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『バレンタインまであと0日。』
tg視点
2月14日。
いつもより少しだけ空が明るくて、校舎の窓に反射する光がやけに眩しい朝だった。
俺は下駄箱の前で、何度もスマホを確認する。
通知は来ない。
でも、来ないことすら、なぜか嬉しかった。
「……遅い」
そう呟いた瞬間、背後から聞き慣れた足音。
「ちぐ」
振り返ると、そこにはぷりっつ。
いつも通り落ち着いてて、余裕があって、でも今日は――ほんの少しだけ、緊張してる。
「おはよ」
「おはよ。……今日、寒くね?」
「手、冷たい?」
「……まあな」
そう言いながら、ぷりちゃんは何も言わずに俺の手を取る。
理由なんて聞かなくてもわかる。
こういうところがずるい。大人で、スマートで、俺以外どうでもいい顔をするところ。
「はい」
俺は、少し照れながら小さな袋を差し出す。
「義理?」
「……どう思う?」
ぷりちゃんは一瞬だけ黙って、ふっと笑った。
「俺にそれ聞く?」
受け取ったチョコを、ポケットにしまう仕草がやたら丁寧で。
まるで大事なものだって、最初から決めてたみたいで。
「ちぐ」
名前を呼ばれて、胸がぎゅっとなる。
「今日さ、ちゃんと話したい」
屋上。
風が冷たくて、でも太陽はやさしい。
言葉を選ぶみたいに、ぷりちゃんは一度空を見る。
「俺、余裕あるふりしてたけどさ」
俺を見る目は、まっすぐで。
「ずっと、ちぐだけだった」
その一言で、全部だった。
派手な告白も、ドラマみたいな台詞もない。
でも、ちゃんと“青春”だった。
「……俺も」
俺が笑うと、ぷりちゃんは少し安心した顔で、でもすぐにいつもの表情に戻る。
「じゃあ、決まりだな」
「なにが?」
「俺の隣。もう空けない」
それだけ言って、照れ隠しみたいに前髪を直すのが可笑しくて、愛おしくて。
2人で笑った。
恋は、劇的じゃなくていい。
言葉が多くなくても、特別な演出がなくてもいい。
同じ時間を待って、
同じ気持ちにたどり着いて、
同じ日に、同じ想いを手に入れられたなら。
この恋は、確かに2月14日に完結した。
でもそれは終わりじゃなくて、
これから何気ない日常を一緒に過ごすための、
いちばん甘いスタートラインだった。
チョコより甘くて、
春より少し早い、
ふたりだけの青春の続きが、静かに始まる。
〝 この恋は2月14日に、完結する。〟
ねえ、あなたは覚えてる?
渡す前、
ポケットの中で何度も指先が触れた、
あの小さな箱の感触。
「今さら」って思いながら、
「それでも」って気持ちが勝った瞬間。
ちぐさが勇気を出したのも、
ぷりっつが静かに待っていたのも、
特別な才能じゃない。
ただ、
好きな人に、好きって伝えたかっただけ。
もしあの日、
渡さなかったらどうなってたと思う?
もし一歩引いて、
笑ってごまかしていたら、
この恋は、ここまで来られたかな。
言葉は少なくても、
視線が合うだけで、
答えがわかってしまう関係って、
あなたにもあった?
この恋は2月14日に、完結する。
でも――
あなたの中の恋は、
ちゃんと進んでる?
伝えたい人は、
もう決まってる?
それともまだ、
チョコみたいに溶ける前の気持ちを、
胸の奥にしまったまま?
この物語を閉じたあと、
少しだけ、
大切な誰かの顔を思い出してくれたら。
それがきっと、
ちぐさとぷりっつがここにいた理由。
あなたの恋は、
いつ、完結するんだろうね。
「ねえ。今年も、俺にくれるの?」
少し低くなった声が笑う。
「……当たり前じゃん」
赤いリボン。
溶けたチョコの甘い匂い。
指先が触れて、離れない。
「じゃあ、今年も俺の勝ちやな」
「なにそれ」
「だって、最初から決まってたやろ」
静かなキッチン。
重なる影。
――この恋は2月14日に、完結する。
そう思ってたのに。
どうやらこの恋、
毎年ちゃんと、更新されてるらしい。
来年も。
その次も。
たぶん、ずっと。
コメント
6件
ちぐ!おめでと!ずっともう口角上がりっぱなしだったよー! ((僕は今日告って成功したから仲間だね!))
うわああ !!!! 残り0きたああ !!!! 言葉の表現美し過ぎる !!!!! 付き合うとかそういう直接的なあれじゃなくて 『 隣 』って表す感じらぶです !!!! なんか心に刺さるものがありました ... !!!!
可愛い!なんか儚い! 物語の途中にあるprtgじゃ無いセリフっていうのかな?がめちゃくちゃいい言葉すぎて、二重で感動してた…(言葉変でごめんね🙇🏻)