10時。 家事をして、学校の準備をして、急いで家を出る。今日もまた、いつもの同じ日々が始まる。
小学校2年生の時、両親が事故で亡くなった。
あの日は、いつもの様に夕飯の準備を済ませ、1年生の誕生日プレゼントで買ってもらったピアノを奏でながら両親の帰りを待っていた。
2人とも仕事が大変で、料理が趣味だった私が2人の負担を減らすためにと、自分が夕飯を作ることが日常になっていた。
両親とは仕事が忙しくてなかなか遊んだり出来なかったけれど、2人が休みの日には一緒に出かけていて、寂しい環境にならないように配慮してくれていた。
その日はいつもよりも帰りが遅かった。
プルルル…プルルル…。
リビングに電話の音が鳴り響いた。
お父さんかもしれないという期待を持ち、歌を口ずさみながら受話器を手にした。
ガチャ…。
「もしもし。」
「もしもし、?」
受話器から聞こえたのは、父でも母でもない声だった。
「小杉小百合ちゃんで間違いないかな?」
「はい、、どちら様ですか、?お父さんとお母さんなら今は居ないですよ。 」
「うん、そうだね。」
男の人の悲しげな声に少し戸惑いながら、話を聞く。
「私は警察です。 」
警察という言葉に少し驚いたが、すぐになぜ警察が電話をしてきたのかという疑問が浮かぶ。
「小百合ちゃん、よく聞いてね。」
「……、 はい、 」
「ご両親が、先程交通事故に遭い、死亡が確認されました、」
「…、……え、 、?」
突然の報告に、戸惑う。
小百合が戸惑っている間も、警察は話を続ける。
「今、親戚の人に声を掛けたから、家に来てもらって、現場まで来てね。」
「は、い…、 」
ガチャ…。
電話が切られてすぐ、膝から崩れ落ちた。
先程用意した丁寧にテーブルに並べてある夕ご飯を見ると、より事実が受け止められなかった。
小学二年生、8歳には、とても受け止めき
れない事だった。
涙が頬を伝っていった。
1人、暗くなってゆく電気のついていない家の中で、震えて、泣いた。
少しして、せっかく作ったご飯なので食べようと思い、席に着いた。だが、食事はのどを通らなかった。
とてもむしゃくしゃして、きれいに並べられた皿たちを床に勢いよく落とした。
食器がこすれあう音、割れる音。
破片に触れて血が出た手のひら。
両親が死んだという事実。
全てに腹が立って、思い切り叫んだ。
泣きじゃくり、叫び、皿を割り。
相当大きな音が立っていたのだろう。近所のおばさんが、家の前まで来た。
「ちょっと、?すごい音したけど大丈夫?!小百合ちゃん?!」
「おばさん…。 」
いつも仕事でいないからと両親は近所の人達に伝え、何かあった時にはよろしく、と言っていた。
だから、駆けつけてくれたのだろう。
「入るわよ〜?!」
足音がだんだんと近づいてくると、おばさんの姿が見えた。目の前の光景に、立ち尽くしていた。おばさんははっとして、すぐに声をかけてくれた。
「小百合ちゃんッ?!!」
「………、おば、さん…ッ…」
「どうしたの、これ、?! 」
「……、 お父さんとお母さんが…。交通事故で死んだって………、、。 」
私は再び、泣き出した。
あの日が懐かし い。 あの日からちょうど、今日で4年が経つ。小学6年生、12歳。
1人、キッチンで1人分の食事を作り、急いで食べて準備を済ませ、家を出る。
学校に着く。また、今日も始まる。
ガラララ…。
「あ、小杉さんおはようございます。」
「、おはようございます。」
私が入った瞬間、クラスメイトがこっちを見てくる。ヒソヒソと陰口を言っている人も居る。
先生達は私の事情を知っている。
2年生のころのクラスメイトで知っている人もいる。
家事をしているため、毎回遅れて学校に着く。家事なんか朝早く起きれば出来るだろうと思う人もいるだろうけれど、4年生の時に学校で倒れてしまい、病院に行ったら起きるのは7時以降にしなさいと言われた。
あの後親戚の人は来たけれど、結局は自分の子供が優先で、生活費を払ってくれているだけだ。
「ねぇねぇ、小杉さん。 」
「………何、?」
いつもは話しかけられもしないのに、誰だろうと思い、顔を見たら、見知らない男の子だった。
「こら、斎森さん座って。休み時間にしなさい。」
「はーい。」
「小杉さん、この子は斎森直哉くん。 今日転校してきたから、仲良くしてあげてね。」
「はい。」
転校生…。どうせ、興味を持たれない。
今のは、きっと気まぐれだ。
コメント
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え!九宮さんすごい文才、、!アドバイスなんかして失礼しました🙇♀️続き待ってます☺️