コメント
2件
待ってました~!shkknの栄養価が高すぎる~!続き楽しみにしてます!!
※マフィアパロ
※なんでも許せる方向け
kn視点
やっぱり、人生は平等じゃない。
俺は齢17にしてやっとそれを悟った。
早くないし、むしろ気付くのが遅すぎたのかもしれない。
…いや、昔から気づいてはいた。
気づいていたけど、目の前の事実に知らないフリを続けていたのだ。
誰もが高校生という華やかな肩書きを背負って、高校に通っている間、俺は昼夜問わず、社会人に混じって働いていた。
俺の父親は、俺が幼い頃に蒸発した。理由は分からない。
気になって母親に理由を聞いても、買ったばかりの皿を投げつけられて終わりだった。
父親が姿を消したあと、母親はどんどん精神的に追い詰められていった。
父親と顔が似ている俺が嫌なのか、機嫌が悪ければ物を投げつけられたし機嫌が悪くなくとも、俺が同じ空間にいるだけで俺の存在を詰られ、罵倒された。
『アンタなんか産まなきゃよかった。』
気がすむまで俺を殴り、罵倒したあと、母は決まってそう言った。
パチンコへと足を運ぶ母の背中を見ながら、母が暴れた後の部屋の片付けをするのが俺の日課だった。
高校に行く金なんてなかった。
行きたい高校はあったし、学びたいこともたくさんあったけど、
『高校に行きたい』なんて言えるわけなかった。
早くこの家を出たかった。
一刻も早く、『俺の人生』を手に入れたかった。
通学中の華やかな制服に身を包む同い年の子すれ違うたび、胸が張り裂けそうな気持ちになった。
みんなが同い年の子と話す中、俺は母に怒鳴られる。
みんなが学校終わりにファミレスでご飯を食べる中、俺は酔っぱらい相手に接客をする。
なんで。
なんで俺ばっかりこんな思いをしなくちゃいけないの。
悪いことなんてしてないし、贅沢も言ってない。
ただ、みんなと同じ生活がしたいだけなのに。
生まれた環境が悪かっただけで、なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだ。
……やっぱり、人生は平等じゃない。
「お疲れ様です。」
時計の針が22時を回った頃。
居酒屋のバイトを上がって、暗い帰路を歩く。
街頭ひとつない暗い夜道を歩きながら、明日の予定を思い出す。
午前はコンビニでバイトして、午後はまた居酒屋バイト…
「はぁ…」
働き詰めの毎日だ。休みなんてない。
俺が必死に稼いだ金は、全て母によってパチンコで溶かされる。
俺の手元に残る金なんて一円もない。
こんな生活、一体いつまで続けるんだろうか。
「もしかしたら…一生このまま……?」
近くで、水が流れる音が聞こえる。
…川だ。よく近所の子供が水切りをして遊んでいる川。
昼間の雰囲気とは違い、夜の川の水は黒く、ずっと見ていると吸い込まれてしまいそうな感覚がした。
一生あの母に縛られるのだったら…いっそのこと……
そんなことを考えたとき。
「なぁ。」
「…え?」
背後から声がした。
驚いて振り返ると、俺より少し背が低い緑髪の男が立っていた。
辺りが暗いせいで、顔はほとんど見えない。
「お前、◯◯のガキだよな?」
「え…」
男の口から母親の名前が出てきた。
知り合いの男かと思ったが、聞いたことがない声だった。
びっくりして固まる俺を無視して、男はポケットからスマホを取り出して、何やら電話をかけ始めた。
「アイツのガキ見つけた。」
「知らん。高校生くらいじゃねえの?」
「…分かった。」
手短にそう話すと、男はすぐに電話を切って此方を向いた。
「あとちょっとで迎え来るから。」
「…え?」
男の口から出た言葉に首を傾げる。
迎え…迎えって…??
