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あれから『森上瑛子を殺した』なんて連絡が届いた。
あいつ大丈夫だったのか。なんとなく心配だったけど、心配して損した。
なんだかトントン拍子で進んでいくけど、今俺らは絶賛警察に追われ中。まだ身元は特定されていない。だが、失踪している、というか俺たちが殺した人達の共通点に気付かれたら……。
「おい!」
「っわ、大きい声出すなよ」
「お前が話聞いてないんだろ?俺に注意すんじゃねえ」
「はいはい、それで?」
「本当に話聞いてないんだな……」
「次は七井奏楽を殺そうと思う」
七井奏楽は栄養学部であり、決して陽キャというわけではない。だけど昔から容姿端麗、真面目。頼まれたことは断れないような性格で、そこそこに友達はいる。
東本と付き合っていた時もずっと一途であまり干渉もしてこないので、東本からしたら面倒臭くなくて居心地がよかったとさえ思っていた。
七井奏楽はその日、友達と図書館で勉強をしていた。
「そろそろ帰らない?」
「えー、でもここわからないんだよね」
「そっ…か。じゃあ教えるね」
本当は今日早く帰りたい。そのくらい家で調べればどうにでもなるのに。なんて言えたらいいんだろうけど、嫌われたくない私は笑顔で『いいよ』と返すしか道は無い。
「奏楽すごーい!天才じゃん!」
「あはは…そんなことないよ…!」
「てかもう疲れたー、はやく帰ろ?」
「うん……そうだね」
だからさっきそれ私言ったじゃん。なんで私が遅れたみたいな言い方するわけ?――心の中で愚痴を呟く。
「奏楽ってほんと天才だし優等生だし、負の打ちどころ がないよね」
「そうかなぁ。私はまだまだだよ。」
そりゃあずっと君よりも努力してきたから。
鈍臭い私が唯一できることだったから。
「じゃわたしこっちだから、またね」
「うん、またね」
笑顔を浮かべて手をふる。
ポケットから単語帳を取りだして、また足を動かし始めた。次のテストも80…できれば90点を狙いたい。
数学や理科は得意だ。公式だけ覚えてしまえば計算でどうにかできるから。反対に国語とか社会なんかは覚えることも多くて嫌になってしまう。だから当下校に単語帳を使って暗記するしかない。
前を見ると黒いパーカーでフードを深く被った人があるいてくる。え、こんな怪しいことある?
なんとなく怖いな、と思いその人から少し離れたところへ歩き出す。単語帳に夢中で気づいてませんって感じにして逃げよう。
その人とすれ違い安心した。なんだ怪しい格好した人だったんだ。もっと普通の服で来てよ。怖いな。
首にギュッと力が込められた。もちろん私の手ではない。なんで、誰?なんで私が…?酸素の不足と混乱でまともに思考が働かない。喉が渇くような感覚に身体が熱くなる。でも身体の表面はとても寒い。
だめだ、私死ぬんだ。
あーぁ、私どこで間違えたのかな。
みんな私を天才だから教えてって言う。でも私は天才なんかじゃない。努力して手に入れたものなのに『天才』なんて言葉で済まされて、親からも期待されて。
いつしか努力した私を褒めてくれる人はいなくなった。
嫌われたくない、そう思うほど作り笑顔は上手になる。でもそういえば、東元くんの前では素でいれたな。全然私とは違うタイプだけど、努力を認めてくれた。
結局最後まで私は都合のいい天才のまま死んでいくんだ。
酸素がない。抵抗する力なんてあるけもなく、自分の人生を振り返ってた。後悔ばかり出て来る。
私がなにをしたって言うんだろう。脳がおかしくなるような感覚。自分を嘲笑うように口角を上げて、私は意識と人生を捨てた。