テラーノベル
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かなり遠回しな表現ばかりなので伝わっているか不安です。
分かり辛かったら教えてください。
玄関の扉が閉まる音を聞いても、いるまはすぐには動かなかった。
脱いだ靴を揃える。
それだけのことすら、酷く面倒に感じられた。
家の中は静かだった。
電気はついていない。
廊下の先にある部屋も、暗いまま。
「……ただいま。」
返事はない。
鞄を床に置き、リビングへ入る。
テーブルの上に、薄い茶封筒が置いてあった。
誰が置いたのかなんて、考えなくても分かる。
封筒を開けることもなく、そのままテーブルの端へ寄せた。
いるまはそのまま風呂場へ向かった。
シャワーを浴びる。
ぬるい湯が、肩から流れていく。
鏡を見る。
頬の腫れ。
首元に残った手の痕。
腕にも、いくつも痣があった。
昨日より増えている。
いるまは目を逸らした。
学校で聞いた声が、頭の中に浮かぶ。
笑い声。
父親のこと。
名前を呼ばれるたびに混ざる、嫌な言葉。
そして、あの鈍い音。
感触が、まだ残っている。
いるまは目を閉じた。
シャワーの音だけが、浴室に響いている。
何も聞こえなくなればいいと思った。
何も考えなければいい。
けれど、頭の中から消えてくれない。
いるまは壁に手をつき、俯いた。
しばらく、そのままだった。
やがて、肩が小さく震えた。
声を出さないようにした。
誰にも知られたくなかった。
けれど、この家には誰もいない。
隠す相手すらいなかった。
◇
翌朝。
なつは目を覚ました。
しばらくの間、ベッドの隅で小さく丸まっていた。
隣から寝息が聞こえる。
音を立てないように、ゆっくりと起き上がる。
扉を開ける。
誰も起こさないように、足音を殺して歩いた。
浴室へ入り、シャワーを浴びる。
何度も何度も身体を洗った。
それでも、気持ち悪さが消えない。
なつは目を閉じた。
その不快感にも、もう慣れてしまった気がした。
それが嫌だった。
慣れたくなんかなかった。
制服に着替えて、家を出る。
学校に着くと、いつも通り人がいる。
誰かが笑っている。
誰かが話している。
なつには関係のない声だった。
友達はいない。
けれど、ここでは何もされない。
それだけで楽だった。
◇
昼休み。
なつは一人で学食を食べていた。
周りをぼんやりと眺める。
すると、その中にいるまを見つけた。
一人だった。
なつは席を立った。
「いるま」
呼ぶと、いるまが振り返った。
「ん?」
「昼飯、食べねぇの?」
「あぁ」
いるまは少し笑った。
「金ねぇからな。」
「……いつも?」
「腹減らねぇし」
「いや、減るだろ」
「そうか?」
「そうだよ」
なつは少し考えて、自分の財布を取り出した。
「……食う?」
「え、いいの?」
「別に」
「じゃあ、もらう」
二人で、食堂の端の席に座った。
「美味い」
「そ」
「うん」
「よかった」
いるまが笑う。
なつも少しだけ笑った。
「英語の発表もう終わった?」
「うん、終わった」
「え、どうだった?」
「地獄」
「だと思った」
「お前もどうせやばいじゃん」
「俺は休むから」
「保健室もありだな」
くだらない話。
本当に、どうでもいい話。
なのに、楽しかった。
こんな気持ちになったのは、何時振りだろうか。
昼休みが終わる。
「じゃ、また」
「うん」
二人は別々の教室へ戻っていった。
◇
午後。
なつは廊下を歩いていた。
角を曲がったところで、足が止まった。
少し先。
人の輪ができている。
その真ん中に、いるまが横たわっていた。
傍にあった鞄が蹴り飛ばされた。
中身が散らばる。
続けて、何発かの鈍い音がした。
誰かが咳き込む声。
笑い声が沸いた。
なつは動けなかった。
やがて人が散っていく。
残ったいるまが、ゆっくりと起き上がる。
散らばった荷物を鞄に仕舞っていく。
何事もなかったみたいに。
◇
放課後。
いつもの教室。
しばらくして、いるまが入ってくる。
なつは顔を見る。
新しい傷がある。
「……怪我、大丈夫?」
いるまは自分の頬を触った。
「あぁ。まぁ」
鞄を置く。
「もう慣れた。」
「……」
なつは何も言えなかった。
しばらくして、小さく、
「……ごめん」
いるまが振り返る。
「なんでお前が謝んだよ」
いるまは笑っていた。
「……」
「なつがやったわけじゃないじゃん」
「でも⋯⋯」
「ならいいだろ」
いるまは椅子に座った。
いつものように窓の外を見る。
なつも自分の席に座る。
二人とも、しばらく何も話さなかった。
窓の向こうに、夕方の空が広がっていた。
コメント
1件
みぅです🖤 第4話、読ませてもらいました。 いるまの“家の中に誰もいない”静けさと、なつの“慣れたくなかった”感覚——どっちもすごく刺さりました。 昼休みの「食う?」「もらう」のやりとり、何気ないのにあたたかくて、泣きそうになりました。 最後の「もう慣れた」って笑うところ、なつが何も言えなくなる気持ちが痛いほどわかって…。 続き、ちゃんと見届けたいです。
#〇〇化あり
雛
411