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「···今年は紹介したい人を連れてきたよ」
静かに滉斗のお墓の前で藤澤さんと2人、手を合わせることになるとは去年は想像もつかなかった。
「若井さん···元貴を大切に、ずっと幸せにします。だからこれからもよろしくお願いします」
「滉斗···俺、今幸せだよ。本当にありがとう。また来年も来るからね」
そう、過去を忘れるわけじゃない。
滉斗がいてくれたおかげで俺はここにいるから。
けど藤澤さんと付き合ってから変わったことがある。それは滉斗との楽しい思い出ばかりを思い出せるようになったことだ。
前はああだった、こうだったと思ってもどうしても寂しい気持ちがセットになっていたけど、あの時楽しかったな、とかすごく笑ったっけ、と楽しい気持ちで素直に思い出せるようになっていた。それは紛れもなく隣でいる藤澤さんのおかげだと思う。
「···今年も元貴と年越し蕎麦食べられるなんて嬉しいなぁ···幸せな1年だった」
「あちこち出かけられて楽しかった1年だった···来年もいっぱいお出かけしたい」
「まかせて!たくさん楽しい思い出作ろうね、来年の抱負!まずは初詣だよね、お雑煮食べて、お節食べて···」
大晦日を俺の家で過ごしながら相変わらず食べることばっかりな藤澤さんが可笑しくて笑っているとあっと言う間にカウントダウンが始まった。
···3.2.1!
ハッピーニューイヤー···!
「明けましておめでとう、今年もよろしくね」
「明けましておめでとうございます···こちらこそよろしくお願いします、涼架さん」
「えっ、名前···?」
「いいでしょ?だって恋人なんだし···ってなんで泣くの」
嬉しくて、と目を潤ませる涼架さんの側に近寄って、目を閉じる。 唇が触れてゆっくりと何度も口づけを交わしながら首に手を回す。
「もっと···」
「も、もっと?まだつきあったばっかりだよ?そういうのはもっとあと!」
慌てて身体を離す涼架さんに笑ってしまう。もう良い年の2人なのに、そんなこと言うこの人は意外と真面目だよね?滉斗。
「涼架さん、好き、大好き」
「元貴って付き合ったらそんな風になるタイプなの···?可愛すぎてやばい」
「だめだった?」
「だめじゃない、大好き!」
そう言ってぎゅうっと抱きしめられて2人で同じベッドで眠る。
滉斗、なんだか俺とっても大切にされているみたいだよ、あなたがしてくれたみたいに。
なかなかそういう事が出来るのは遠そうだけど、今はそれも楽しんでおこう。 これからたくさんの時間をまた大好きな人と過ごせるのだから。
side藤澤
付き合いだして元貴はいい意味で少し変わったようにおもう。
昔の話を色々と楽しそうに話してくれるようになって、僕に甘えてくることとが増えた。
「涼架さんの家にも泊まってみたい」
それは付き合ってから半年ぐらい経った頃。仕事帰りには食事に行ったり、週末は元貴の家に泊まりに行ったりと恋人らしく過ごしてきたけど、元貴がうちに泊まるのは初めてだ。
「別にいいけど···どしたの?」
「んー、うん、理由は行ったときに話す」
そんなわけで週末にお泊りに来た元貴のためにと僕はに寝室ベッドの隣に布団を用意していた。
「そういえば、理由って聞いてもいいの?」
ベッドに2人で座って薄暗くした部屋で聞くと元貴はこて、と頭を肩に乗せる···最近こんな風に甘えてきてくれることが本当に可愛いし、幸せだと思う。
「俺、自分の家じゃないところで寝るのが昔から苦手で、あと家に人がいると落ち着いて寝られなくて···けど昔から滉斗だけは特別で大丈夫だった。あと、涼架さんが泊まった時も、不思議と落ち着いて眠れた」
それは知らなかった、じゃあ泊まりに来たのは勇気がいったんじゃないかな、不安じゃないかなと心配になる。
「だから確かめたかったの、きっと藤澤さんとなら俺は安心して眠れるってこと····。それにね···ちょっとあの部屋では滉斗が気になるかなって」
「気になる??」
「···こういうことするのが」
言い終わらないうちに元貴はキスしてきて···その手が僕の太ももあたりを撫でる。
「ぁ、ちょ···もとき···」
「ねぇ、もう半年過ぎたんだよ···俺はもっと涼架さんを感じたい」
「···っ、いいの?僕で···」
「涼架さんじゃなきゃ、やだ」
僕だって元貴に触れたい、けど元貴の話から若井さんが初めての相手だってことはなんとなくわかっていた。
だからこそ、僕がそう簡単にそういう行為をしてもいいのか躊躇っていた。
でも、今、元貴は僕を求めてくれている···僕だけを、こんなにも。
「元貴···大好きだよ、ずっとこうしたかった」
「俺も、大好き···たくさんして」
キスをしながら元貴に触れていく。
服を脱がせて胸に唇寄せて舐めて元貴が微かな声をあげる頃にはもう熱くなったそこは濡れていた。後ろを撫でるとそこも潤っていて、準備してくれていたことがわかった。
