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「 なんでいつもそんな苦しそうで、寂しそうで、悲しそうな顔をしてるか … をさ。 」
「 … え、 そんな 、 顔してる ? 」
ポツリとそう呟き、自分の顔を触る。
自分なりに表情は取り繕っていた筈だった。ふとミナトのことを思い出しても、別の事を考えるようにして、気を紛らわして…とにかく表情は取り繕う事を頑張っていた。兄さん達を心配させない為にも。
「 …これはハヤト兄さんとよ〜く話し合ってもらわないとね… 」
「 え゛っ…そんな… 」
「 『 え゛っ 』じゃない、ほら行くよ 」
抵抗する間もなく、トウヤに半ば強引に腕を引っ張られ、ハヤト兄さんの部屋へ向かった。
「 __ …ハヤト兄さん、入るよ。 」
目の前にはハヤト兄さんの部屋のドア。
トウヤ兄さんは僕の腕を掴んだまま、三回ほどノックし、そう声を掛けた。
中から入って良い、という旨の声が掛けられ、トウヤ兄さんはドアを開き、僕の腕を引っ張りながら中へ入っていく。
「 トウヤにハル…一体どうしました?ミナトの面倒は… 」
「 ミナトは今一人で遊んでると思う、ちょっとハルが悩んでる事があるらしくてさ。 」
「 ハルの事…についてですか、」
ふむ、と僕の顔を見て。
「 そう、僕はミナトの面倒を見てくるから、…ハル、一人で全部言えるよね? 」
「 へ、!?えっ、いや… 」
「 じゃ、頑張って 」
無理、僕一人でハヤト兄さんに話す、なんて無理だよ、なんてそう言う前に部屋から出て言ってしまった。
「 …との事ですが… ハル、話せますか? 」
「 … 」
こちらを見つめてくるその視線が痛い。耐えきれず目を逸らす。
「 ハルのペースで良いですから…話そうと思いたったら話してくださいね 」
「 …うん、 」
「 ドアの前でずっと話すのもあれですし、中に入ってゆっくり話しましょっか 」
と言って、僕の方を見て微笑んだ。
ハヤト兄さんのその顔を見て、緊張の糸が少し緩む。さっきまで重石のように重かった足が、自然と動いた。ハヤト兄さんの部屋の奥に一歩、また一歩と歩みを進めた。
「 …ごめん、ハヤト兄さん、 」
「 何故謝るんです? 」
ハヤト兄さんはゆっくりと椅子に腰かけながらそう首を傾げた。
「 そ…その…やっぱ、僕… 」
その先が言えない。喉の奥に突っかかったまま上手く出てこない。
やっと僕の口から出てきた音はほぼ空気だった。
「 …ミナト、のこと…なんだけど… 」
「 ほう、ミナト、 」
真っ直ぐで真剣な視線をこちらに向けながら、相槌を打つ。
「 …えと、簡単に言えば、変な妄想をしちゃう、っていうか…きぼう、を抱いちゃうというかぁ、 」
「 というと… 」
「 …ミナトが、飼い猫のミナトの転生体、だったりしない……かなぁ、なんて… 」
「 時々、ミナトと、飼い猫だったミナトの姿をかさねて、…それで、どこか、寂しくなっちゃって 」
途切れ途切れになりながらそう言い切る。
ハヤト兄さんは顔を俯かせ、黙ってしまった。
困惑するのも無理はない。笑われる覚悟でもいた。だって、自分でもおかしいことを言っていると思っているから。
本当は分かってる。絶対に違うって思ってる。思ってるけど、どうしても期待をしてしまう。
「 …なる、ほど、… 」
「 ごめん、おかしなこと言っ、ちゃって、 」
「 いえ…分かりました、…すいません、気付けなくて 」
「 なんでハヤト兄さんが謝るの、 」
「 兄として、寄り添えてなかったな、と 」
そう言われて、なんて声をかけていいのか分からず口を噤んだ。
少しの間沈黙が流れた後、それまで顔を合わせてなかったハヤト兄さんは、急に顔を上げて、こちらを見た。
「 ハル 」
そう芯のある真っ直ぐな声で僕の名前を呼べば、僕の体を優しく、ぎゅ、っと抱き締めた。
そして続けて
「 ハルのその気持ち、私にも分けてください… 」