。
2.私の気持ち
「世界ってのは広いんだよ。テメェは長い間悪魔でいるから知らねぇだろうが、お前よりも何かを失って悲しんでる奴がうじゃうじゃいるんだよ」
「…」
「私も家族を失った。テメェら悪魔のせいでな。テメェらみてぇな悪魔なんて奴がいなければ私は今でも幸せに暮らしてたんだ」
院瀬見は親指で後ろにいるリヅを指さす。
「コイツもそうだ。テメェらのせいで大好きだった母親を失った。その心の傷は一生かかっても消えねぇ」
リヅが目を伏せ、そしてまた刀を握り直した。ギシ、と持ち手が軋む。
「テメェには分かんねぇだろうなァ…誰かを失うことの気持ちがなァ!!」
院瀬見がスーツの内ポケットからメスを取り出してぶん投げる。その動きに合わせてイサナが再び片手を上げた。
「ウツボ」
イサナの背後からウツボが飛び出す。悪魔はメスとウツボを両方とも器用に避けた。
イサナと院瀬見、両者の息が少し荒ぶっている。
「よくも思い出させてくれたなァ。テメェはどの悪魔よりもズタズタにして殺してやる」
院瀬見がそう呟く。
その目には、誰よりも悪魔を憎む院瀬見の復讐心が籠っていた。
そして、何を思ったか、急に院瀬見が悪魔の元へと歩いていった。
示し合わせた訳でもないだろうに。イサナがその後を着いていった。
「え…?」
リヅは院瀬見とイサナの行動が理解できず、ただ目を凝視させた。
院瀬見、イサナの足が止まる。悪魔の目の前で。
「な、何よ…!」
すると突然、院瀬見が悪魔の頭に指を立てた。
「死ね」
悪魔の体に異変が起きた─
3.脳細胞破壊
「な…ッ…あんた…私に…何したのよ…ッ!」
「テメェの汚ぇ脳みそに直接技を送り込んだだけだ。私とアイツの気持ちを踏みにじったんだからこのくらい当然だ」
早くコイツを殺さなければ。そう思っているのに体がついて来ない。反応しない。なんだかとても変な感じがする。
悪魔がそう思ったその時。
「残念だったな。精々地獄で泣き喚いてろ」
「もう二度と、生まれてこなくていいからね」
院瀬見とイサナが口々に言う。
その言葉を言われたのを最期に、悪魔の意識は途切れた。
4.集結
「はぁ…」
「院瀬見先輩!大丈夫ですか!海は!」
砂ぼこりを払う院瀬見にリヅが走りよってきた。リヅ自身も酷く汚れている。
「私よりイサナの心配してやれ」
リヅがそう言われ、やっと気づいたかのようにイサナの元へと向かった。
「海…大丈夫か?」
「一生許さない。アイツ」
無理もない。長い間家族として暮らしてきた鮫が殺されたのだから。
「鮫はまたすぐ戻ってくるよ。きっと」
イサナが悲しげな顔で頷いた。
「院瀬見先輩は…怪我は?」
「別に。お前こそ大丈夫か?」
院瀬見が顔についた血を拭く。恐らくは返り血だろう。
「僕はなんとも…」
リヅが自分の体を見回した、が。
「違う。精神的な話だ」
リヅは嬉しかった。人のことを何も考えていないような性格の院瀬見でも、ちゃんと自分のことを想ってくれていたのだ。
「馬鹿みてぇに機嫌いいなお前」
イサナも歩いてきた。3人が並ぶ。
やっと終わった。
空には綺麗な雲が流れていた。