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「あ?」
俺がそういうと、男は不機嫌そうな声を出した。
三白眼の鋭い目に、肩がビクッと跳ねる。
「あ、あなた誰なんですか…!?」
「…別に名乗るようなもんじゃねえよ。」
震える声で問うと、男は俺の質問を軽く流した。
「何言って…」
「…お前の母親が俺に借金してんの知ってるか?」
「…借金?」
なに、それ。
俺のバイト代使って生活してんのに…借金まで…?
「それも数十万どころの騒ぎじゃねえ。
何百万も俺から金借りてんのに、テメェの母親ったら俺の催促を何度も無視しやがる。」
男がニヤリと口角を上げる。
男の口から見えた鋭い歯に、背中に嫌な汗が流れた。
「だから、お前を誘拐しにきた。」
「ゆう、かい…?」
何言って…
ちょうどそのとき。
俺と男の近くに黒塗りの車が止まった。
「シャークん、アイツの子供見つかったってほんと?」
止まった車から降りてきたのは、背の高いふわふわとした喋り方をした男。
「おー、こいつ。」
『シャークん』と呼ばれた男は、俺を指差しそう答える
「え、マジじゃん。」
「…!な、なに…?」
背の高い男が俺の顔を覗き込む。
「全然お母さんとは似てないんだね。もしかしてお父さん似?」
ニヤニヤと口元を緩ませながらそういう男に、気味が悪くなって一歩後ろに下がる。
……逃げないと。逃げないとヤバい。
本能的にそう思って、走り出そうとしたとき。
ガシッ
『シャークん』に手首を掴まれた。
振り払おうとしてもびくともしない。
その華奢な手足のどこに隠されているか分からない強い力で腕を掴まれて、痛みに顔を顰める。
「なに勝手に逃げようとしてんの?」
「や…、、」
「君には僕達についてきてもらうからね〜?」
掴まれた力の強さに、もう逃げられないのだと悟った。
男に手を引かれ、車の後部座席に乗せられる。
夢なら早く覚めてほしかった。
「んん……?…」
重たい瞼を開けると、見知らぬ天井が目に入った。
上半身だけを起こして周りを見ると、窓も家具もない薄暗い部屋が広がっていた。
硬い床で寝ていたせいか、体の節々が痛む。
(おれ…なにして…)
きょろきょろと周りを見渡しながら、さっきのことを思い出す。
たしか『シャークん』と呼ばれていた男に連れ去られて…そのあと……?
「ここ…どこ…?」
車に乗ってからの記憶がない。
部屋は薄暗く照らす光は天井から吊り下げられた電球だけ。
ここは一体どこなのだろうか。
ガチャ
そんなことを考えていると、唯一部屋についていた黒く古い扉が音を立てて開いた。
「ッ…」
扉から顔を覗かせた男に息を飲む。
「あ、起きてんじゃん。」
緑髪のギザ歯の男…『シャークん』と呼ばれた男は俺を見てそう言った。
コツコツと音を立てて近づいてくる男に、思わず後ずさる。
「そんなにビビんなくてもいいのに。」
そんな俺を見たシャークんがクックッと喉を鳴らして笑う。
「……ここ、どこ…?」
「地下室。…まぁ、しばらくはお前の家になるけど。」
「…え?」
俺の家…?