「久しぶり···だから、少しは用意したけど···」
「うん···優しくするし、無理しないでいいからちゃんと言ってね」
指で優しく愛撫して元貴がだんだんと感じてきてくれているのを見ているだけで満たされる。
「もう、だめ···いきそう、だから···ちょうだい···涼架さん···」
「無理してない···?」
「大丈夫だから···ひとつになりたい」
僕だって元貴とひとつになりたい。
そう思ってゆっくりと体重をかけて元貴に入っていくとそこはきつくてあつくて、すごく気持ち良くてたまらなくて···少しでも元貴もよくなれるよう、さっき気持ちよさそうにしていたところに押し当てる。
「ん···っ、ぁっ、ふぁっ···」
「元貴、気持ちいいよ···きゅうってしてる···っ」
「俺も···っ、気持ちいいっ···幸せ···っ、ぁっ、あぁっ!」
「あっ···僕も···っ」
少しの間、2人とも動けずにそのまま抱き合っていた。
汗ばんでいる肌も、乱れた髪も、潤んだ瞳も、幸せそうな顔も···その全てが愛おしかった。
用意した布団は必要がなくなって、同じベッドで抱きしめたまま眠りについた。元貴が僕より先に眠ったのを見てよかった、と思いながら僕も眠りについた。
朝、隣で眠る元貴の顔を見ながらまだうとうとしながらつい頬を撫でる。
「かわいいなぁ···」
「···はずかしい、です···」
「んふふ、おはよ。ごめん起こしちゃった」
「おはようございます···昨日、ちゃんと気持ちよかったですか···?」
朝からなんてこと聞いてくるんだろう、この子は。
「すっごく気持ちよかったよ、それに幸せだった。元貴すごく可愛かったし」
「良かった···俺、気持ちよすぎてなんにも考えられなくて···ちゃんとできてたかなって···」
「嬉しいこと言ってくれるよね···僕は元貴とキスしてるだけでもめちゃくちゃ気持ちいいんだから···ちゃんと、とか思わなくていいの」
「でも涼架さん大学生の時、男からも女からもモテるって高野が言ってたし···それに会社でも人気だから···その、経験とかも多そうだし···」
もごもごとだんだん声が小さくなっていく元貴の頬は逆に赤くなっていく。
「まぁ···若い時はそれなりに···けどここ何年もそういう相手はいなかったし、今は元貴のことが大好きで···ってもしかして、ヤキモチ···?」
「まぁ、そんなところ···」
また新しい可愛いところを見つけてしまって更に愛おしくなる。
むぎゅ、と頬を手で挟むと軽くキスをしてやった。
「今は、っていうかもう何年も元貴のことが気になってて大好きなんだから···不安に思うことなんてないよ、けどもし何かあったらすぐに言ってよね。ヤキモチも···そんなところも可愛いんだから」
元貴は満足そうな顔で笑って僕に抱きついた。 これから先もこの笑顔が見られるようにたくさん愛していこうと思う。
side元貴
涼架さんと付き合って初めての夏。
俺たちは変わらず仲良く幸せな日々を過ごしていた。あちこちと出かけたし、お泊りもたくさんするようになった。
けど今日は俺は1人で暑い砂浜で海を眺めていた。
「何年たっても変わらないな···」
ずっと来たかった場所。
滉斗が俺を連れてきてくれたあのコテージがある海。
初めて誰よりも近くに滉斗を感じて結ばれたあの夜。
幸せ過ぎたあの思い出は逆に寂しさを煽るものでずっとここには来られないでいた。
「やっと、本当の意味でいい思い出に出来そうだよ···滉斗もそれを喜んでくれるよね」
深く泣いたあの片思いの日々も。
笑いが絶えなかった楽しい友達だった日々も。
好きな人が自分を好きだと言ってくれたあの日も。
全てさらけ出して愛に応えたあの夜も。
愛する人を失って悲しみにくれる日々も。
いつだって背中を押してくれた愛した人を忘れられない日々も。
そしてまた恋をしている今も。
全て抱きしめて、全てを愛して。
「あ、もしもし、涼架さん?うん···これから会いに行ってもいい?もう、別に何もないよ···とってもあなたに会いたくなっただけ!」
そうしてまた明日へと俺は進んでいく。
End.
コメント
12件
完結おめでとうございます!🎊 これは、きっと書くのもお辛かった作品だろうなと、勝手に作者様の心配もしておりましたが、mtkくんが幸せな最後を迎えられて、本当に良かったと思います😭mtkくんやfjswさんと同じく、ずっと心にwkiさんを残しながらも、二人の恋を応援していました🥺wkiさんも、きっとどこかで、幸せを見つけられていたらいいな、と願っています😌✨ 素敵な作品を、ありがとうございました✨
凄い⋯⋯めっちゃ泣けるわ。完結お疲れ様でした✨
ありがとうございます、確かに最後まで悲しみはついてまわっていますが、それも人生の一部になったということで···mtkくんはカタオモイの方ではわりとグイグイ自分でいくタイプだったので、元々のらしさ、がfjswさんのおかげで取り戻せたんじゃないかなぁなんて思って···明るい感じになったのも、そんな理由です☺️