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朝靄に包まれた平原。
血と鉄の匂いが立ち込め、戦場には無数の兵士たちが集結していた。
「帝国軍の先陣は向こうだ……」
リオが剣を握りしめ、険しい表情で告げる。
「……これが本当の戦いか」
ミラも弓を背に構え、静かに頷く。
「逃げられない……覚悟を決める時ね」
ユウは剣を肩に担ぎ、空を仰ぐ。
(ここまで来たか……前世では、世界の戦乱が収まったタイミングで俺は死んだ)
胸に、かつての願いが蘇る。
「普通に寿命を全うする……ただそれだけでよかったはずなのに」
しかし今、手には力がある。
(ならば、この力で世界を終わらせる……守るべきものを守るために)
最初の衝突。帝国軍の先鋒部隊が突撃してくる。
リオが叫ぶ。
「ユウ、援護を頼む!」
レオンは盾を構え、仲間の前衛を守る。
ミラが矢を放ち、敵の視線を散らす。
ユウは剣を抜き、静かに呼吸を整えた。
(剣は力だけじゃない。心を映すもの。今、仲間と一つになる)
鋭い斬撃が次々と炸裂し、敵の隊列を切り裂く。
「――《疾風・連撃》!」
一撃一撃が無駄なく、精密に、仲間と連動している。
戦場での四人の動きは、まるで一つの生命のようだった。
戦いが激化する中、巨大な戦鎧を纏った帝国軍の精鋭──《黒鎧の剣士》が現れる。
「我が剣を止められる者など、この世には存在せぬ!」
叫び声と共に突進してきた。
リオが前に出て応戦するも、一瞬で吹き飛ばされる。
「くっ……!」
レオンは盾で防ぐが、恐怖が走る。
ミラの矢も届かない距離。
ユウは冷静に剣を握り直す。
(力で押し切るだけではない……精神の剣、剣の道が問われている)
黒鎧の剣士との一騎打ち。
「力だけで世界を守れると思うか?」
黒鎧の剣士の声が響く。
「剣とは何のために振るうのか?」
ユウは剣を構え、目を閉じた。
(守るべきもの……仲間、民、世界……
そして、過去の自分の願い……ただ寿命を全うしたかった俺の想い)
剣が光を帯び、意識が研ぎ澄まされる。
「――《無想・剣聖流・極意》!」
一撃一撃が力だけでなく、心の深さを映す斬撃となる。
黒鎧の剣士も応戦するが、ユウの精神の剣に圧倒され、次第に防戦一方となった。
戦いの中で、ユウは仲間たちを守るために動く。
突如現れた飛来弾や不意の突撃も、ユウの剣技で的確に阻止。
ユウは心の中で呟く。
(力を持つ者の責任……俺がこの世界に生まれた意味は、ただ戦うことではない)
彼の剣は敵を斬るだけでなく、仲間を護り、戦乱を終わらせるための道となる。
数十秒の静寂の後、ユウは黒鎧の剣士の剣を粉砕し、喉元に刃を突きつけた。
「これが……剣の極みだ」
黒鎧の剣士は膝をつき、静かに頷く。
「……貴様が……本物の剣王か……」
その瞬間、戦場の空気が変わった。
各地で戦う兵士たちの士気が揺らぎ、帝国軍は混乱し始める。
ユウの剣の力、そして精神の力は、戦乱の世を終わらせる象徴となった。
戦が終わり、平原は静寂に包まれた。
仲間たちは疲弊しつつも笑顔を見せる。
ユウは剣を地面に突き、深く息を吐いた。
(剣士の道を極めた……
でも、いつかまた普通に寿命を全うしたい……)
ユウは小さな木箱を取り出し、「剣を極めた者」という本を記す。
過去の自分の願いと、今の力を繋ぐために。
その時、胸に悪寒が走った。
(……前世と同じ感覚……)
ユウは剣を振り、鋭い叫びと共に前方を斬った瞬間、目の前に白い羽が落ちてきた。
「落ちてきた……?」
次の瞬間、頭が地面にぶつかり、意識が遠のく。
そして、再び、ユウは転生したのだった。