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「ストップ。司くん、今のシーンは… 」
類の真剣な声が響く。
「なるほど…確かにそのほうがよくなりそうだな!」
オレはいつものように話す。ん?なんだか変な言い回しだって?
ははっ、そうだよ。オレには『言えないくて癒えないこと』がある。
「…くん…かさくん」
と、えむの声が聞こえた。
「あぁ、えむか…すまんな少しぼーっとしてしまった」
「急に黙り込むからどうしたのかと思ったよ…」
そう寧々が言った。迷惑はかけていられない。ただでさえ『不良品』なのだから。
「ごめんね、ちょっと止めてくれないかい?」
そう言い類は一度、シーンを止める。
「司くん、このシーンは冷静さも保たないといけない。
あまり怒りに満ちた演技ではいけないよ?」
類は真剣な表情でこちらを見ている。あぁ、またやってしまった。また失敗してしまったんだ。
「そ、そうだな類。少し改善してみる…」
「よし、これで今日の練習は終わりだね」
「みんなお疲れ様〜っ!」
「今日の練習はなかなかハードだったね…」
「っ…」
「司くん、どうしたの?なんだかず〜んってなってるよ?」
「む…?そんなことはないぞ?」
やはりえむは勘がいい。だが、こんなことがバレてしまったら…考えるだけでも嫌になってくる。
「確かに…今日 の司、なんか変だったよ?」
「寧々たちもそう思っていたんだね。実は僕もなんだ…」
まさか全員に勘づかれていたとは…あぁもう終わりじゃないか。
「司くん、何か悩んでいるのかい?もしよかったら相談に…」
ダンッ
「痛っ…司くん!?」
「あ…ぁ」
つい、パニックになって類を押し倒してしまった。もうこんなことしたらなおさら嫌われる…
それに予想通りの回答だった。あんなこと軽々しく言わないでくれ。
「もうオレを探るのはやめてくれっ…!」
「軽々しく…軽々しく『相談に乗るから話して』なんて言うんじゃないっ…!」
「オレのこの傷はもう癒えないんだ!!」
「わかったならもう構うな」
タッタッタッ
「類くん、大丈夫!? 」
「あぁ、問題ないよ」
「にしても司、どうしちゃったんだろう…あんな風になるってことはやっぱり…
「相当、疲れてしまったのだろうね…」
「ごめんなさいっ…ごめん、なさい…っ」
一体、何をしてるんだオレは。何がしたいんだ…何が言いたいんだオレは…!!
「…着いた」
無我夢中で走り続けているといつの間にか自宅へ着いていた。
ガチャッ
「ただいま…」
「…そうか、今日はオレ1人だったな」
父さんと母さんは仕事、咲希は一歌たちとお泊まり会…だったな。
その為、今日はオレ1人しか 居ない。
「あはは、みんな僕のことなんてどうでもよかったんだ」
僕…?おかしいな…オレはオレなはずだぞ?とうとう『?』も壊れてしまったんだな…
「紙はどこにあったっけ…」
「あ、あった」
待て…なぜ今、紙を?まぁいいか…
「うん!自信作だ!」
「…!あれ、オレは今、何を…」
おかしなことに先程の記憶がすっぽり抜けてしまっている。
「紙…?」
目の前には1枚の紙があった。少し思い出した気がする。なぜかオレは紙に何かを書いたんだ。
無意識なのだろうか…
「…は?」
紙に書いてある内容にオレは驚いた。『この世に必要とされなかった僕が消えて皆、喜んだ。
そんなハッピーエンドになるようにしたいんだ』と記されていた。 その字は明らかに オレの
では ない。
「ちがっ…そんなこと…」
「っ!?…疲れているのか…?」
「ならもう、風呂に入って眠るとするか…時間も遅いしな…」
「そういえば、明日もオレ1人か…」
そんな独り言を呟きながら洗面所へ向かった。
翌日、今日も練習の為にフェニックスワンダーランドへ向かった。昨日はあんなひどいことを
言ってしまったが許してくれるのだろうか…
「許してくれないよな…」
「あっ、司く〜んっ!」
「類、司来たよ」
「これで全員揃ったね」
反応はいつも通りか…どうせ、いつも通りの対応をして誤魔化してるだけなんだろ。きっと。
「あ、あのっ…」
「どうかしたのかい?司くん」
「昨日はごめっ…」
「ぅぐ…」
「グスッ…」
「司!?」
どうして涙が出てくるのだろう…ちゃんと、謝らないと…っ
「僕っ…僕、あんなひどいこと言って…」
「どうして怒らないのさっ… !?」
「いつも足手まといになって…」
「いらないだろ、こんな座長…」
「ごめん…こんな情けない座長でっ…」
「周りの人たちがっ…イルミネーションだと考えてみてよ…」
「周りのみんなは才能を光らせて綺麗に輝いている…っ」
「でもっ、僕は…輝けていないんだっ…光らないんだ…」
「得意なことや才能、それが電球だとすると得意なことを探して何度も電球を変えても…」
「光らない不良品なんだっ…!!」
「そんな僕でもいいのかよ…」
言い切った…言いたいことは…
「そんなことないよっ…!」
「…え?」
「司くんは司くんだもん!あたしたちの凄く素敵な座長さんだからっ!」
「そうだね、僕もそう思うよ」
「それに司くんが本当に不良品かはわからないじゃないか」
「うまく接続できていない可能性もあるんじゃないかな?」
「だから司くん、光らないのは『可能性』だよ。挑戦したいことには思い切り
手を伸ばしてごらん?」
「わたしも類の言う通りだと思うんだ」
「それでも光らなかったら一緒に考えよう。わたしたちにできることなら力になるから…!」
「う、うわぁ゛ぁぁっ…!!」
「…ごめん、ひどいこと言ってっ…そしてありがとう…」
「…」
「司?」
「どうやら泣き疲れて眠ってしまったみたいだね」
「ねぇ、類くん」
「どうしたんだい?えむくん」
「さっきいつもの司くんと違かったけど、なんでだったんだろう…」
「恐らく彼自身が生んでしまったもう1人の司くんだろうね」
「てことは、司の中に蓄積していった感情とかが原因ってこと?」
「一概にそうとは言えないけれどね」
その後、司は目を覚まし練習が再開された。これからは皆、もっと夢を目指す為に手を伸ばし
続けるのだろう。
〜END〜