「ど、どういうこと…?」
俺が問うと、シャークんは俺の正面に座った。
「お前の母親の借金を返してもらわないといけねぇから。ここはお前を監禁するためのトクベツの部屋。」
「えッ…」
「地下だから窓もないし、そこの扉も外側からロックをかけれるようになってるから、そう簡単には逃げ出せない。」
シャークんの言葉を聞いて再度部屋を見ると、さっきまで何も感じなかったこの部屋が、凄く怖く感じた。
「…俺をどうする気?」
震える声でそういうと、シャークんがこちらを見た。
「特にはなんもしねぇよ。」
「なにも…?」
「ただ、お前の母親から連絡がくるまでここに居てもらうけどな。」
「……連絡なら多分こないよ。」
「は?」
俺の言葉に、シャークんが驚いたように目を見開いた。
「…なんで?」
「あの人、俺のこと好きじゃないから。」
「…」
多分シャークんは、母親が俺を心配して連絡をすると思ってるだろうけどそんなことはない。
日頃から俺を邪魔だと罵り殴った母のことだ。
俺の心配なんて、天地がひっくり返ってもしないだろう。
「むしろ、俺がいないくなって清々してんじゃないの。」
「…」
「だから、俺を攫っても意味ないよ。」
「…ふぅん。」
俺が話し終えると、座って俺の話を聞いていたシャークんがゆっくりとこちらに歩いてきた。
「勘違いしてるみたいだから言うけど、」
「…ッ!」
グイッと顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。
俺を見下ろす、温度のない緑色の瞳と目が合った。
「俺はお前の母親の事情なんてどうでもいい。」
「ッ…」
「俺らはただ金を返してほしいだけなんだわ。」
顎を掴む手にさらに力がこもる。
「お前の母親が返せないんだったらお前に返してもらう。」
「は…?」
シャークんの口から出た言葉に耳を疑った。
「お、俺が返すって…そんなのどうやって…」
「方法ならいくらでもある。ただ、しばらくは太陽の下で生活できなくなるかもな。」
「ッ…」
そんな…。
何百万もの大金を俺が…?
「…ははッ。いい顔すんじゃん。」
目の前の男が、口角を上げて笑う。
上がった口角の隙間からギザギザに尖った歯が見えた。
顎を掴んでいた手が上へとあがり、俺の頬を包み込む。
「お前いい顔してるし、『そっち系』の仕事もできんじゃねぇの?」
「え…?」
シャークんの言葉に声が震える。
「風俗とかデリとか、夜職なら普通に稼ぐより多く稼げるし。」
聞こえてきた単語にひゅっと息を呑む。
ただでさえ今の生活で精一杯だったのに、今度は水商売…?
どれだけ俺の精神を削れば気がすむの。
「あッ、あ、、や、ッ、やだッ、、」
怖い。
サラリと俺に身体を売ることを推奨する目の前の男に本格的に恐怖を感じた。
逃げ出したくなるこの状況に、瞳に涙を溜めながらふるふる、と頭を振る。
「…お前に拒否権があると思ってんの?」
でも聞こえてきたのはシャークんの突き放すような冷たい声。
誰もいない地下室で、味方になってくれる人なんていないんだと悟った。
「選べ。」
「ッ…」
「身体を売って金を稼ぐか、薄暗い地下で何十年もかけて金を稼ぐか。」
低く、地を這うような声に呼吸が止まる。
バイト先の店長に怒られるときとか、母に怒鳴られるときとは比べ物にならない、生きてきて今まで感じたことのないほどの強い威圧感。
声を荒げるわけでもないのに、全身から伝わってくる圧に、蛇に睨まれた蛙みたいに身動きがとれなくなった。
シャークんから目を逸らすことも許されず、体がガタガタと音を立てて震える。
「…か、から、だ、、うる、、」
…何十年もかけてまた働くなんて、そんなの御免だった。
蚊の鳴く声のように小さく震えた声が薄暗い地下室に響いたとき、シャークんは今までの威圧感が嘘かのようにニッコリと笑った。
その笑顔を見ると、今まで必死に保っていた俺の中の何かが音を立てて崩れていくような感覚がした。
……もう、いいか。
どうせ失うものなんてないんだし。
俺に普通の人生を送ることは許されないんだ。
(もう、どうでもいい。)
「…いいね、その顔。消費者ウケよさそう。」
「…」
ヘラヘラと笑いながらいう目の前の男に、反論する気力すら湧かなかった。
「じゃあ早速『準備』してくか。」
「じゅんび…?」
「流石に最初っから風俗送りにするなんてことはしねぇよ。」
「…?」
「お前、男との経験は?」
「ない…」
「なら、まずその行為を経験してもらわねぇと。」
シャークんに手を引かれて、無理矢理立たされる。
「お前、名前は?」
「……き、んとき。」
「…じゃあきんとき、ベッド行こっか。」
俺の気持ちとは対照に、シャークんは楽しそうに笑った。
あとがき。
Xで言っていたマフィアパロ出してみました。
続き出します。