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「人間の本性は善である。」また逆に「人間の本性は悪である。」_性善説、性悪説より
「藤谷優、君は僕が悪であると断定できるかい?」
ただの高校生に投げかけられた質問にしては浅いようで重いものだった。特別な思考を持ち合わせているわけでもなく、ごく在り来りに悪だとは言えるだろう。
「当然悪じゃないですか。そうでなかったら犯罪者は今でも社会に溶け込んでいますよ。野放しでの生活は危険すぎます。」
「まったくもってその通りだよ。つまり、人間は自分たちの都合のいい世界を作りたい。こんな当たり前は人間の本質によるものだ。」
「人間の本質ですか?俺にはどうゆうことがさっぱりですけど…」
「本質なんて軽くまとめてしまったけど、僕はこう考えているんだ。人間は生まれながらにして善である。しかし、何かしらの影響により その本質は変化し悪にもなりゆるってね。」
「性善説でしたっけ。それが最初の質問と関係あるんですか?」
「大いにあるね。誰しも断定だなんて出来ないのに悪と断定する行為そのものが無根拠かつ悪だよ。これも一種の仮説だから断定できないけどね。」
殺人犯にそんなこと言われたって説得力が無い。自分を擁護するための屁理屈にしか聞こえないのだ。幼稚な考えだ。
「逆に道風さんは自分自身を悪と考えているんですか?」
「人間として考えるなら悪だね。同種を殺すは愚か、自分も殺されるかもしれないという恐怖は計り知れないだろう。 」
「そう考えるなら警察に通報しても良いですよね。」
本来なら焦るはずだろうという場面に道風凜いや、キカイは顔色ひとつ変えなかった。本当にコイツは同じ人間かを疑うくらいに。
「言葉による出力は恐ろしいね。そうすると僕は君を殺さないといけなくなる。」
「だったら殺すなり何でもすればいい。俺が先に通報するだけですけど。」
俺は出来るだけ遠い場所まで逃げるように走った。キカイが追ってくる姿も見えない。見慣れない風景が広がっていたがそんなことは今はいい。急いでスマホを取り出したがこんな時に限って充電切れだ。現在地も分からなれば、人通りも全くない。とにかく人がいる所まで離れるしかないと思い再び足を動かした。
20分くらいだろうか、歩いていると小さな駅が見えた。そこには人影も見えて俺は重い足を運んだ。しかし、そこまで行くと見覚えのある人物がこちらを眺めていた。その瞬間俺は恐怖のあまり膝から崩れ落ちた。
_キカイだ。
動けない俺の方に向かってゆっくりと向かい、気づけばナイフを首に突き立てられていた。
「人間の行動や思考の原理に1番密接に繋がっている感情は恐怖なんだ。だからそれを利用してここに来るよう仕向けただけだ。」
逃げられるなんて希望は初めから存在しなかったのだと全てを悟ってしまった。
「そろそろ答えを聞きたい。今僕に殺されるか、一緒に人を殺すか。勿論殺すって言ってくれればこのナイフはしまうし、君を殺したりは一切しないと誓うよ。」
反射的に答えた。
「…だったら、…ころッ殺…します。」
キカイの本質は人を操ることだ。善悪という基準で計り知れない怪人。
なぜなら、俺の本質は本来揺らぐはずなかった。しかし、キカイにより善から悪へ改竄されているのだから。
「その返事が聞けて嬉しいよ。たった今から君は僕と同じ殺人鬼だ。もう人間じゃ無いんだ。」
…to be continue.